『ローカルが主役になるための方法とは?』  Emileのコラム149 | 地球村研究室

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厳しい地球環境制約の中で心豊かに暮らすには?沖永良部島で実践しながら考えたいと思っています!!

 家にいるときのお酒の話。夕食時はビールかワインか日本酒を食事に合わせて… 食後は台所をきれいに片づけて、主は冷凍庫でチンチンに冷えているジンに炭酸を少し、そしてたっぷりのライムを入れて・・・・が毎夜のパターン、この繰り返しをもう恐らく20年以上続けている。休肝日は無し、酒を飲み始めてから休肝日と言えるようなものは2日酔いの時か怪我をして入院した時ぐらい。だから我が家の屋号は『酔庵』なのである。最近では、年末から年明けにかけての断食、心臓の手術の時、およそ2か月禁酒をしたのが、今のところ生涯最長である。

 島暮らしを始めて、最大の問題は島ではライムが手に入らないこと、出張の度に買って来なくてはならないが、なかなかそうも行かぬ・・・・ 

先日、20個近く学生がライムを送ってきてくれた、有り難いのではあるが、一挙に大量のライムを使うわけでもなく、このままでは朽ちてゆくばかりかと思案していたら、なんとも我が家の姫がライムを絞ってエキスを冷凍するという素晴らしいアイデアを出してくれた。どうしてそれに思いが至らなかったのか・・・・何十年も同じことを繰り返していると思考停止になる典型か… この新手法が一挙に視野を広げてくれた。ライムだけではなく、島にある色々な果物を絞っては試してみる。ありました!!パッションフルーツ!!果肉をミキサーにかけて、キュービック状に冷凍すれば、いつものジンライムが南国風に変身!! 目から鱗の大発見なり!! 是非に、お試しあれ!!

島生まれのパッションフルーツ


その果肉をミキサーにかけて冷凍すれば…

さて、東京で定期的に開催しているネイチャー・テクノロジー研究会のシンポジウムに、今回は広く教育という観点で、『遠野みらい創りカレッジ』『ベネッセアートサイト直島』の各代表、そして志摩市でユニークな教育をなさっている高校の先生、御三方に登壇頂いた。教育は『共育』、『観光を感幸に』、『ふれあうように学ぶ場創り』など素敵なキーワードを頂いたが、通奏低音のようにそこに流れているものは、結局のところ人と人との熱い触れ合いだった。直接人と人とが接すること、それがローカルを豊かにし、企業との共通価値を創るのだということも勉強させていただいた。

数日前、私が塾長を務めている酔庵塾の塾生の友人として、医者志望の素敵な青年を島で紹介された。現在は東京の法律事務所で働いているものの、島に憧れ、離島診療を目指して鹿児島大学の医学部に挑戦しているとのこと、すでに筆記試験は合格し、次の面接に受かれば晴れて医学生になるという。こんな出会いに改めて思うのは、ローカルが主役になる時代が確実にそこにあるということである。ただ、それには東京の下請け的な意識を早く捨てることが第一歩でもある。(政府は、あくまでローカルを都市の下請けとしての価値しか持っていないと思っているようではあるが…)

1960年代からの工業化の時代に日本は大きく変化した。それは、拡大・成長に向かって、時間とお金という物差しで効率が単純化され、各地域は、進んでいる、遅れているという一元的な概念によって位置付けられた。その結果、『個』の自立が可能となり、一方では、地域共同体が『個』を抑圧し、自立を阻害するという『負』の側面ばかりが強調され、相互扶助が前近代的な地域の遺物とされた。その結果、遅れているローカルと進んでいる都会という位置づけが出来上がり今に至っている。

しかし、それは明らかに限界を迎えている。物質的な豊かさは飽和し、物は売れなくなり、終身雇用に守られた会社人間は移住地との関係性よりも会社の関係性を重視し、定年後は行き場を失い、さらに、行き過ぎた『個』の尊重が他社との関係を結べない孤独を生み出し、無縁社会をつくってしまった。一方では、東京の食糧自給率は1%を下回り、ローカルが豊かでなくては東京は生きてゆけないのである。

間違いなくローカルが主役になる時代がすぐそこにあるのではあるが、主役になるためには、洗脳された思考回路をリセットしなくてはならない。これからの時代は、時間軸ではなく、空間軸(各地域が持つ独自の個性、風土的・文化的多様性)で豊かさや効率を評価する時代であり、人手が余り資源が枯渇する時代でもある。それは、福祉や教育などの対人サービス領域が高い生産性を持つ(労働集約的分野)時代とも言える。

現代人の時間の流れは、縄文人の40倍(エネルギーの消費も40倍)だそうだ、これに現代人はついて行けなくなっていることも事実だろう。光り輝くローカルがどのようなものなのか、具体的な形を早く示し、ローカルの道標を創らなくてはならない。それには、ローカルの風土的・文化的多様性が何かを明らかにし、そこから生まれる有形、無形の価値を具体的な形に創り上げる必要がある。むろん、それには、お金も物も地域の中で循環する『自足型の暮らし』が原点でなければならない。地域の多様性を基盤にした、おしゃれな自足型の暮らし方をまずは描く必要がある。

離島診療を目指す医学生やIターン希望の多くの若者を失望させないためにも、そして子や孫が大人になった時にも今以上に光り輝く島にするためにも、大人の責任はとても重いと感じている。