オープン戦に入っても、なかなか左翼に鋭い打球は飛ばなかった。しかも、1番打者を任されるケースが増え、持ち味の積極性を出せずに「難しいです」とぽつり。低迷する打率が、その苦悩を物語った。
きっかけは試合前にあった。コーチに「右にばかり打ってないで、たまには左翼ポールに打ってみろ」と言われたこと。前日にあったナインへの「振り切れ」という監督訓示とも重なり、気持ちは前に向いた。
六回、その課題の球が来た。長野は体をぐるりと回し、胸元に食い込むくせ球をとらえる。オープン戦9試合目で待望のチーム初本塁打。「うまくバットが出た。統一球で飛ばなくなったけど、しっかりと振れば大丈夫」と長野。悩める1番打者が取り戻した笑顔と自信が、何よりの収穫だ。