ヨンショーピン出張 | いまのしゅんかん

ヨンショーピン出張

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デンマークに帰って来てからのさまざまな懸念事項ほぼすべて着手した。

-キッチンの床材も23つお店をあたって決め、業者にお願いしたし、

-ギター教室も希望通り娘の小学校の前にある音楽学校でレッスンを受けられることになった。バレーボールの練習の直前なのが少し苦しいが、場所はいいのでなんとかやってみるつもりである。あとはギターを購入するのみ。

-庭も見苦しい雑草を取り除いたし、

-ジョギングも再開した。ノボのジョギング会に参加し、前回よりも2分半も遅い31分という記録であったが、二ヵ月ぶりで足の筋肉が弱っていたせいであろう。3日後に大学で10km走ったら、やはり6km目から苦しくなった。

 

そして休暇明け一番の懸念事項だったプロジェクトのミーティング参加のため、半年ものプロセスを経てやっと出来上がった試作品を携えてスウェーデン・ヨンショーピンまで行ってきたのである。

 

懸念といいつつ、本当はものすごく楽しみだった。

プロジェクトでほかのメンバーにいろいろ聞きたいことがあったというのもあるけれど、なんといってもパートナーのひとつの大企業の工場をみたかった。わたしが小スケールでやっていることを、実際の会社ではどんなふうに生産しているのかこの目でみたかったのである。

今でこそチェーンソーや芝刈り機がメインで生産されているけれど、かつてはミシンやバイクもつくっていた総合メーカーの老舗で、工場の横に博物館もあり、その訪問もスケジュールの中に含まれているというオマケつきでもあった。

また、伝説のエピソードに事欠かない名物教授との1泊旅行がどんなものになるのかもドキドキであった。

そんな期待を裏切らない、盛りだくさんの二日間だった。

 

ヨンショーピンまでヘルシンオア経由で250kmとそれほど遠くないことから、カーフェリーに乗って車で行くことになった。

教授とグループリーダーのデンマーク人2人と一緒だから、隣のスウェーデンに行くくらい楽勝だと思い、わたしは乗せてもらうだけだし、今回は連れていってもらう旅行だ!と期待していたら、、実は二人ともスウェーデンにはほとんど行ったことがないという。どおりでわたしが、頻繁に出ているから予約しなくても大丈夫といっても、カーフェリーを予約しなくてはいけないのかと不安がっていたあたり、おかしいとは思っていたのだが。

どうも、わたしが一番スウェーデンに行っているらしいことがわかり、ヘルシンオアのところで高速道路からしばらくしてフェリー乗り場に右折するところで、「あ、ここで右に曲がるんですよ。」と言ってから、わたしがナビの役割を果たすことになった。GPSもあったのだが。。。

たった20分の船旅なのに、買い物もしてお昼も食べて、フェリーがもはやヘルシンボーに着くというころになって慌てて食べ物をかっこむという有様。フェリー着場から高速道路に乗るまでも右往左往するハメになった。

また高速道路でデンマークと違うこと。それは、日本でいうところのサービスエリア、デンマークでいう休憩所がスウェーデンにはないのである。ところどころ売店付きのガソリンスタンドがあるので休憩ができなくはないのだが、ちょっと中でコーヒーを飲むというところがない。

さすがに220km休憩なしはキツイし、教授はコーヒー依存症なので途中でカフェに行きたいと言い出し、カフェの目印をみて高速道路から数km離れたカフェ探しをしてみたが、平日のせいか開いておらず、とりあえず先に進み次に見つかった道路沿いにあるカフェに入ったところ、ホテルの中にあるカフェで高級感あふれ、とても豪華なケーキセットで3人で400krも請求されてしまったのだった。

夕方にやっとヨンショーピンに着き、ホテルについているレストランでせっかくだからスウェーデン名物を食べようとヘラジカを頼んだら、ソーセージが出てきて、とても塩からいのにクセが強くまったくおいしいと思えなかった。

ヨンショーピンは湖畔にあるとても美しい街で、とても居心地のいいところではあったが。そもそもそこで300年以上も前に会社ができたのは、160mの落差で水力を利用できる地理的環境があったから。山のふもとに古い工場は絵になった。デンマークではみられない光景である。

 

最初から珍道中だったのだが、教授の話は面白かった。

夜は教授自家製のワインを飲みながらおしゃべりにふけった。りんごとベリー2種を原料としたワインで、ジュースをとるための機械や大きな樽など、本格的に道具をそろえているという。そして糖分からアルコールに変えるための酵母もベルギーから取り寄せるなどして、とにかくいろんな種類の酵母で試しながら作っているとか。まさに「ワイナリー実験場」である。ぶどうはデンマークで作れないし、デンマークでできる果物からワインを作ろうと思い立ったのが動機であるらしい。

普通のワインと考えると、意表をつくような味ではあるし、りんごとも思えない味ではあるが、決して飲みにくくはない。

自宅も自分でまず設計して、高台の眺めを最大限生かすために2階にダイニングとキッチンを作ったらしいが、生活の中にも自分の創造性を取り入れているのがすごいな、と思った。というか、クリエイティブだから、仕事とか関係なく常にアイデアがあふれ出ているのだろう。

 

プロジェクトミーティングでは、工場をみせてもらい考えていたプロセスとは違っていたことを知り、今後のプランも変わること、また普段メールでしかやりとりしていないパートナーと直に話すことでいろんな誤りを認識できやるべきことの方向性もみえてきた。

そして思ったのは、こんなにひとがいても、案外物事って進まないということ。自分から動かないと何も起きないのだということを思い知った。別の会社がやるはずだったタスクをうちの会社でやることになり、正式に書類にサインするのを待っていたら、その会社はうちがもう始めていると思っていたという。。

 

車の中で、教授とリーダーがいろんなひとのことをクリティカルに話しているのを聞き、言われるだけのことをこなすのだけでは不十分で、彼らを圧倒させるようなエキストラなパフォーマンスをみせないと真に認めてくれないのだな、と痛感したのだった。

それこそ、受動的に何か起きるのをアテにしつつ自分にとって必要なことだけをやるのではなく、困難なことでも自分で推し進めていく成果をみせなければ評価してくれない。

とても刺激を受けた出張だった。

 
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やっとありついた高級カフェ。でも木造の建物がかわいい。


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古い工場の建物。滝がみられる。


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博物館で展示されていたチェーンソーの断面。エンジンとかみえる。