石職人の日記 -2ページ目

14日目:オンタナスからボアディージョ・デル・カミーノへ

こんばんは。

今月はテレビ朝日系列「世界の街道を行く」という5分番組で

カミーノやってます。

だいたい夜20:54~(番組によって前後)、東京だと5チャンネルです。

今日はサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダにいました。

今月いっぱいカミーノだそうなので、見れる方はぜひ。



14日目:200951()


Hontanas - Boadillo del Camino(29.24km)

Hontanas / Castrojeriz / San Nicolas de Puente Fitero

/ Boadilla del Camino


本日もほぼ30kmの日。


今日はねえ…景色は素晴らしかったし、とても楽しかったのだけれど、

ひとつだけ今も微妙に後悔することがあった日でした。



昨日プロフェッショナルおじさんが言っていたとおり、

道はどこまでも手のひらのように平らに草原の中を続く。

あまりにさわやかな朝で、Eちゃんとしゃべりながら

気持ちよく歩いていたので、

すでに最初の10kmを歩いてしまったのだということに、

最初に朝ごはんに入ったバルまで気がつかなかったほどだった。

しかもここのバルのカフェコンレチェは大変レベルが高かったので

ますます楽しくなってきた。



前にも書いたと思うけれど、オンタナスからカストロヘリスへの

道は本当に美しい。

途中、古い修道院の廃墟があり、

今も残るそのアーチの下を道路はくぐっている。

見上げると、空がアーチの形に切り取られていて

なんともいえない雰囲気をかもし出している。



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アーチをくぐると、今度は前方に、

入り口の教会のあるカストロヘリスの町が見える。

この町は、小高い丘の上にある城を囲むようにできたらしく、

今も高い空を背景にした城の廃墟が見える。


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小規模ミナスティリスと名づけた(笑←ロード・オブ・ザ・リング)


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カスティージャの平原はどこまでも平らで荒涼としていて、

立体的な雲が広い空を流れていく。スペインで一番好きな景色。



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どんどん歩いていたら、向こうのほうに急激な傾斜の丘が現れた。

まさかあれは越えないよな…と思っていたら、

道はどんどんそちらに向かっていく。

だだっぴろいところを歩いていると、向こうに集落が見えたから

次のストップはあそこね、とか思っていても

道は何もないほうにどんどんいっちゃう、

ってことも多いのだけど、今回はどんどん傾斜のほうへ近づいていく。

平らなだだっ広い平原にいきなり段差があって、

垂直?とでも思いたくなるような崖みたいな坂を上りきると、

また同じようなだだっぴろい平原が続く。

なんてドラマチックで、でも何もない景色。

(プロフェッショナルおじさん、

今日は手のひらみたいに平らだって言ってたのに…)


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今日の目的地、ボアディージョ・デル・カミーノに着く前に、

Eちゃんが「アルベルゲの予約したほうがいいんじゃない?」

と言い出したので、アルベルゲに電話をしてみた。

ここのところ、ベッド数の少ないアルベルゲでは

ベッド争奪戦が始まっていたのだ。


「まだ空いてるからとっとくね」と言われ、」安心してまた歩く。


しかし、本来アルベルゲの予約ができるというのもおかしな話なのだし

(公営のアルベルゲではできない。私営のだとできるところもある)

あんまりそういうことを当てにしたらいかんのです。

ということをもうちょっと思い出しておくべきだったと思う。



さらに、なんでなのか今考えてもちっともわからないのだけど、

Eちゃんといつも会うドイツ人親子がなにやら話して、

「親子(背の高いおじさんと青年で歩くのが早い)にクレデンシアル預けて、

着いたらベッドを取っといてもらおう」という展開に。

なんで電話もしたのにそれもやるのか。

と思ったけれど、なんとなく言われるままに。



ここまでは特に問題はない。




さて、今日は暑い。暑い中、疲れてボアディージョ・デル・カミーノに到着。

ここで問題勃発。

アルベルゲがいっぱいだという。

「でもさっき電話でいいって言われたよ?」と言ったら、

「でも早いものがちだから」「じゃあなんで電話で取っとくっていったの?」と、

埒もない会話が続く。

こういうことはスペイン人やイタリア人と仕事をするとしょっちゅうあることで、

慣れてるはずなのになんとなくムキになってしまったのは、

Eちゃんたちが「電話したのにおかしい。I hate this albergue

といったからだったような気がする。

でも人のせいにしてはいけない。



電話に出た人を呼んでくるから、

といってオスピタレイロのおじさんが向こうに行っている間、

私はひそかに後悔していた。こうして好きで歩いている道で、

なんで仕事の時と同じようなスタンスで人に相対しているのか。

友達の手前とはいえ…



と思っていたら、突然Eちゃんに

「今日のquimicoは厳しいわねえ」と言われた。



好きでこんな態度取ったんじゃないやい、と思った。

呼んでこられたアルベルゲのおじさんは

ものすごく穏やかな目をしたひとで、

そういう態度を取った自分がいやになった。

でも、一番いやだったのは、

自分のスタンスは自分で決めなければならない場所で、

決断を人任せにしたことだったと思う。

自分で決めたことの結果、いやな思いをしたんだったらしかたないけれど、

自分が決断をさぼったことの結果だったことに対して腹がたった。



結局その日は、ベッドがなかったひとたちには食堂にマットを敷いてくれて、

それがとても快適で結果オーライだった。

おじさんはその後もなにかと気にかけてくれて、

日本の取材が入ったときの話をしてくれたり、

本をみせてくれたり(ここで「quimicoのスペイン語はアメリカなまりだな」

と言われたのはなぜだ)親切だったし、

全員で食べた夕ご飯のにんにくスープがとてもおいしかったし、

初めて日本人のペレグリーノに2人も出会い、

おしゃべりをしてとても楽しく過ごした。

ドイツ人たちは20人くらいいて、みんなでギターをひきながら歌っていた。

EちゃんはPさんと久しぶりに再会し、弾丸のようにしゃべりまくっていた。



寝る時間になり、食堂には分厚いマットがたくさん敷かれ、

よく会うドイツ人おじさんズやドイツ人親子や、

EちゃんやYちゃんと、電気を消した後もバカな話をたくさんして、

笑い転げた。まるで修学旅行みたいだった。



こんなに楽しかったのに、

ちょっとだけ苦い思い出のあるボアディージョ・デル・カミーノでした。



今日のアルベルゲ:Albergue privado En el Camino   5ユーロ

お勧めです。

なにやら春めいて

寒いと体力が普段の七割くらいしかなくなるquimicoです。

こんばんは。


去年の今日この時間は、JALのWebサイトをみながら

航空券を買おうかどうしようか悩んでおりました。

4月1日から燃油サーチャージが大幅ダウンだったんですよ。

0時を過ぎた瞬間にぽちっとやっちゃったわけなんですが、

なつかしいなあ。


突然ザックとか手袋とかみたら、えらく懐かしくなりました。

このあいだ、このブログによく出てくるEちゃんちにいったら

「カミーノにいるときと違う!」といわれました。

ええ、もうあんなに黒くないし、すっぴんじゃないし、

毎日同じゴアテックスにごつい靴じゃないもんね(笑)。


さて、宿題も終わったのでラストスパートをかけよう。

どうして私はこんなにスロースターターなのか。

人生もスロースターターなんだね、きっと(笑)。

夏休みの宿題を30日に始めて始業式までに終わらせたら

堺さんに尊敬されるぞ(笑)。


と、さっき1年分の通信教育を2週間で終わらせたばかりの私が言いますにひひ


1年前のこの日の30分後、航空券を買って

出発まで2週間、モンベルに通って

ザックと寝袋と杖買ったんだった。

もうこんなに懐かしい。


というわけで続き、書きます(宣言←あんまり信用がない得意げ)





13日目:ブルゴスからオンタナスへ

13日目:2009430() Burgos - Hontanas(32.17km)



Villalbilla de Burgos / Tardajos / Rabe de las Calzadas /

Hornillos del Camino / San Bal



ブルゴスは素敵な街なので、もう一日くらいいたかったけれど、

けれどやはり滞在することもなく、YちゃんとEちゃんと一緒に出発。

アルベルゲはカテドラルの裏にあるので、最後まで早朝のカテドラルを

見ながらブルゴスの街を後にした。



歩いてたらいつもの小さいおじさんとよく一緒にいる、バレンシアの

おじさんが走っているのを発見。

…出発の前にジョギング???ナゾ…。




今日は長丁場を予定している。そろそろ慣れてきたので、

30kmくらいいけるような気がして。

しかもカスティージャ・イ・レオンに入ってからは

比較的昇り下りが少ないので、どんどん進める。

歩きやすいので、ステッキを使うのをやめたら

両手がフリーになってますます快適(←これについては

いいことも悪いこともあった。後にわかる)




石職人の日記 こういう街が好きだ




平原の中、いかにも「カミーノ!」っていうような

まっすぐな道が延々と続く。

こういうところを歩きたかったのですよ!

と思うのだけど、あまりに何キロも景色が変わらないと

だんだん疲れもするし、不安にもなる。

黄色い矢印は定期的に出てくるから、道は間違っていないのだけど

「何でこんなとこ歩いてるんだろう」とか思ったりもする。

それでも歩かないとどうしようもないので歩き続ける。



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人によってペースは違うので、一緒に出発しても

いつのまにかなんとなく一人になったりする。

YちゃんやEちゃんと一緒になったり別れたりしながら、

最終的に今日は平原の中でひとりになって、「第九」を聞きながら

もくもくと歩いていたら、道端でEちゃんが休んでいるところに

行き当たった。

私も疲れていたので一緒に座った。

さっき会ったときもEちゃんは「今日は足がいたい」といっていたけれど、

痛みが本格的になってきたらしい。

歩くたびに足の裏に刺すような痛みがはしるという。

quimicoもYも足が痛くないのに何で私だけ痛いの!?」とか

本人も理不尽なことを言っているのは理解しているのだけれど、

何か言いたいらしい。

quimicoは先に行ってて」というが、

どこを向いても空と平原と道しかない、こんな場所に

そんな状態のEちゃんを置いていくわけにもいかず、

しばらく一緒に第九を聞いたりしてから立ち上がった。

歩き続けているうちはいいが、休憩後はたいてい足が痛む。

今日の目的地、Hontanasまでは後6kmほど。

二人でゆっくり歩いていたが、ふと気がついて

Eちゃんにステッキを貸してみた。

先日ダブルストックの人をみて、「あれ楽なのかな」と思って

Yちゃんのを借りて試してみたら、

1本よりだんぜん楽だったのを思い出したからだ。

Eちゃんは遠慮していたけれど、平坦な道でずっと使っていないから

だいじょうぶ!というと遠慮しつつも受け取った。



やっぱり杖が2本だとかなり楽になったらしく、その後は

比較的順調に歩くことができ、やがて平原が少し落ち窪んだところに

Hontanasの石造りの小さな集落が見えた。

最後の坂を下り、やっとアルベルゲに到着。




ここのプライベートのアルベルゲは2棟に分かれていて、

2階に上ってから一度外にでて、さらに階段を上った離れにある部屋に泊まる。

部屋自体は悪くないのだが、離れはとても寒かった。

ものすごく。



すでに相当疲れているのに、さらに階段を上ったりなんだりで

疲れは最高潮。

Eちゃんはベッドに座った瞬間に泣き出してしまった。

いろいろきちゃったんだろう。



しばらく泣いて、ちょっとナッツとか食べたら落ち着いたらしく、

「私おなかすいてたのかしら」とかいってる()

でも私が杖を貸してあげたのがとてもよかったらしく、

非常に感謝された。人に感謝されたのっていつ以来かしら。



同じ部屋のチェコ人に後で、「きみの友達はすごく泣いてたけど

大丈夫だったの?」と聞かれたので、

「うん、ちょっと疲れちゃったんだよ」と答えたら

「おなかすいてたのかなあ」とか言ってたので

それをEちゃんに言ったら、自分でもそういってたくせに

憤慨していた()




私が足のマッサージをしていたら、

同じ部屋にいた、朝ブルゴスでジョギングしていた

バレンシアおじさんS

「えらく念入りにするんだねえ」と言われた。

「私やりすぎ!?」と聞いてみたけど

「別にそんなことはないけど」と。

このおじさん、今日判明したのだがなんとカミーノは14回目だという。

プロだ、プロ。

さらにマラソンを何十年もやっているらしい。

道理でジョギングしてた()

おじさんによると、「明日は手のひらみたいにまっ平らだから楽だよ」とのこと。

本当だな?




1階のバルでGくんやドイツ人息子がいたので

一緒に夕食を食べた。

Gくんは若いだけあって相変わらずうるさい。

Eちゃんが「今日は疲れてるの」とかいうのを気にも留めず

べらべら喋り捲っている。

これだからイタリア人は()、と思って

Callate!(←だまれ!)と言ってみたけど

やっぱり黙らない()




バルにあったPCで、ウォークマンの充電をさせてもらう。

助かった。


今日のアルベルゲ:El Puntido(5ユーロ)

↑早めについて、離れじゃない棟に泊まることをお勧めします。







町の教会。不思議な天気だったなあ。



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