『天上の虹』(里中満智子著) | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

6月26日の『寺ガール』(水沢めぐみ著)に続いて、まんがの書評です。

まずは、里中満智子著『天上の虹』(講談社コミックスキス)から。平成18(2006)年に日本漫画家協会文部科学大臣賞も受賞された少女漫画界の重鎮である著者の、昭和58(1983)年から30年に亘って描かれているライフワークと言うべき作品。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E4%B8%8A%E3%81%AE%E8%99%B9





この8月23日に最新第22巻が発売されまして、小生も初めて発売日に本屋に駆け込んで当日発売の最新刊を手にしました。





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小生が『天上の虹』を始めて読んだのは20年くらい前からで、以来コツコツと買い集めて、既刊1~21巻もコレクション。かなりヘビーな天上の虹ファンであります。






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この作品は飛鳥ー白鳳時代に実在した皇女 鸕野讚良(うののさらら)の全生涯を描いた大河ロマン。大化の改新から白村江の戦い、近江遷都から壬申の乱と歴史上に名高いエピソード経て、夫である天武天皇の後を継いで、讃良(さらら)は自ら持統天皇として即位。

その後は飛鳥京の北に広大な藤原京を整備し遷都。古事記・日本書紀を編纂し国史作成を進め、そして集権国家の集大成としての法令・大宝律令の発布を果たします。

動乱の時代の中で、近代国家を作って行く女帝の生涯を、数多くの万葉集の歌を織り交ぜ、数多くの愛の物語を通して古代の人物達を身近な存在へと読者に伝えているのです。




歴史ドラマは特徴として、登場人物の数が多くなります。天上の虹についても22巻全部に出て来る登場人物の数を数えてみたところ、総数125名にも及びました。





以下、天上の虹・登場人物一覧(タクヤ編)

※作品内に名前と顔が両方出た人物のみ。

※皇子・皇女は名前のみ表記。

※神話の神々などは“人物”ではないので除外。

※赤色文字は作者による創作キャラ。他は正史(古事記・日本書紀・続日本紀)や

 万葉集などに記された、実在の可能性がある人物。




[ア]

県犬養大伴 明日香 安宿(光明皇后) 阿閇 尼子娘 アマメ 有間

粟田真人 五百重娘 泉 犬養三千代 イメル 磐姫皇后

盈(劉盈・恵帝) 大海人(天武天皇) 大江 大伯 大田 大津 大友

大伴吹負 大名児 大ヌ娘 多品治 太(多)安麻呂(カムイ)

大三輪高市麻呂 忍壁 越智娘 首(聖武天皇)





[カ]

鏡王 柿本人麻呂 郭務ソウ カジ媛娘 葛城王 葛野王 加能古

加茂比売 軽(孝徳天皇) 珂瑠(文武天皇) 川島 紀 紀大人 紀竈娘


鬼室集斯 吉備 行心 草壁 栗隈王 臣勢邑治 臣勢臣人 金良琳





[サ]

佐為王 坂合部大分 沙宅紹明 志斐嫗 志貴 磯城 定恵 鈴鹿王

蘇我赤兄 蘇我馬子 蘇我蝦夷 蘇我倉山田石川麻呂 蘇我果安

蘇我安麻呂





[タ]

高阪王 高橋笠間 高市 宝姫(皇極・斉明天皇) 建 当摩公広嶋

田銀安槌 多紀 丹治比嶋 但馬 立野 道照 十市 利足

刀子娘 舎人





[ナ]

長 中大兄(天智天皇) 中臣金 長屋王 和女 新田部(皇女)

新田部(親王) 如意(劉如意) 額田王





[ハ]

間人 羽田公矢国 泊瀬部 肥(劉肥) 氷高 常陸娘 氷上娘 日野


広成 藤原宇合 藤原大嶋 藤原鎌足 藤原房前 藤原不比等(史)

藤原武智麻呂 吹●刀自(ふぶきのとじ) 古人 豊璋 穂積





[マ]

耳面刀自 御名部 三芳角足 宮子 村国男依 姪娘

物部麻呂 百手





[ヤ・ラ・ワ]

宅子娘 倭媛 山上憶良 山辺 山部王 弓削 呂后





箇条書きに並べても相当な人物数ですが、これらの登場人物は血縁関係であったり、主従の関係だったり、複雑な相関関係になっています。天上の虹ファンというのは、これらの人物を自分の知っている人のように認識して、身近な人のように相関関係を把握していたりするのです。





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主な登場人物(22巻より)



また、歴史書には無機的に人物の系譜程度しか残されていないものを、このまんがでは一人一人の人物の性格や人柄の細かい描写し、活きた人物として古代人をリアルに表現しているのです。
この作品を通じて読者は飛鳥時代の皇族の生きざまを生々しくイメージ出来て、1300年もの昔をとても身近に感じることが出来るのです。
この作品は高松塚古墳壁画発見以来の古代史ブームに乗ったとも言えますが、同時にこの作品が本来つかみ難い古代の歴史をとても分かり易くイメージできるようにし、古代史ファンの底を大きく広げたのでもあります。

ところもありますが、この作品によってmixiにいた頃に、小生は『天上の虹コミュニティ』に参加していまして、そこでは数々描かれている恋愛ドラマのどれに共感するかとか、登場人物の中で誰が好きかの人気投票など、飛鳥時代に生きた人物たちをまんがを通してネットコミュニティで語られていました。

これらのほとんどの人物が、1300年もの昔に実在したのですが、まんがという形になって、本当にみんな身近に親しく、これらの登場人物のことを見ていたのです。



つい先日もTVのニュース番組で新生児の名前を取り上げていた中で、子供に「讃良」と名付けた母親が。持統天皇を讃良(さらら)の通り名にしているのはこの『天上の虹』だけですから、明らかに天上の虹から取った名前。このまんがのすそ野がここまで広がっていることに、驚かされたことがありました。

また、持統天皇が造った藤原京があった橿原市では、市内を走るコミュニティーバスに『天上の虹』のイラストが描かれたラッピングバスが走っていたりもします。

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画像参照:
http://small-life.com/archives/11/05/0921.php

このまんがが地域おこしに一役買っていることをうかがえます。

本来なら難しい学術書などにしか書かれていない古代の人物を、まるで近しい人のように身近な存在にし、遙か飛鳥時代の出来事に、親しみを生み出す。

まんがというものの力の大きさを実感させられる、そういう作品なのです。

22巻は大伯皇女の葬儀から、大宝律令発布、遣唐使派遣までが描かれています。1巻からの過去の場面が多く出てきて、物語全体の総括のような展開が覗えます。また、犬養三千代の前夫の間の息子である葛城王と佐為王も登場。この葛城王というのは、後に臣下に下って『橘諸兄』を名乗り、藤原氏の最大の政敵になる人物。持統天皇没後の次の展開にも触れる内容となっています。

次巻23巻でいよいよ物語も完結するそうで、小生にとって30年にわたるお祭りが終わるような気持ちであります。


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