『宇宙医学とリハビリテーション』からの仮説 | リハビリ茶屋

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理学療法士/抗加齢指導士のエイジング情報

先日、参加した抗加齢医学会総会 で、宇宙医学というトピックがありました。



宇宙飛行士はフライト前に、宇宙空間で任務を遂行可能以下の体力低下まで起こさないように、先に筋力トレーニング(prehabilitation)し、フライト中もレッグプレス エアロバイク トレッドミルを実施していることはメディアでも報道されています。


それであっても、地球帰還後は1ヶ月半のリハビリを必要とし、


重心を始めとした「カラダの内観」Body Shemaを捉えられるようになるには、1~2週間を要するようです。






しっかりトレーニングしていてもそれだけの身体の機能低下が起こる宇宙空間…。


重力のない空間というのは、未知の世界だなぁと感じるとともに、


トレーニングの中身と効果に自分なりに注目してみました。





最近の宇宙空間での身体に対する医学的研究は非常にたくさんなされてきていますが、


運動機能の中でも、姿勢制御自体はどういった戦略になるかという内容には興味津々。


⇒(立位姿勢の制御 :長谷公隆.Jpn J Rehabil Med VOL. 43 NO. 8 2006)




姿勢を保持するため必要な重力に対抗する筋肉(抗重力筋)は身体の中心部に大きく存在し、


固定(安定)要素として四肢と機能的に連携しながら働くことで、さほど努力もせずに立っていられます。



要するに、動かしていく部分(手足)とある程度自由度を残した抗重筋との協調が大事と。


また、それらを読み取る体性感覚もなお重要と、上記の論文では言われています。





努力(意識)せずに機能するコアマッスル(の中でもlocal muscle)の重要性が現在注目されていますが、これはスクワットや持久系運動で意識的に鍛えられる要素ではないようなのです。


リハビリ茶屋-corem  (インターリハ株式会社 パンフレットより拝借)



リハビリ茶屋-motorunit  (Tarzan No.604. マガジンハウス社,2012より)


姿勢筋は、重力のあるエリアで、不随意にコントロールされ(四肢筋との相対関係の中でコントロールさせられ)て強化されることが、「使える筋」として有効なことが多い印象を持っています。


例えばバランスボールやレッドコードトレーニング、ストレッチポールを利用した運動をいつもオススメしています。

最近日本にようやく増えてきたというコレ↓も、いい感じで強化できます!

リハビリ茶屋  (←今年の抗加齢医学会での出展機器POWER PLATE)

リハビリ茶屋-4AMpowerplate  (←5年前の米国抗加齢医学会で見つけたPOWER PLATE)




しかし、これらは(当然ですが)全部重力下でのトレーニングで得られる効果ですね。


重力に反する反応が正常な姿勢制御力としてあることを前提に、無自覚に強化されていきます。



では、重力がなければ? 姿勢筋が働く余地(必要性)がないことが予想されます

APAs(予測的姿勢制御 ⇒ 2011年5月8日記事 )も必要ない。





この辺りが、宇宙空間でトレーニングしていて筋肉量自体が保たれても、帰還後は前庭系の機能低下も合わさって、重力下でlocomote(移動)していけない要素なんでしょうか。


姿勢筋に必要なlocal muscleは、無重力下では鍛えにくいのかもしれない。





という、研究もしたことない一療法士の仮説でした。





Masa