帰省の翌日、8月14日は町の夏祭りだった。
この町に引っ越してきた最初の夏に行ったっきり、
10年ほど行ってなかったけど、
この夜は出かけて、
お祭り会場は混雑や規制があるだろうと、
少し離れたところから、車に乗ったまま花火を鑑賞した。
最後に、ひときわ高く、ひときわ大きな花火が上がったので
終わったなと判断して帰路についた。
うちの近くは車が少ないが、
さすがにこの日は花火が終わって一斉に家路を急ぐ車が列をなしていた。
あの角を曲がればもうすぐ我が家・・・、というまさにそのとき、
1匹の痩せ細った猫がゆっくりとうちの車の前を横切ろうとした。
私:「あ!あの子だ!!」
主人:「捕まえんね。」
「捕まえんね」は「捕まえなさい」の意味。
命令というより、促すような。
すぐ車を降りて猫のもとへ。
後ろに車が連なっていたので私と猫は道端に避難して
主人には先に帰ってもらった。
街灯も少なく、暗がりの中、車のライトを手掛かりに猫を捕まえようとするも、
のらりくらりと私の手をすり抜ける。
噛まれるかもーーとビビりながら、
猫の首ねっこを狙って手を伸ばすと、
道端の土手にばたりともたれかかった。
そのすきに首ねっこをキャッチ!
そのまま帰宅。
家に入ると、
主人:「あら!連れてきたとね?」
私:「あんたが捕まえんねってゆったがね。」
と、主人のせいにして、ケージに入れた。
カリカリを少量皿に出しておいたけど、全く食べていなかった。
次の日、入院していたチーコの病院へ連れて行くと、
体温は37度くらいで低め。
病院で缶詰を出されたらがっついて食べていた。
あんなに痩せていておなかすいてただろうに、好き嫌いしていたのか!!
あきれたやつめ!
注射も投薬もなく、異常なしと診断された。
食べるようになれば体温も上がってくるとのこと。
背中の血はノミのふんが濡れたものだった。
帰宅後、全員にフロントライン。
猫はまたケージに入れた。
ほかの猫たちはこの猫から逃げたりフーシャー威嚇したり、
とても仲良くなれそうになかった。
優しい若菜も嵐もシャーシャーだった。
長期休暇中だった主人が、2日後くらいにはケージから猫を出していた。
かわいそうにみえたらしい。
そこからこの猫は世渡り上手さを発揮。
主人や若菜や嵐にスーリスリスリスリ。
主人は簡単に骨抜きにされ、若菜や嵐は根負けして一緒に寝てあげるようになった。
今でも涙や鼻は良く出てるし、
おとといは回虫を吐いたりもしたが、
運よく主人がいて、病院にも行けた。
この猫はこの先健康に長生きできるかはまだまだ不安があるけど、
ツイているのかもしれない。
あの車の列の中、うちの車の前で横切ろうとしたこと。
あの車の多い日に、
いつもなら夜出かけることがない私たちが、
例年ならお祭りを見に行かない私たちが出かけて
あの時間にあの場所を通りがかった。
あの数日後は、10年ぶりの強烈な台風がきた。
その前に捕まえることができた。
不健康だけど、運で補ってる。
チーコが亡くなって落ち込みそうなときに、
手がかかる猫がやってきた。