信号をわたったヤギ




ある日突然

1匹のヤギが迷子になった。



ヤギが迷い込んだのは都会の雑踏。



大勢の人が急ぎ足で行き交う

スクランブル交差点

シマシマ横断歩道の上。




メ~ メ~。




何が何だか分からない。

どこへ行ったらいいのかもからない。




横断歩道の真ん中で

ヤギは困って立ち尽くす。




立ち尽くすヤギに

大勢の人がぶつかってくる。




だいたいヤギの体は横に長いものから、


どんどん

たくさんの人がぶつかってくる。


ヤギは困って悲しくなって



メ~とないた。


それでも

誰も

ヤギには気が付かない。



みんなとっても急いでる。

なんだかとても忙しいみたい。



ヤギは途方に暮れて

も一度

メ~とないた。



それでも

誰も

気付かない。





青信号は点滅し

人々は急ぎ足で四方に散ってゆく。



足早に歩く人でいっぱいだったスクランブル交差点も

すっかり人がまばらとなった。



そこでヤギは

ようやくひとりのグレーの男を見つけ、

その男の後を付いて信号を渡った。



ただただ

訳も分からず

グレーの男の後をついて行った。





また迷子になっては大変と、

コツンコツンとついて行った。



グレーの男は、

大きなビルの中に

吸い込まれる様に入って行った。



ヤギも男についていった。



グレーの男はだまってエスカレーターに乗り込むと8階のボタンを押し、じっと光る階数表示を見つめていた。

ヤギもだまって男を見つめていた。



エスカレーターが8階についてドアが開くと男はエスカレーターを降りた。

ヤギもエスカレーターを降りた。



男は迷うことなくスタスタと

◯◯会社と書いてあるドアを開けて入っていった。

ヤギも中のに入っていった。



ドアを入るとすぐに

グレーの男はいつものように書類を手にした。


ヤギも

グレーの男のマネをして

書類を口にくわえた。





ヤギは

口いっぱいに書類をほうばって

むしゃむしゃ食べた。



ヤギは美味しいご馳走に

迷子になっていたことなどすっかり忘れ

嬉しくなってむしゃむしゃ書類を食べた。



ご機嫌に書類を食べていると

いつの間にか

ヤギの周りには

グレーの男がたくさん集まっていた。



グレーの男たちは

みんな怖い顔して

ヤギに向かってワーワー言っていた。




ヤギは怖くなって

メ~とないた。

 


すっかり困ってしまって

メ~とないた。


グレーの男たちには

ヤギのなき声は聞えていないみたい。



ヤギは悲しくなって

ションボリ下を向いて

入ってきたドアから出ていった。




ヤギは

早く草原にかえりたくなって

優しいお母さんに会いたくなって

メ~とないた。








みらくりん♪