見え透いた「欧州の啖呵」
「ECBのドラギ」と思わず口走ってしまうほど、総裁としてのイメージが既に定着している彼ですが、そんな彼がトリシェの後任として正式に承認された。
正式就任は11月1日で、任期は8年。98年に設立した同中銀としては、3代目の総裁になる。ちなみにFRBはバーナンキで14代目(議長)になる。 「欧州経済は軌道に乗り始めた」みたいな事を言っているドラギですが、実際の欧州に対する「不信の目」は今後も続く事になり、ECB総裁という名誉と共に、解決困難な問題を抱え込む事になりそうだ。
ECBはバランスシートに傷が付く事を恐れ、ここのところ南欧の国債市場に介入していない。EUやIMFの出方次第といったところで、欧州よりもECBを守ると言った立場に立たされることになるであろうドラギとしては、ギリシャがユーロに加盟している限り、大変な成功を収める事は難しい。
EUとIMFのギリシャへの第2次支援(ギリシャの緊縮&資産売却前提)が合意に達するとか何とかで、「支援=解決」等といった報道が市場を(ミス)リードしている訳ですが、「本当の解決」であるギリシャの債務完済は、実際のところ夢物語と言う事になる。 要するに、本当の解決はやって来ない。
ギリシャのヘアカットを主張したドイツは、「自分勝手」「勝ち逃げ」等と(批判)報道され、米格付け会社もドイツ同様、ギリシャをイジメているといった印象で、ギリシャに対して厳しい姿勢をとる者は悪者扱いされてきた。
しかしながら、ギリシャ問題に関して正しい事を言っているのはこの両者であって、警告を無視して緩々な体制を保つ事は、ユーロの傷口を拡大していく事に他ならない。 厳しい事を言っている者が、後になって(正しかったと)評価される事は歴史が繰り返してきた「過ち」でもある。
報道ベースだと、ギリシャ2次支援の額は1次支援1100億ユーロを上回る1200億ユーロになるのではないか、といわれている。
当然ながらこの額は、昨年のeTARP 設立時と同様、市場の安心感を誘いだすアナウンス効果も見込まれている訳ですが、無責任なアナウンスを繰り返すばかりで、実際の実行時には出し渋るといった姿勢は、既に透けて見えている。
昨年自分は、欧州危機について「実行不可能なハッタリだって必要だ」なんて事を連呼していた 訳ですが、欧州の姿勢は既にバレている訳であって、通じないハッタリほど辛いものは無い。 分かり易く言うと、その場を乗り切るために、(お金を)出したくないのにタンカを切っている事になる。 そんな人が周りにいれば、誰だってそのうちウンザリするはずで、今の欧州がやっている事はそれと同じ事だと言える。欧州は市場を裏切る事になるだろう。
欧州の実態は、EA(ユーロエリア)各国や、IMFといった連帯保証人の負担がどんどん増加しているだけ。 格付け動向や報道のされ方次第で、簡単にレッドゾーンに達する脆弱さを帯びている訳であって、実際のソブリンウイルスは、EA各国に浸透し始めているように見える。
EUは、南欧の病巣を切り取らずして、大きなバンソウコウを張っているだけの状態で、こんな事を続ければ、行きつく先は目に見えている。 自力解決が可能であるはずのユーロ各国が、EFSF管理下へと次々と追いやられる事になるだろう。