「飲食は“人”産業」を再認識 | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

外資系 戦略コンサルタントの着眼点

戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


ある飲食チェーンのCEOと議論をしていました。

急成長して日本のあるカテゴリーではシェアNo.1になった企業で、日本での成長余力も小さくなってきているため、そろそろ海外展開を本格化させようと考えています。

すでに12カ国に出てはいるものの、本格化はこれからで、どう進めていくかのディスカッションをしました。

それなりに業態としても競争力のあるチェーンなので、欧州や東南アジアも含めてもう少し加速できるのでは?という話をしていたところ、そのCEO曰く、「フランチャイジーやパートナーを募って拡大するだけなら、いくらでも事業は急拡大できると思うんだよね。でも、それじゃダメだと思っている」

もう少し聞いてみると、重要なことは「チェーンとしてのDNAをいかに失わないかである」とのこと。
どんなに拡大しても、Visionや企業としての想いに共感ができる人の育成とサービス品質が担保できなければ、どこかで拡大のバブルが弾けるというのが、CEOの持論です。

確かに一昔前にユニクロがイギリスに進出した際に失敗した背景には、ユニクロらしさの喪失がありました。

現地の社長を雇って、現地のニーズにあわせた商品開発をしたわけですが、一方で現地経営陣はユニクロのDNAを十分に理解していなかったために、単なる現地化した1アパレルになってしまったわけです。

結局、50店舗を掲げながら一気に21店舗まで拡大しましたが、最終的にはそのほとんどを閉めるに至りました。

その事例についてはCEOは知らなかったようですが、その場でサービスが生み出される飲食産業においては特に、働く人がどれだけVisionや想い、そして提供すべきサービス水準を共有しているかがすべてだと、十分に理解しているのでしょう。

サービス産業において最も重要なのは人だとよく言われますが、それを本当の意味で理解しているからこそ安易な海外展開はしないわけですし、そんなCEOが率いるチェーンだからこそ、国内においても短期間でシェアNo.1を達成できたのだと気付かされます。