シンデレラマン

映画みたいな話だ。

先週アメリカのメジャーリーグで、
ナ・リーグ東地区の首位を走る新興チーム=
ワシントン・ナショナルズの大家投手が先発し、
試合の中盤、交代を告げにやって来た監督に背を向けて
ボールを渡さなかったことから監督が激怒。

大家投手を翌日、代走に起用(投手の代走起用は極めて異例)
したうえ、次の先発予定試合の開始6時間前にトレードを通告(!)
するという極めて酷い仕打ちで、下位に低迷する中部地区の
ミルウォーキー・ブリュワーズに放出した。

この監督はメジャーリーグ機構の元規律委員長を務めていた人。
たまたま礼儀には特別うるさい人だったとはいえ、
大家投手は一昨年まで2年連続二桁勝利を挙げていたチームの勝ち頭。
エース級の存在だった。それを態度一つで豹変して、
切り捨ててしまったのだ。日本じゃ考えられない。

大家投手はすぐに新チームに合流し、昨日のデビルレイズ戦に先発。
そして、なんと、その試合で自身メジャー初となる完封勝利(!)
を収めたのである。やったね!……その瞬間、
マウンド上の大家投手から何とも言えない笑みがこぼれた。
新チームメイトから歓迎のハイタッチが続いた。

ところが翌日、今度は相手のデビルレイズ先発・野茂投手が、
そのブリュワーズ相手に日米通算200勝(メジャー11年目で
122勝)という初の偉業を達成してくれた!!!!

最近、球速の衰えが誰の目にも明らかな野茂投手だっただけに、
たまにはそんな嬉しいニュースに心から一喜一憂したい。


野茂投手については誰もがよく知ってる存在だから説明不要
だけど、大家投手のニュースはそんなに大きく扱われない。
あまりよく知らない人もいるかもしれないので、少し紹介を……。

彼は横浜ベイスターズ在籍時、大半を2軍で過ごし、
4年間で1勝3敗という成績しか残せなかった。
そこで98年に米国行きを直訴、マイナー契約で渡米。
その後、マイナーリーグで完全試合を達成するなどの活躍で、
メジャーに昇格。徐々に頭角を現していった。

現在、母子家庭に育った大家投手は、
日本の片親しかいない子供たちを自費で
毎年何人も自分の登板試合(アメリカ)に招待し、
一人一人との対話の場も設けている。

そんな彼の地道なボランティア活動を知っている人には、
今回の突然の放出、完封劇は感動すら覚えるものだった。


その点、イチローの1000本安打は、タダの通過点。
当たり前の展開で、感動まではいかない(失礼ですネ)。
なぜなら、イチローにはもっと上のレベルを
みんな期待しているからだ。

例えば、1940年代以降、ウィリー・メイズを最後に
誰一人として達成した者がいない「4割打者」。
日本では誰も達成していない前人未到の記録だ。
イチロー以外の打者には、誰も期待していない。
彼一人だけが、そういうレベルにいるのだ。
いずれは彼の映画も作られることだろう。


スポーツの記録や勝負などにおける感動の物語は、
まさに「事実は小説よりも奇なり」で、
つくり話では考えられないような展開をする。
それゆえ実話を基にしたスポーツ映画は数多く存在し、
エライ昔の伝説的逸話などが映画化されたりもする。

1910年代から何度も4割打者に輝いた生涯通算打率の記録
保持者『タイ・カップ』(トミー・リー・ジョーンズ主演)や、
かつてすべてのホームラン記録保持者だったベーブ・ルースの
『夢に生きた男~ザ・ベーブ~』(ジョン・グッドマン主演)
……もちろん、野球ばかりではない。

『炎のランナー』もそうだし、『レイジング・ブル』もそう。
ともに何十年も昔の実話を基に描いた名作だ。





タイトル: 炎のランナー




タイトル: レイジング・ブル



現在、全米公開中で早くも来年のオスカー候補筆頭と
大評判のロン・ハワード監督最新作『シンデレラマン』
(ラッセル・クロウ、レニー・ゼルウィガー主演)も、
1930年代の伝説のボクサー、J・ブラドックの物語だ。

興行的にも先週頃までは『マダガスカル』『ロンゲストヤード』
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のビッグ3に
次ぐ順位まで食い込むスマッシュヒットとなっていた。

コレ、とっても良かったよ(実は、もう見たんだーッ!!)、
『レイジング・ブル』よりも。甘チャンかもしれないけど
……詳細は、そのうちね。日本公開は9月らしいので。