ガールズ&パンツァー 劇場版

を見ました。

http://girls-und-panzer.jp/

テレビ放映されていた人気アニメ「ガールズ&パンツァー」の映画版。

ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル内コーナー、ムービーウォッチメンの監視対象になったので12月1日に1000円で観賞。

「これは日本版マッド・マックスだ!」なんてキャッチコピーも伝え聞くし、Yahoo!のレビューも異常な高評価だし、自分の中のハードルをかなり上げた状態で見に行きました。

映画は「3分でわかるガールズ&パンツァー」という解説アニメから始まります。世界に「戦車道」という概念が存在すること。戦車道のルール。主要キャラのなれそめ。戦車で実弾を撃ちあってるけど乗組員は絶対無傷、というピースな世界なのです。

TVアニメの続編にあたるのが今回の劇場版。おさらい動画があったとはいえ、キャラクターを改めて掘り下げるような事はしません。

しかし劇場版でも「キャラクターを描く」という当たり前のアプローチが必要なのは明白で、今作の前半ではなかなかキャラが見えてこない。

出来上がった設定があるのは分かるしそれを壊す必要はないんですが、膨大な数のキャラクターのほとんどがセリフでしか存在感/個性を出せてないのが残念。いかにもファンサービスというか、目配せというか。映画的とは言えないと思う。

あとは戦車ごとの個性がほとんど描き分けられてないのも残念。火力に長けるとか機動力に優るとか耐久性が高いとか、そういう個性があるアニメかと思ったんですけどそういうのはほとんど無いんですね。

機動力が高い車両を集めたチームとかあるんですけど、物語を形成するのに役立ってるほどではない。

個人的に『World of Tanks』というオンラインゲームをやっていたので、戦車については知らなくもない人間。戦車にはもっと個性を押し出して描いてほしかったです。

というかキャラクターも戦車も数を絞ったらもっと魅力を引き出せたと思うんですけど、それだとクライマックスの30vs30大規模バトルが成立してない。うーむ。

作中の戦車戦はオープニングとクライマックスの2試合。ハッキリ言ってこの映画、戦車道の試合を見せたいがために存在する作品だと思います!

だってすごいもん。戦車戦。

第二次世界大戦以前の戦車が出てくる割に自動車のようなスピードと小回りで動き回る戦車には若干の違和感ありましたけど、そういうテイの世界だと考えればすごく楽しかったです。

サバイバルゲームのように「砲弾が一発当たったら死亡認定」ではなく、直撃を食らって致命的ダメージを追うか、車体が横転したところで脱落という扱いなので逆にスリリング。

従来のカーアクションとは一線を画した砲弾の撃ち合いは画的に派手で面白いです。圧倒的なスケールを誇る重戦車や、自走砲による上空からの砲撃に主人公側が慌てふためく描写も良かった。

戦車戦における勝敗を分かつロジックも、前半の試合ではやや曖昧でしたがクライマックスではうまく盛り込んでいて痛快。重要拠点を占拠するかしないか、分散した戦力をどのように維持するのか。仮想戦としてのリアリティが確かに感じられました。

そしてリアリティの先にある、アニメならではの荒唐無稽なアクションが次々と盛り込まれていて、そのイメージの多彩さには感動しまくり。戦車を戦車に乗せてアクロバチックな攻撃を見せたり、観覧車を軸から外してゴロゴロ転がしたりするのも面白かったです。

クライマックスのラストにはセリフが消失して、静かで激しい戦いが繰り広げられて空気が一気にシリアス化。

正直なところ、クライマックスの途中から涙がツツーっと溢れだしてどうしようもなかったです。それくらい熱量の高いアクションだった。超感動しました。戦車主観(Point of View)から、カメラが戦車の正面に回りこむカットはダイナミックで創造性豊かで超カッコ良かった!

突撃しまくってチームに迷惑をかけていた日本製戦車軍団を率いていたキャラが成長を見せるところも良かったですね。ただ、そういうキャラクターの成長過程、成長がもたらす勝利などはあまり描かれてなかったかな。

見終わった後の満足感はかなり高かったのですが、振り返ってみると中盤の牽引力の無さは露骨でした。廃校にしたがる論理性もゼロに近いしなあ・・・

マッド・マックス怒りのデスロードが凄いのは、ほぼ新作で、ほぼ全編がハイテンションなアクションシーンで占められているにも関わらず、キャラクターから世界観までしっかり描き切った上にドラマ性も非常に深くて感動的なんです。その辺りはガルパンが及ばない技巧。

しかしガルパン劇場版のアクションはマッド・マックスに匹敵する熱量を持っていたと言っても過言じゃないかもしれない。凄みや執念を感じました。そんなアクションシーンだけでも、この映画が生まれた意義と言えるんじゃないでしょうか。とにかく泣かされました!!