ナトリウム漏れ事故から14年余り。高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開をめぐり、国と県が地域振興策で最終合意するまでの歳月は、両者による駆け引きの歴史でもあった。もんじゅを所管し早期再開を目指す文部科学省と、運転再開を切り札に見返りを引き出したい県。26日の合意を受け、国と県の担当者らは、“関門”を乗り越えて安堵(あんど)の表情を浮かべた。【酒造唯、安藤大介】

 地域振興策の中で県が強く求めているのは、北陸新幹線の延伸。福井から東京までの所要時間約3時間半を約50分短縮できる。交流人口の増などで年間175億円の経済効果も期待され、新幹線は県の悲願になっている。

 事故によるもんじゅの改造工事には、日本原子力研究開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)との安全協定に基づく地元の事前了解が前提だった。04年5月、国は工事に入るため、西川一誠知事と文科、経済産業両相による3者協議の場を設けた。しかし、県が求めた北陸新幹線の県内延伸に色よい返事がなく、西川知事は工事着手の是非を「直ちに判断する状況にない」として態度を保留。国を慌てさせた。

 同年12月、政府・与党(自民)の整備新幹線検討委員会は北陸新幹線金沢駅までの延伸と福井駅の05年度着工を決定した。駅が線路より先に造られるのは整備新幹線史上例がなく、「もんじゅカード」と揶揄(やゆ)された。西川知事は05年2月、敦賀市とともにもんじゅ改造工事を受け入れ、駅は09年2月に完成。国にとって、3者協議の失敗は苦い経験となった。

 運転再開を前に、旧自民党政権は金沢-福井の工事認可と、新幹線敦賀駅の新規着工を約束していた。しかし昨年の政権交代で状況が一変。10年度予算案で、整備新幹線未着工3区間が白紙となった。県議会はこれに猛反発し、今年の2月議会で敦賀までの早期認可を求める「『もんじゅ』の運転再開に関する意見書」を全会一致で可決した。西川知事も、新幹線延伸が運転再開を認める前提条件と公言した。

 今回の3者協議について、文科省幹部は「過去の二の舞いは避けたかった。知事にすべて(地域振興策を)納得してもらう前提で話を進めた」と明かした。

 民主党政権は整備新幹線未着工区間について今夏までに明らかにするとしている。3者協議を終えた西川知事は、「(国には)今の段階で言えることを言ってもらった」と満足そうな表情を浮かべた。

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