作戦No.36【試作兵器試験PART2】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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―2026年4月5日 12:35―
―日本のどこか―

 突如。一つの都市が、皇帝都市アダンの攻撃によって壊滅した。被害総額は、たくさん。死傷者はゼロ。つまりのところ、EDFの世界でいつもどおりの展開である。
 都市を破壊したアダンは、その後空間転移によって移動。後には無数のインペリアル・ガードが残されることとなる。
 EDFは、これらへの攻撃を決定。ただちに、ペイルウイングを主軸とした対空戦闘部隊を送る――――はずだった。
 しかし、今ここにいるのは、二人の陸戦兵だけであった。グレイ隊員とイーグリット隊員である。彼らは、今…少し離れた位置からインペリアルガードの様子を伺っていた。どうやら待機モードらしく、こちらに仕掛けてくる様子はない。
「……ふむ。予想通りだ。武器のテストには理想的な状況だな」
 眼鏡のブリッチを中指でくいっと上げつつイーグリット隊員がつぶやく。その横では、グレイ隊員が不満たっぷりな表情をしていた。
「なぁ、なんで武器のテストに付き合わされるのが、俺なんだ?」
「何かあった時、一番頼りになるのは君だからな」
「そ、そうか…?」
 イーグリット隊員の意外な返事に、グレイ隊員は少しばかり嬉しそうな表情を浮かべた。だがしかし…その本当の理由が【試作兵器が爆発しても、一番大丈夫そうだから】と言った物である事を、彼は知らない。いや、知らない方が幸せだろう。人生にはそういうこともあるのだ。
「とりあえず、新兵器のテストと行こう。まずはこれだ」
 そう言って、イーグリット隊員はどこからともなく、一つ目を取り出した。
「そ、それはっ…スカイピューマ!?」
 それを見たグレイ隊員の表情に衝撃が走る。
―――スカイピューマ。それはスカイタートル、リヴァイアサンに対抗して、イーグリッド隊員が勝手に開発中だった世界最速にして、世界最弱誘導性ゼロの高速ミサイルだ。
 グレイ隊員が驚く中、イーグリット隊員は済ました表情で告げた。
「残念だが違う。これはスカイピューマとは違う」
「へ?」
 そうは言うが、明らかに外見などが似ている。怪訝な表情を浮かべるグレイ隊員。
「このミサイルはスカイピューマの最終発展型。スカイタートルで言えば、リヴァイアサンに相当する完成品だ。名前は、【スレイプニール】」
「お、おぉぉ」
 とりあえず、名前だけはすごそうだったのでグレイ隊員は感嘆の声を漏らす。
「では、さっそく試してみてくれ」
「……お、おう」
 さすがに最終発展型ともなれば、それなりの威力はあることだろう。そう期待を抱いて、スレイプニールを構えた。一番手前にいたインペリアル・ガードに照準をあわせる。どうせ弾速だけは速いのだ。撃てば当たる。
 ターゲットロック。
「くらえっ!!」
 トリガーが引かれた。次の瞬間―――いや、トリガーを引いた時には、狙ったインペリアルガードまで真っ直ぐなミサイルの煙が伸びていた。速いなんてものではない。それこそワープでもした?!と思えるほどの瞬間。超スローモーションですらぶれて見えそうなほどに凄まじい――脅威的な速度だった。スカイピューマどころではない。これはもはや―――光速に近い。
「………………」
 予想を斜め上どころか真上に行く早さに言葉を失うグレイ隊員。だが、彼の予想はさらに裏切られる事となる。
 目にも映らない速さで飛んだスレイプニールは、ストップウォッチでも計測不可能な速さでインペリアルガードに直撃した。して、その結果は―――









 ポヨン♪











「……………………」
 壁にぶつかった紙飛行機の如く。気が抜けるほどに軽い音を立てて、地面へと落っこちた。
 あとに残るは沈黙と静寂。
「早くなっただけかよっ!?」
 すかさず突っ込むグレイ隊員。というか、胸倉を掴んでガクガク揺するほどに強烈なアプローチだ。
 それに対しイーグリット隊員は、実にマイペースに答えた。
「何を言っている。威力も強化されている。見たまえ」
「……あ?」
 指を差した方を見ると、そこにはインペリアルガードが飛んでいた。
「……何も変わってねぇじゃねぇか」
「そのとおりだ。前回のスカイピューマなら、当たれば攻撃モードに変わっていた。だが今回は違う。どうだ、威力も強化されているだろう」
「…………………………」
 グレイ隊員は言葉も出なかった。威力強化。確かに威力は強化されている。
 ただし駄目な方に。つまりスカイピューマの攻撃力が一桁とすれば、スレイプニールの攻撃力はゼロに近いというわけだ。
 質量保存の法則とか、速度が増せばそれだけで威力は上がると言う自然界の法則とか、それらを全て無視するこの威力。なんて言うか、違う意味ですさまじい。

 超光速ミサイル【スレイプニール】。それは敵が攻撃された事が自覚できない程の最低威力のだった。
 当然、待機モードすら解除できないわけだから、ハッキリ言って何の役にもたたない。いや、立つはずだない。これなら、まだグロームXだとかHG-13Aとか、EDF有数の駄作武器の方がマシかもしれない。あの殺虫スプレーEXですら、足止め程度にはなる分、まだマシだ。
「…………」

 突っ込み満載の武器。だが、さすがのグレイ隊員も突っ込む気力はなかった。それほどまでに脱力させられてしまったのだ。
「……ふむ。成功だな」
 その横で満足そうに頷くイーグリット隊員。それを見て、グレイ隊員のどこかでプチッと言う音が響いた。
「てめぇっ!!なんて、しょうもないものを作ってんだっ!!ごらぁっ!!」
「しょうもないとは失礼な。限界に挑むのは、技術者として当然の事だ」
「当然のことじゃねーっ!!アレをおとさねぇと、この話がおわらねぇだろうがっ!!」
 …いやグレイ君。突っ込むところが違うよ(汗)
「問題ない。次の新兵器も用意してある」
「………次もしょうもなかったら、ゴリアスSSSで吹っ飛ばすからな…」
 なにやら負のオーラを漂わせるグレイ隊員を尻目に、イーグリット隊員は次の武器を取り出した。
「…おい、待てよ。レイピアとか使えねぇぞ?」
 イーグリット隊員が取り出したのはレイピア系統と同じデザインの武器だった。
「問題ない。リロードは無理だろうが、一回分くらいは撃てる」
 そのとおり。ペイルウイングの武器はプラズマエネルギーユニットでリロードされる。だから、リロードを考えなければ一回くらいは使えるのだ。
「……いや、でも。こっからじゃとどかねぇよ」
「良いから撃ってみたまえ。ここからでも使えるものだ」
 そう言ってレイピア型の武器を渡す。
「……仕方ねぇな」
 渋々ながら、それを受け取り。適当に狙いをつける。距離はスナイパーライフルとかの長射程だ。普通ならば届くはずはないが―――
「まぁいいさ。おらよっ!!」
 駄目なら駄目で吹っ飛ばすだけだ…と、グレイ隊員は引き金を引いた。
 次の瞬間。無数のプラズマアーク刃が伸びた。これでもかってくらいに伸びまくった!!そして、それは空中にいる無数のインペリアルガードを貫いていく。
 もはやレイピアと言うより、対空用拡散レーザーである。
「………………………」
 今度はスレイプニールとは違った意味で言葉を失った。なんて言うかすごすぎである。
 そんな彼の横で、イーグリット隊員は再び満足そうに頷きながら、それについて説明し始めた。
「プラズマウィップだったか。あれを見て、さらに射程を拡大できるのではないかと思ってね。試行錯誤の末、完成したのがその兵器【マスターウィップ】だ。威力はマスターレイピア並で射程は1000m。唯一の難点は、照射可能時間が短いことと、リロードにかなりのエネルギーが必要なところだな」
「………なんなんだ、この差は」
 使えない武器から一転して、このスペック。グレイ隊員は、おもいっきり振り回されまくっている。
「……まぁ、テストは成功だな。問題は残りのアレだが」
「…あ?」
 さすがに今度は攻撃モードへと変わっていた。今だ残るたくさんのインペリアルガードが、全てこちらへと殺到してきている。
「………なぁ。今日は、いきなり連れてこられたから何も持ってねぇぞ?」
「…ふむ。マスターウィップも弾切れになってるな。…あとは、これだけだ」
 そう言って差し出されたのはスレイプニールだった。
「こんなもんで、どうしろっていうんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「まぁ、ないよりはましだ。それのダメージはゼロではないからな」
「…………どのくらいだよ」
 どこかいやな予感がしつつも聞いてみる。
「0から始まって0が20個並んだ後に1だ」
 スレイプニール。ダメージ:0.000000000000000000001
「……俺に死ねと?」
「粘れば、他の部隊が救援に来てくれるだろう。それまでの辛抱だ」
「…うがぁぁぁぁぁぁっ!!!!!(怒) 」
 ついにグレイ隊員はブチキレ、がむしゃらに両手を振り上げた。そのついででトリガーを引いてしまったのだろう。ほぼ真上に二発目のスレイプニールが撃ち出された。
 再び光速に匹敵する早さで一瞬にして見えなくスレイプニール。ただ、偶然にも射線上にはインペリアル・ガードは存在していなかったため、ほぼ敵集団の真ん中を突っ切っただけだ。
 しかし、ここで予想外の出来事が起こった。スレイプニール通過後、インペリアル・ガードが何かに煽られたかのように体勢を崩し、次々と爆発していったのである。
 その規模は、マスターウィップどころではない。
 その辺一帯の上空にいたインペリアルガードの全てが落ちていた。
「…………な、なんだぁっ?!」
「……ふむ。超高速によって生じた衝撃波のせいだな。これは予想外だ」
 なんとも意外な展開。例によって素直に驚くグレイ隊員と、やっぱりマイペースなイーグリット隊員。

 どうやらスレイプニールは、直撃させないことで初めて真価を表すミサイルだったらしい。どうやら、イーグリット隊員もここまでは考えていなかったようだが、まさにタナボタである。

 こうして、波乱に満ちた試作兵器テストは終了となったのである。



~おまけ~
 その後、一度だけスレイプニールは実戦配備されたらしい。
 しかし、地面に水平に撃った所、衝撃波によってインベーダーもろとも射線上のビルはおろか、前にいたEDF隊員の全てが吹き飛ばされて戦闘不能になるという事態が発生。
 そのため、HG-13Aに次ぐ封印指定となったのだとか…。なお、マスターウィップはEDF基地の対空兵器として正式採用が決定し、現在配備中なんだとか(マテ


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□えむ’sコメント□

 と言う訳で、忘れられていたスカイピューマ改め、スレイプニール登場です。

 スレイプニールの攻撃力は、ジェノサイド砲には敵いません。しかし、直撃させなかった時の攻撃範囲は最強。撃てば、その方向にいる全てが吹っ飛び破壊されます。…なんて恐ろしいんだ(マテ