カレーほど好みが分かれ、それについて熱く語る人が多い料理は他にない、
私はそう信じています。

いやいや、ラーメンがあるじゃないか。
そう言う方もいるでしょうが、それは間違いです。

ラーメンはすでにそのような半可通に論評することを許さない、玄人ワールドを形成してしまい、うっかり口を挟めばてひどいお叱りを食らってしまうような、奥深い題材に出世してしまいました。

私はラーメン好きでして、などと言おうものなら、意味不明の専門用語を織り交ぜた答えに窮する質問が1ダースは飛んできます。
普通の人はそれに怯え、口を閉ざすようになってしまいました。

しかし、カレーはまだまだそのような知ったか野郎が少なく、人の話を聞くときも皆、鷹揚です。
相手の嗜好を尊重するゆとりが保たれています。

私は醤油、私はソースに生卵、いやいや仕上げに味噌ですよ、僕はあんこを少し落とします。などの食い方に関する自由度も、担保されています。 
それが分かっているので皆、楽しげに会話に参入してきます。
まれに料理の先生かぶれが事細かにレシピを語りますが、チャツネとかブーケガルニとかイメージできない小道具が出てくると、一様に感心した様を装いつつも、内心では(このカレーおたくが…)と毒づいているものです。

人々は、(あくまでカレー偏差値40から60の最大ボリューム帯の人々の話ですが)カレーを語るときの軸は二つしかないのです。
ドロドロ か サラサラか
具は何を入れるか
この二つです。

実家のカレーにノスタルジーと家庭の温かさを感じる、少し疲れた大人の大半はドロドロ派です。

都会的なスノッブな生活に憧れを感じている若くて獰猛な人ほどサラサラ派で、具もありきたりじゃないもの
小エビとアボガトとか、ほうれん草とホタテとかを言うはずです。
こういう女がいたら、絶対に要注意。金がかかること受け合いです。

もし今、アナタの近くに気になる異性がいるならばカレーの話をするのは、相手の素顔を知る絶好の機会です。
結婚なんて考えてない、今は遊び相手が欲しいだけというならば、ドロドロ派のポークとじゃが芋派にはくれぐれも気をつけるべきです。
ドロドロなエンディングは約束されたも同然ですから。
どんなに仮面をかぶるひとでも、つい無警戒になるのか、このカレー談義と、好きだった中学のときのジャニーズタレントです。
後者は年齢がばれます。