ファフナー・マークゼクスが守ったもの | k.i.o景

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デザイナー・枝松 聖のブログです。

ファフナー・マークゼクスに搭乗した翔子は機体に内蔵された武器を手に
取り、戦う。予備の刃がすべてなくなるまでフェストゥムの体を打ち続け、
残弾を使い尽くすまで撃ち続ける。攻撃が通用しないと総士に言われよう
とも、マークゼクスに備わるちからを翔子は最後まで試そうとする。

翔子の戦う姿は一騎のそれよりも激しい。ふだんの弱々しい彼女からは
想像できないほどに。

彼女には「出来ないこと」があまりにも多い。学校に行くこともできず、
避難が必要なときも真矢の肩を借りなくてはならない。ベンチに座って
待つという、ふつうはラクに思えることですら体力を消耗してしまう。

しかし彼女はファフナーに乗ることが出来た。「一騎くんの島を守る」ため
に、彼女はマークゼクスに内蔵されたちからのすべてを使う。
「出来ないこと」を知るからこそ「出来ること」をすべてやろうとしていた
のだろう。「空を翔ぶ」。一騎のマークエルフにはない、この機体に備わっ
た能力をも彼女は戦うための武器にする。

翔子が翔び立ったとき、島は空白の中にあった。新国連と島の大人たちの
間で、島民の命とファフナー・マークゼクスとが取引されようとしていた。
一騎以外のパイロット候補生たちを実戦投入することはためらわれている
ままだった。命を守るために、誰も傷つけないために、問題が先送りに
されている状態だった。

翔子は母・容子へ言った言葉を空の上で後悔する。マークゼクスに乗る
彼女を止めようとしたときのことだ。そのときの翔子の様子はひどく冷静
だった。おそらく「とっさに口をついて出た」言葉ではなく、何が母を
いちばん傷つけるかわかった上で「選んだ」言葉だったのだろう。止めよう
とするその手を振りほどき、先に進むために。

「一騎くんの島を守る」。彼との約束を守るために、翔子はすべてのちから
を使った。どこまでも蒼い空の下で、彼女は微笑んで、泣いていた。

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