逆襲のシャア・1 | k.i.o景

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デザイナー・枝松 聖のブログです。

「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を観ました。

宇宙暦0093。
自らの素性を明かし、シャアはネオ・ジオン総帥として、
ふたたび表舞台へ登場、地球を粛正せんと地球連邦軍に
戦いを挑む。連邦軍の独立部隊ロンド・ベルで活動して
いたアムロは新型MSを開発しながら、それに立ち向か
おうとしている。
その頃、地球では家出してインドで友達とニュータイプ
になる修行をしていた少女・クェス・パラヤも宇宙へ
上がらんとしていた。

88年公開の劇場作品。79年放送の「機動戦士ガンダム」
から続くアムロとシャアの因縁の決着。
二年ぶりくらいに再見しました。

自分が人々に影響を及ぼす人物であることに自覚的、
本音と建前の使い分けをしながらそれぞれの属する組織
で、背負うものもある中での戦いは規模も大きく、本人
たちもきわめて落ち着いたトーン。
全体の空気の中ではそのように進みながらも、そのじつ
「まだ怒りに燃える闘志で巨大な敵を撃てよ」という部分
もそこここでのぞいていて、大人になっても、そうそう
聖人君子になるものではないよねというのが、とても
おもしろいなと思うところです。

二人の側にいるパートナーは、かつての人間関係とは
違うところから出てきた女性たち。
小説版では「Zガンダム」で登場したベルトーチカが
アムロのパートナーだったりしますが、この映画では
お互いに距離感のある女性を選んでいるのが、30代独身
男性の恋愛として、ありそうな感覚。

アムロの側にいるのはチェーン・アギ。
女性メカニックでファッションのセンスが悪い…けど
美人という設定が、異様にオタクちっく(笑)。
おキャンなフラウ・ボウでなく彼女をアムロが選ぶ
というのもなんとなく納得。
ウブな男子のハサウェイでもわかるくらいアムロに
ベタベタしちゃう彼女は軍人としてはちょっと
どうなの?と思わないでもないけれど、ヒロインと
して、けっこう大切に追いかけられてゆきます。

シャアを支えるのは女性士官ナナイ・ミゲル。
チェーンとは対照的に公私を使い分けるデキる女では
あるのだけど、序盤での、うなじを見せながらモニター
越しにシャアと話すカットが一瞬にしてそういう仲だと
感じさせる艶っぽさ。
でも(たぶん)情事の後の潤いのあるムードの中でも
シャアは心の内が見えない男、一人になった時には
苛立ちも感じてしまう。というか、サブキャラである
彼女の深い部分へわざわざ踏み込んで描いているところ
に、この作品の凄味を感じます。

身を焦がすような恋愛でなく、同じ方向を大体むいて
いるという関係は、女性たちそれぞれに寂しいものは
感じていたっぽいけど、概ねいい感じに運んでいたよう。

そこへアムロ的には「無邪気」という少女・クェスが
若さ全開で突撃してくることで、女性たち、そして
シャアたちもざわついてゆくことに。

戦場での生々しい恋愛事情というややスキャンダラスな
視点で描かれているけど、それは世代の差や世代的な限界
という、シリアスな問題もはらんでいるのかなというのが
今回、強く感じられました。
以前観た時よりも、そういうことを意識するようになって
いるのかもしれない。
ただ僕自身は、どちらかというとクェスの感覚のほうにも
「わかる」部分があったりもします。
そのあたりはまた別の日記に。

本日の、公開当時は「光るSDガンダム」に興味のあるお年頃。

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