高架橋を一晩で撤去する様子を見に行った! | 大山顕の首都高エコマニア

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いやー、すごかった。徹夜で見た甲斐があった。なんのことかというと、タイトルにもあるように、高速道路の高架の一部がざくっと切り取られて撤去される様子のことだ。このスペクタクル・ショーが行われたのは7月28日深夜から翌29日未明にかけて。

まあとにかくその光景をご覧いただきたい。


東京は汐留のどまんなか。このときの時刻は24時前。撤去する部分のそばになんだか明るい場所が。ここに「多軸台車」という今回の主役が控えている。


出てきた!ここらへんの道路が通行止めになって、しずしずと現場へ。それにしても都心のこういう工事って、敷地の余裕がなくてほんとたいへん。


ゆっくりと慎重に現場に向かう多軸台車のあとについて行く。近くで見るとでかいなー。


目的の、撤去する高架の下に収まった(って簡単に紹介してるけど、ここまで移動するのに1時間ぐらいかかってます)。いよいよこの多軸台車の上にこの高架を載せる。ご覧いただきたいのはこの台車と高架までの距離。


ゆーっくりと台車の上の部分が上がっていく。慎重にゆっくりと上がっていったので、気がつくと「あ!上がってる!」って感じだった。そしてその持ち上げてるぴかぴかの柱のような部分に注目。


クレーンなど「働く車」に必ずある油圧動力部のぴかぴか。人間で言えば筋肉だ。たくましい。


で、上がったこの台車が高架を受け止めるわけなんだけど、その前にいったん止まって、なにやら作業している様子が。


なにやってるんだろうなー、と思って見てたら、台車がちゃんと水平に全体で高架を受け止められるかどうかを計ってるのだ。それにしても左の人は首が痛くなりそう。でも高速道路の高架に頭押しつける経験って貴重だよな。いいなー(←のんきなこと言ってすみません)


関連して感動したのは、この光景。多軸台車自体の水平を水準器で計っているのだ!すげー!


そういったご苦労の末、ようやく高架にセットされた模様。


あとから気がついたんだけど、この縦筋3本は事前に台車で支える位置をマークしておいたものだったみたい。


そう、いろいろ事前に綿密に準備されているのだ。この夜のうちに一気にはできないからね。撤去するこの高架も、もちろんこれから切断するわけじゃなくて、事前に切り離して仮止めしてあった。いよいよ、台車に載った今こうやって外すのだ。


クレーンで仮止めの部材が取り去られた!


さっきの3本筋もそうだけど、見ているといろいろと気がつくことがあって、たとえばこの切断もそう。台車が高架部分を下げていったときにスムーズに本体から離れるように末広がりになっているではないか!なるほどねえ。


だいぶ下がってきた。この降下もしずしずと行われた。なんせこれの重さ245tだからね!


台車の上に固定されて、最初に台車がいた場所まで高架を運ぶ。


おおおー!


高速道路の高架の断面ってこんななんだな!けっこう空洞。そして気がついたのが、桁の左右の大きさが異なること。八重洲線のこの部分ってカーブしてて、どうやらこれでバンク(高速でカーブをスムーズに通り抜けられるように路面に付けられている傾斜)をつくっているらしい。ほほー。


取り去られた残りの本体の断面はすばやく蔽われてしまった。すばやい!ふだんなかなか見られないからじっくり鑑賞したかったのに!


深夜の汐留をしずしずと進む高架。なんか不思議な光景。


これも途中で気がついたんだけど、多軸台車自体には運転席ってものがなくて、こうやって外からラジコンみたいに操作してるのな!そりゃそうか、運転席からじゃ周囲の様子が分からないからねえ。


そしてみごとにヤードにおさまった。おつかれさまー。

いやー、ほんとおもしろかった。観覧料もいらずにこんなショーが見られるなんて。みんな寝てないで見に来ればよかったのに!って思った。

説明が後回しになっちゃったけど、この工事がなんのために行われたのかというと、いま東京では環状2号線という道路の整備が行われていて、その道路がちょうどこの八重洲線の地下にやってくるんだけど、その際この高架の脚がじゃまになってしまうのだ。(環状2号線の工事の様子も以前見せてもらったことがある。あれもすごかった!→デイリーポータルZ|都心地下25mの大ジャングルジム


今回の高架撤去の模式図。既存の「橋脚A」と「橋脚B」がトンネルにぶつかっちゃうので取り去られる。そのためにその上に載っている高架を撤去した、というわけ。(「首都高八重洲線架替工事の概要」より

いずれ、環状2号線のトンネルがぶじできたあかつきには、ふたたび高架がかけ直される。(それまた見に来なきゃな!)

ともあれ、この工事のため、2014年の2月まで20ヶ月間八重洲線は通行止めだ。こんな長期間の通行止めってめずらしい。それもこれも、都心でインフラ整備っていうのが本当にたいへんだからだよなー、と実感した。とにかく余地がない。先日麻布十番のどまんなかで行われている調節地の工事を見に行ったけど、とにかく場所がなくてたいへんそうだった。

今回その点で象徴的だったのは信号機だ。


撤去する高架は交差点の上だったので、信号がたくさんある。で、台車がくる前に信号の向きを変えていた。信号ってぐるっと向き変えられるのか!ってびっくりした。

東京でなにかをする、というのはスペースの捻出との戦いなのだ。

さいごに、いちおうこのブログは首都高のエコについてのものなのでそれらしい話をひとつ。現場の首都高の方に、撤去したこの高架はこのあとどうするんですか?って聞いてみたら面白い答えが。

「劣化具合や建設当時の設計施工の貴重な資料として、研究される予定です」

なるほど!


工事の様子に見入るぼくと友人。