エコビレッジもろつか歳時記 -3ページ目

価値観の変化を進化に変える地域の力

2018 12 月31 日(月)晴 

 年末の諸塚は氷点下の日々です。昨年も年末大寒波でしたが、今年も木枯らしが吹いて、荒れ気味の天気です。 

 平成最後の年末年始。次の年号は、どうなるかはともかく、2019年は、人口減少も加速化、担い手不足、外国人労働者増加、消費税増税、低減税率の導入、ポイント還元、キャシュレス...など、ちょっと考えただけでも、様々なキーワードが出てきて、前途多難な予感もします。 

 

 「現代社会は変化が激しくついていけない」という話をよく聞きます。確かに、現代社会の情報の量や伝達スピードは圧倒的です。テレビも多くのチャンネルがあり、ネットやスマホの情報は誰でも閲覧できます。ついていけないと思えるほど圧倒的な勢いで社会情勢は変化しているようですが、それは同時に人間自身、自分自身の価値観も変化による影響が強くあります。しかも、社会の変化と自身の価値観の変化は、実は現代社会だからという問題ではないようです。かつての地域コミュニティは、一定の人と情報のなかで生活し、得られる情報に差がありましたが、その情報を共有しあう日々の日常の中で、新しい共通の価値観がともに生まれて、変化も共有する幸せな世界がありました。知ること、理解しあうことでお互いの変化を自覚しつつ、コミュニティーを構成していったのです。

 現代社会との大きな違いは、コミュニティーの弱体化や人間同士の関わり方の希薄化で、顔の見えるもの同士の日常の共通性が低く、共通の価値観が生まれにくくなっていることではないでしょうか。むしろ、こうあるべきという理念というか、イデオロギーだけが先走りし、押し付けの価値観に踊らされている感もあります。流行語や今年のヒット曲を、年末に初めて知るのも、決して私だけではない気がします。

 大事なのは、変化を人のせいにせず、自らの変化も受け入れながら、過去の自分と未来の自分をちゃんとつなげていく日常的な努力ではないでしょうか。

 

 政治やビジネス、研究などの最先端で変化の中に身を置いて、多くの困難な課題に立ち向かおうという人たちがいることには敬意を表しつつ、地域に生きる自分たちは、「社会の変化の激しさ」を嘆かず、「自分自身の価値観の変化」を認めつつ、その制御を失わないようにしたい。

 そのためには、変化そのものに惑わされず、日常に存在する地域の良さをしっかりと評価し、その変化を共有し、コミュニティーのなかでの過去と未来との連続性を保つ努力をしたい。目新しいことに混乱せず、ずっと当たり前に続いてきたいことを、この先どうやって続けるかを考え、変化でなく進化を実践したい。

 年末の某全国紙で、人口減少による地方の衰退を取り上げ、それに「あらがう」取り組みの特集をしていました。マスコミ的にはニュース性の高いところに注目が行きがちですが、それだけが策ではない。社会や自分の変化を受け入れつつ、地域の文化やしごと、生活、学校...様々なことを次の世代につなげ、続けられる道を目指したい。次なる元号の待つ2019年へ

 

 あらためて、旧年中はお世話になりました。2019年も、ご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます

 

2017年、エシカルビジネス元年

2017年12月29日(金)

 今朝の自宅の気温は、零度。ここのところの寒波で、氷点下も日常化した気がします。そういえば1年前の2016年12月に北海道に行く機会があり、最高気温が氷点下の「真冬日」を体験しました。ニュースでは世界の平均気温は上昇している話はあり、夏は確かに暑いですが、冬は寒い。平均上昇というより、波のブレが激しくなっている気がします

 

 さて、今年も本当にありがとうございました。年1回、しかも年も押し迫った末のブログ。お世話になった皆様へのお礼と年賀のご挨拶も兼ねたメールのネタです。お時間のあるときにご笑覧ください

 

 年末の全国紙に、「2017は素数」という記事がありました。調べてみると、29も素数で、しかも両方とも3つの数字(素数)の立方数の和になる超レアな年だったようです。

 ちなみにマスコミが年末に取り上げた2017年の話題は、政治的には、某大統領のパフォーマンス、北朝鮮のロケット、総選挙、社会的には働き方改革、女性活躍時代、経済的には製造現場不正、仮想通貨、AI進化...。

 国や社会、経済からの情報だけでなく、全世界に向かって誰でもSNS投稿ができ、大量の情報がその重要性や信頼性を検証する間もなく、垂れ流され、虚偽だとしても、いつの間にか既成事実化していっています

 実際、それぞれの発信者は、それが正しいと信じているのかもしれません。「正義Justice」という言葉があります。辞書によると「人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値をさす」とあります。絶対的か、客観的かとかの難しい定義はともかくとして、どうも正義が、それを生む場である社会性を否定してしまっている気がします

 自国の利益のためには、排除し、罵詈雑言を浴びせ、ミサイル発射も辞さない。「○○ファースト」も気持ちは理解しますが、経済活動や社会活動の多様化で、ステークホルダー(利害関係者)が広範囲に広がっており、国や自治体の属人や会社だけで社会は成り立っていないのを忘れています。メイドインジャパンの製造現場の不正も、時代に制度があっていないという言い訳をいくらしたとしても、企業の風土が社会に取り残され、社会性を失いつつあることの象徴と思われます

 

 数年前からエシカル(倫理的)ビジネスが注目され始めています。企業活動は経済性だけを追求するのではなく、社会の必要性に合致したビジネスを前提にしようというもので、企業のCSRやCSVはかなり広がっています。諸塚村も取得している森林認証FSC(R)制度も、エシカルビジネスの手法のひとつです。今年読んだ哲学者・内山節氏の「半市場経済」という新書には、「エシカルビジネスは、利益を犠牲にして『よいコト』をするのではなく、『よいコト』をなりわいにするビジネス」とあります。社員を養い、社会に必要なものをつくるだけが企業の社会貢献ではなく、社会性と企業の事業性の一致が必要と考えるべきで、これはかつての日本では当たり前の思想であったようです

 個人や企業、国家や地域の利益も大事ですが、私たちが一番守るべきものは、もっと大事なものです。国連で2015年に採択され、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標SDGsに関して、国連のモハメッド副事務総長が「地球は私たち人間なしでも存続できますが、私たちは地球なしでは存続できません」と語っています。私たちの生活や事業活動は、地球環境も含めた社会と切り離せません。国連は、「誰も置き去りしない」と宣言していますが、これは私たち自らが主体的に解決すべき目標でもあります

 諸塚村のフェアウッド、フェアフーズの推進事業も、近い将来、素数の年2017年、平成29年が一つの分岐点になったといわれるように、これからもかんばります

 あらためて、旧年中はお世話になりました。2018年もご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます

 

<諸塚メモリアル2017年>

1月 地元紙元日版トップ~新国立への諸塚村産FSC(R)材の挑戦

     森林体感エコツアーの実施 ~フェアウッド・フェアフードの全国展開

2月 「木本」宮崎編のプロモーション参加

   「TSUMIKI」(発売:モア・トゥリーズ、デザイン:隈健吾氏、製造:諸塚加工センター)

~パリでのプロモーションの成功。諸塚のスギがルーブル美術館へ

  3月 地方創生事業を活用し情報発信の強化事業を実施

~村勢要覧、PR動画、村Webの全面リニューアルを実施、新聞全面広告

     諸塚村椎茸選別場のリニューアル工事第1期完了 ~椎茸生産体制の高度化第1弾

     第10回 世界森林認証祭り「森の恵みの感謝祭」を宮崎市で開催

  4月 小水力発電施設「川の口発電所」の操業開始

6月 諸塚村「仕事マッチング」協議会の設立

     九州玉入れ選手権大会(北海道和寒町との連携の深まり)

7月 NHK取材~諸塚村産FSC(R)材の取り組みの放映

諸塚村の4つのダムで「ダムカード」配布開始

産経新聞社「種蒔く人々」5回連載

  8月 諸塚村農林業インターンシップ事業開始

 10月 ㈱スーパーホテルで諸塚村産FSCの採用始まる。

11月 ワイス・ワイス社の諸塚村産FSC(R)材家具newMOROTSUKAシリーズ発売へ

 

イベント案内 

平成30年1月27日~28日 戸下神楽
平成30年2月3日~2月4日 南川神楽
平成30年3月4日 日本一早い!諸塚山山開き
平成30年3月 第11回世界森林認証祭り「森の恵みの感謝祭」の開催予定

 

POST-TRUTH(脱・真実)でなくRESPECTIVE-TRUTH(地域の真実)へ

2016年12月29日(木)
 季節外れの台風に、大寒波と大荒れの1年を象徴するような12月もあと3日となりましたが、皆様に大変お世話になりました。本当にありがとうございました


 2016年も、様々な出来事がありましたが、個人的には、中国、東京、北海道への行く機会をいただき、執筆依頼もずっと暖めていたテーマを元にしたものを2本書きました。仕事の上では地方創生の総合戦略事業の柱の2つである、①フェアウッド・フェアフーズ事業の推進②世界農業遺産のPRが、大きな転機を迎えました


 地域の特色を活かそうという「地域創生」は、他地域との競争と思われがちで、実際補助事業の獲得競争の雰囲気もあります。実は決してそうではありません

 ご承知の通り、資本主義経済は、大量生産、大量消費に支えられ、モノの生産よりもお金の流れ、つまり流通が支配しており、規模の大きいほうが圧倒的に有利です。モノや情報が溢れ、金融緩和でマネーもジャブジャブです。より大きな量を支配した方が、総取りとなる仕組みです。機械的に同じモノを大量につくるビジネスモデルは、すでに日本を離れ、より安く大量につくれる海外に移っています。

 

 ところが、地方創生のカギとなる地域資源は、農林産物を始めとして、その地域にしかないモノであり、数が限られ、経済を支配するには圧倒的に量が少ない。儲けが少ないのです。日本の地方で従来型の多品種少量生産のビジネスモデル通用しなくなっています。問題は、その価値を正当に評価する方法と、マスメディアや流通に支配されずに生産者と、それを必要なユーザーとをつなげる手法です。ここに戦略の生まれるヒントがあり、地方創生のキモになります

 

 諸塚村のFSC(R)森林認証の木材やしいたけは、その可能性を秘めた商品であり、フェアウッド、フェアフーズです。そして世界農業遺産として、諸塚村の多品種少量生産の複合型農林業を世界が認めてくれました。だから、この素晴らしい商品を、それを評価できるユーザーに、安心安全を担保しつつお届けしたい。品質や生産者の製法を重視し、効率は悪いけれど、それを地道に、正直にユーザーに伝えて、少しづつネットワークを広げていく。今年は、その可能性を大いに感じる1年でした

 

 一方で某国の大統領選や、某企業のサイトでは、誹謗中傷と虚偽の情報が乱れ飛び、「事実」や「何が正しいか」でなく、「誰が好きか」「どっちが得か」のエゴが正当化され、世界を動かすような激流が起こっています。オックスフォード大学出版局が、今年の英単語として「POST-TRUTH(脱・真実)」を上げているようです。真実の先に、もっと重要なモノがあるというのでしょうか

 20世紀末に、思想界や建築業界にPOST-MODERNの時代がありました。当時は一世を風靡しましたが、建築に限って言えば、近代建築を超える新しい潮流を目指したのでしょうが、近代建築の批判に終始し、ついに独自のスタイルは見つけられずにバブルの崩壊と共に消え去りました。多くの建物は、わずか十数年の命で解体されたものも多くあります。

 

 歴史的に見ても、世界は必ずしも正しい方向に進むとは限らないのですが、この「真実よりも自我が優先される」流れがずっと続くとは思えません。むしろ、それを変だと思っている良識ある方、訴える手段と機会を持たないだけの「サイレント・マジョリティー」が多数存在すると思いたい

 とはいえ、私たちは支配が目的ではないので、決して多数でなくても、真実を重視する方とのネットワークが出来ればそれで良い。地域の実情に合わせ、人の知恵と連携で地域の課題を自分たちで解決するためのチャンスは必ずあるはずです。バラ色の未来がある訳ではないでしょうが、地域にはその地域の真実(RESPECTIVE-TRUTH)があるはずです。経済を超えた真の地域の時代の夜明けが近いことを願っています

 

 長文となってしまいましたが、皆様良いお年をお迎えください
 そして、新年もご指導ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます

 

イベント案内 

森林体感エコツアー  平成29年1月28日~30日

http://blog.morotsuka.jp/industry/2016/12/76.html

平成29年1月28日~29日 戸下神楽
平成29年2月4日~2月5日 南川神楽
平成29年3月4日 日本一早い!諸塚山山開き

第10回世界森林認証祭り「森の恵みの感謝祭」
平成29年3月18日(土) 宮崎市開催予定
※是非、お気軽に遊びにおいでください!