2006/11/07, , 日経産業新聞, 4ページ
【台北=山田周平】友達光電(AUO)など台湾の液晶パネル大手各社が競争激化を乗り切るため、十月をはさみ事業の再編策を相次ぎ打ち出した。七―九月期決算はパネル価格の下落が続き、軒並み減収や減益となる不振だったが、クリスマス商戦向けの書き入れ時となる十―十二月期は、各社が選んだ事業戦略の正否が問われる決算ともなりそうだ。
「絶対に世界シェア首位である必要はないが、上位三社に入る意味は大きい」。李焜耀董事長らAUO首脳は十月末の決算説明会で、同月一日に同業大手の広輝電子を吸収合併し、サムスン電子など韓国二社と規模で並んだ意義を強調した。
同社は七―九月期に六億千三百万台湾ドル(約二十二億円)の最終黒字を確保、収益体質の強さを見せた。広輝の吸収には「規模拡大で資材調達コストが削減できる」「工場数の増加で異なるサイズや用途のパネルを柔軟に出荷できる」などの利点があるとした。
ただ広輝が七―九月期に六十億台湾ドルを超える巨額の最終赤字を計上したのは気がかり。「旧広輝の工場稼働率は十―十二月期には上昇する」(陳〓彬総経理)とする効果が業績にいつ表れるかが当面の焦点となる。
広輝に代わる形で登場したのが、十月二十四日に店頭公開から台湾証券交易所への上場に切り替えた群創光電。群創は米アップルコンピュータの「iPod」などを手掛けるEMS(電子機器の受託製造サービス)の世界最大手、鴻海精密工業のグループ企業だ。
群創は二〇〇三年一月設立の若い企業だが、七―九月期の売上高は先輩の中華映管、瀚宇彩晶をしのいだ。液晶パネル専業ではなく、液晶モニターも手掛ける台湾のディスプレー産業では珍しい存在といえる。
上場直前の経営説明会では、〇八―〇九年に「第七・五世代」の大型ガラス基板に対応した新工場を建設する構想や、〇七年に液晶テレビに参入する計画を表明。七―九月期決算は最終黒字を確保しており、急速に実力を付けている。
依然としてブラウン管事業を抱える老舗の中華映管は三・四半期連続となる最終赤字だった。主力の液晶パネル事業は「第六世代」工場からのテレビ向けの出荷増で平均販売価格が四―六月期比で一割上昇したが、赤字を脱却できなかった。
同社は六日の決算説明会で赤字続きだったプラズマパネル事業から「今年上半期に撤退した」ことを公表した。しかし、これは止血効果しかなく、液晶パネル事業で抜本的な対策が必要だ。
瀚宇は九・四半期連続の最終赤字。十九インチモニター用のパネルに集中するとともに「第三世代」工場の一つを同業中堅の勝華科技に売却したが、泥沼からの脱出にメドが立っていない。
AUOと台湾二強を構成してきた奇美電子も、「主力のテレビ向けパネルの価格下落が予想を上回った」(何昭陽総経理)ため、二・四半期連続の赤字だった。市場では「広輝を吸収したAUOに競争力で引き離される恐れがある」(地元証券のアナリスト)との見方が強い。
奇美がAUOと同様、吸収合併などの大胆な手を打つか否かが、今後の台湾液晶パネル業界の再編の目玉になりそうだ。
【表】台湾の液晶パネル大手の7―9月期業績
社名 売上高 最終損益
友達光電※ 71,313(19.8) 613(▲89.5)
奇美電子 48,176(16.6) ▲1,412(―)
群創光電 26,830(44.5) 456(▲30.6)
中華映管 26,710(22.8) ▲4,421(―)
瀚宇彩晶 15,717(▲6.9) ▲3,038(―)
広輝電子 15,418(▲5.7) ▲6,373(―)
(注)単位百万台湾ドル、1台湾ドル=3.6円、▲はマイナス、カッコ内は前年同期比増減率%、―は赤字のため比較できず、中華映管は液晶パネル部門のみの数字で損益は税引き前損益
【図・写真】決算説明会を開いた友達光電の李焜耀董事長(10月25日、台北市)