*愛してる永遠に* | *不整脈と高血圧と主婦*

*不整脈と高血圧と主婦*

ブログの説明を入力します。

私が結婚を決めた彼は心臓病を患っている。それが半年前に悪化し入退院を繰り返していたが、ついに「いずれ彼の心臓は自力で動くことも出来なくなり、いつ止まるか分からない状況です。覚悟しておいて下さい。」と医師に告げられた。こんな日が来るんじゃ無いかと彼は最初から分かっていた。だから本人告知を望んでいて両親と婚約者の私と4人で聞いた。

病室に戻り誰一人、医師の言ったことに触れること無く、いつもの様に過ごし両親は帰って行った。私は面会時間ギリギリまで居るのが日課だったので涙を堪えながら彼の傍に寄り添っていた。

すると彼が突然、「俺は27年間、泣いたり笑ったり怒ったり人生を楽しく生きてきた。君と出会えて新しい家族が増える夢も持てた。でも運命なんだよな。いつか俺の心臓が動けなくなったら君を置いて旅立たなければならない。そんな日が来る。」なんて言い出す。「何言い出すの?」と少し怒った様な口調で言うと更に「もし、その日が来たら安らかに眠らせて欲しい。何もしなくて良いから。」と。涙目になりながら必死で彼を見つめる私の肩に手を置いて「俺は恐くないよ。心臓が止まれば、もう泣く事も笑う事も怒る事も色んな物を見る楽しさ物を食べる喜びや色んな場面で感じる幸せも全てが出来なくなってしまうけど…君がいる。まだ結婚した訳でも無いから俺が死んだら他の男を好きになっても全然かまわない。ただ、俺の分まで人生を大切に生きていって欲しいんだ。俺は、死んだらからと言って終わりだとは思わない。死んでも誰かの中で俺は生きていけると思うんだ。」何だか彼らしいんだけど変な感じだった。

その後あれを最後に、普段の明るい彼に戻って行ったが着実に悪くなって行ってるのが分かった。少しの事でも疲れやすくなり、ほとんど横になって過ごす毎日。でも決して弱音を吐かない。心から彼の事を愛し支えたいと言う気持ちが私の中で強くなった。私は彼に内緒で彼の両親と自分の両親に私の気持ちを毎日語り、ある事を説得し続けていた。そして彼の28回目の誕生日にプレゼントとして一枚の封筒を渡した。「誕生日おめでとう。」「ありがとう。でも何だ?この封筒。」と不思議に思いながら開いて彼が涙ぐんだ。「これって…。」そう、これは私が両親達を説得し承認欄を記入させた婚姻届。もちろん私も記入済みで後は彼が記入するだけになっていた。「あなたとの子供を産む事は出来ないけど私が新しい家族になる。なりたいの。」「でも俺は、もうすぐ居なくなる人間。君が辛い思いをするだけだ。書けない。」「私は辛いなんて思わない。あなたと家族になれる、夫婦になれるんだもん、幸せだよ。もしかして私が奥さんで迷惑?」「そんな訳ないだろ。俺だって嬉
しい。でも夫婦になって旦那に、すぐ旅立たれるなんて周りが不憫に思って君が惨めな思いするだけだよ。」「そんな、いつの話になるか分からない事なんて気にしない気にしない。」私は私も彼の奥さんになりたい強い思いがあったし、彼にも残りの時間を幸せに過ごして欲しかった。彼は泣きながら、ゆっくりと時間をかけて名前を記入した。「ありがとう。残り少ない人生だけど俺の奥さんになってくれて。でも俺が死んだらからといって君を縛り付ける気はない。他に好きな人を作って構わないんだからな。君の幸せを俺が誰よりも願ってるんだから。」「分かった。じゃこれは明日、あなたの両親と出してくるね。」この時の笑顔は今でも忘れない。

翌日、届けを出し病院に行くと彼の病室を看護師達が慌ただしく出入りしていた。慌てて彼の両親と病室に駆け込むと心肺停止状態になっていた。医師が手を尽くしてくれたが、そのまま息を引き取った。まるで子供が寝てるかの様に幸せそうな顔で。苦しむ事も無く安らかに旅立った。

葬儀も終わり落ち着いた頃、一通の手紙が見つかった。そこには『お袋、親父、先に旅立つけど俺は幸せだったよ。ありがとう。そして俺の女房。こんな俺を愛してくれてありがとう。』涙が枯れるほど泣いたと思ったのに、また止まらない。本当に最後まで彼らしい。『私は、あなたの分まで泣いたり笑ったり怒ったり人生歩いて行くからね。あなたの人生は終わってない私の中で続いてるよ。』

それから私は他に愛する人も作らず一生、彼を愛し続けて人生の幕を閉じた。