5人殺傷 車ではねた被告、心神喪失で無罪 大阪地裁判決
大阪府茨木市で04年11月、男女5人を車で次々とはね、男性2人を殺害、3人を負傷させたとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた元新聞販売所従業員の男(25)に対し、大阪地裁は28日、犯行当時は心神喪失状態で刑事責任能力がなかったとして、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡した。西田真基裁判長は「『悪魔の命令』という幻聴に支配され、その圧倒的な影響を受けて犯行に及んだ」と判断した。
判決によると、男は「5人を殺せ」などの幻聴を「悪魔の命令」と信じ、04年11月18日早朝、同市内の路上で普通乗用車を運転し、自転車に乗っていた男性(当時61歳)をはね、死亡させた。さらに自転車の別の男性(当時56歳)をはねて殺害したほか、3人を次々とはねて重軽傷を負わせた。 検察側は動機について「自殺の道連れだった」として男を起訴。しかし、男は公判で「悪魔に命令された」などと供述し、弁護側は「心神喪失で無罪」と主張した。 西田裁判長は男の犯行前後の言動などから、「犯行時、被告は統合失調症が重症化する段階で、高度の幻想、妄想状態だった。被告にとって、犯行動機は『悪魔の命令』だったと認められる」と結論付けた。 殺人罪に問われた被告が心神喪失状態を認定された例としては、大阪市浪速区の路上で小学3年だった女児を刺殺したガラス施工業の男に対し98年、大阪地裁が無罪を言い渡した。静岡県で語学学校理事長が刺殺された事件では静岡地裁が06年、「責任能力は問えない」として非常勤講師の男を無罪とした |