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[市況]マニアより一般客の購入目立つPLCアダプター、発売直後で売り切れ店続出


 家庭の電源コンセントにつなぐだけでネットワークに接続できるPLC(Power Line Communications=電力線通信)に注目が集まっている。12月9日に松下電器産業が国内初のPLC専用アダプターを発売したが、売り切れ店が続出。店頭では品薄状態が続いている。「BCNランキング」でも滑り出しは好調だ。

【図表データ】

●電源コンセントでネットワークが構築できる「PLC」とは?

 PLCは電力線をLANのケーブルの代わりに利用する技術。コンセントにプラグを差し込むと電源が供給されるのと同時にネット接続もできる。改めてLANケーブルを引き回す必要がなく、特にネットワーク接続を意識せずに利用できるため、次世代のネットワークインフラとして注目されている。

 既存の通信機器と干渉するなどの問題で、なかなか認可が下りなかったPLC。しかしこの10月、総務省が省令を改正し、とりあえず「屋内での利用」に限って解禁された。これを受けPLCアダプター市場が急速に立ち上がろうとしている。

 電力線をLANケーブル代わりに利用できるのは屋内に限られるため、例えば一般家庭でインターネットを利用する場合には、1クッション置く必要がある。つまり、ADSLや光ファイバーなどのブロードバンド回線を一旦確保した後、ブロードバンドモデムなどからPLSアダプターの親機にLAN接続する。これから先でやっとコンセントを介してネットワーク接続が使えるようになるわけだ。
 パソコンなどの端末を利用するには、コンセントに子機のプラグを指し込み、子機からLANケーブルでパソコンに接続することになる。発売間もないこともあり、親機、子機とも大ぶりの外付けHDDほどの大きさがあり、まだ使い勝手が悪い。しかし業界関係者によると「いずれモデムやパソコンの本体に内蔵するようになる」見込み。そうなると、コンセントに差し込んで、すぐインターネット接続、というスタイルで利用できるようになる。

●松下のアダプターは独自通信方式「HD-PLC」、実効速度80Mbps

 さきごろ松下が発売したアダプターは親機と子機のセット「BL-PA100KT」と増設用アダプター「BL-PA100」。価格はともにオープン。実勢価格は「BL-PA100KT」が2万円前後、「BL-PA100」は1万3000円前後の見込み。他のLAN機器に比べて特段安いわけでもないが、「発売後、一気に売り切れてしまい、次回の入荷は未定」(ビックカメラ新宿西口店の法身守氏)という。

 松下のアダプターは、「HD-PLC」と呼ぶ松下が開発した独自技術を通信方式に採用。理論上の最大通信速度が190Mbps(メガビット/秒)で、実効通信速度は80Mbps。親機・子機間の通信や暗号化をあらかじめ設定しているため、無線LANのように、一からの設定が不要。また、親機と子機との接続はそれぞれの設定ボタンを同時に押すだけで完了する。

 アダプターはLAN端子を装備しており、PCをはじめ、ネットワーク対応の薄型テレビやプリンタなどの機器を接続することもできる。変調方式には独自技術「Wavelet OFDM」を搭載。周波数を細かく分けて通信信号を制御することで、ノイズと抑えると同時に、アマチュア無線や短波放送などと干渉を回避するよう設計した。

●「BCNランキング」のTA部門では約7割で初登場1位を獲得

 「BCNランキング」では、まだPLCの独立したカテゴリがないため、現在TA(ターミナルアダプター)のカテゴリで集計しているが、12月第1週(12月4-10日)の9日・10日のわずか2日間で松下のアダプターはシェア69%であっさり1位を獲得した。増設用アダプターも8.34%で3位にランクインしている。

 「PLCはホームネットワークインフラの本命。他社に先駆けて製品を発売することで、我々は『HD-PLC』を(PLCの)デファクトスタンダード(事実上の標準)にしたい」(アダプターを製造するパナソニックコミュニケーションズの藤吉一義社長)というのが松下の狙いだが、出だしは絶好調だ。

 ビックカメラでは「(電波などの問題で)無線LANではネットワークが上手く構築できない人や速度に不満のある人が買っている。購入者もマニアではなく、30-40代の一般的な夫婦やファミリー」(新宿西口店の法身守氏)が購入の中心となっている。

 また、「セットを2台、あるいはセットと増設用アダプターといった具合にまとめ買いする人が少なくない。家で使っている複数のデスクトップPC用に複数台買う人もいる」(同)という。

●製品発表後、注目集まり事前予約が積み上がる

 発売後売り切れ状態となった背景には「メーカーの初期出荷台数がかなり少なかった」(別の大手量販店店員)という側面もあるものの、予想以上に売れているのは間違いないようだ。

 松下がアダプターの発売を発表したのは11月13日。「BCNランキング」で、その前週(11月第1週)から直近の12月第1週までのデータを見ると、製品を発表した11月第2週で、「BL-PA100KT」はすでに40%近くのシェアを獲得。その後も発売前まで平均で30%以上のシェアを保持した。増設用アダプター「BL-PA100」も発売前までに平均で6%程のシェアを獲得。発売前の予約がかなり積み上がっていたということだろう。

 実際、ある大手量販店店員も「製品発表後、PLCに対するお客さんからの注目は高く、うちの店でも事前予約を30台、店頭販売用30台を確保したが、予約はアッという間に埋まり、店頭でもすぐに商品がなくなった」と話す。

 松下のアダプターの売れ行きを見る物差しとして無線LAN機器を取り上げ、比較してみた。11月第1週(10月30日-11月5日)で無線LANのランキングで1位だったバッファローの「WHR-G54S/P」の販売台数を1として指数化し、同週のシェア1-3位の無線LANの機種と「BL-PA100KT」と「BL-PA100」を比較した。

 11月第1週で無線LANのシェア1位「WHR-G54S/P」、2位「WLI-U2-KG54」は4ケタの販売台数を確保。一方、「BL-PA100KT」は3ケタで上位2機種には及ばない。しかし、3位の「WLI3-CB-G54L」は追い抜くほどの勢いを初登場で見せた。今後、店頭在庫が潤沢になれば、無線LANのシェア上位機種を販売台数で追い抜く可能性も濃厚だ。

●I・Oデータや通信会社も販売を開始、厚労省は医療機器への影響懸念

 アダプターは今のところ、松下のみが販売しているが、今月下旬にはアイ・オー・データ機器も製品を発売する予定で、今後参入するメーカーも増えそうだ。

 通信会社でもアダプターの販売に乗り出した。KDDIは同社の光ファイバーサービスの利用者を対象にアダプターの販売を500名限定で12月9日から始めた。NTT東日本も同社のブロードバンドサービス利用者を対象に年内をメドにアダプターの販売を予定している。

 松下ではアダプターの販売に加え、PLCモジュールを通信機器メーカーやグループ会社に提供することでPLCの普及を進める。すでに松下電工がモジュールを使った電源タップ型アダプターを開発しており、07年3月には発売する。今後、PLC対応機器が増えれば利用者のすそ野も広がりそうだ。

 一方で、PLCの影響を巡った動きも出ている。厚生労働省は「PLCの医療機器への影響が完全に否定できず、医療機器によっては誤作動が生じる恐れがある」として、注意を呼びかける文書を11月に都道府県や日本医師会に出した。同文書では誤動作があった場合には厚労省にすぐに報告するよう求めている。

 また、PLCによって妨害電波が発生して無線通信ができなくなるとして、アマチュア無線家など115人が国に対してPLC機器の販売認可の取り消しなど求める訴訟を東京地裁に起こしている。今後はこうした動きにも注意しておくべきだろう。

 現在のPLC技術についてある業界関係者は「まだまだ手探りの状況で、これから解決していくべき課題は多い」として、屋内使用の制限が外れる目処も不透明だという。しかし、屋内使用の解禁で、まず一般利用の第一歩を踏み出したことには違いない。さらに今後、PLCとIPv6(Internet Protocol Version 6=次世代のインターネット接続環境)の組み合わせによって、コンセントから電源を取る機器のすべてがネットワークに接続されるという世界が待ち受けている。現在では想像もできないような、全く新しいライフスタイルが、こうした環境から生まれる日も、そう遠くはなさそうだ。