(1からのつづき)
二番目に好きなのは春。
それは桜の咲く頃。
桜の花は咲き初めから散り際まで、そのすべてが美しいと思う。
やさしい華やぎがあり、そして、潔い。
この花を見ると毎年必ず思い出す歌がある。
「願わくば 花のもとにて 春死なん その如月の望月のころ」(西行)
西行法師のように、叶うことなら私も人生の最期にはこの花を見ながら逝きたいとさえ思う。
この花は、私にとって「約束の花」なのだ。
暖かい日差しの中で、必ず開く再生の花。
いつの年にも約束された春の歓び。
冬の寒さに凍てついた体が、心までが、ゆっくりと柔らかくほぐされてゆくような気がする。
山々や住み慣れた街がこの花に飾られるのを見ると、自然と心が弾み軽くなり、気持ちが前に向かって明るくなる。
そんなふうに挙げていくと、私は秋や春の季節が好きだというよりは、金木犀や桜の花のほうこそを好きと言っているようだが、なにぶん暑さ寒さが苦手なのだから、花をおいてもやはり四季でいえば過ごしやすく美しくもあるこれらの季節のほうが夏や冬よりはずっと好きなのだった。
(3へつづく)