BREAKTHROUGH #3 カミーヤ [後編] | カリフォルニアの建築家日記

BREAKTHROUGH #3 カミーヤ [後編]

BREAKTHROUGH #3 カミーヤ「前編」  を読む

何度練習してもメチャクチャ
日本語なまり

どうしてだろう。 そんなことを考えながら毎日が過ぎた。

当時アメリカの田舎に留学していた自分はお金にも底が尽きており
教会へいってアメリカ人のホストファミリーに知り合い、お世話になっていた。

ホストファミリーのママ・マセーラさんはいつもそんな自分を励ましてくれていた。

物理的にできない自分にとても
frustration(いらだち)を感じていた姿をみて、DayCareのアルバイトをしてみないか?と誘ってくれた。  

Day Careとは3歳までの子供をあずかる保育所みたいなもので、彼女の家には日常いつも0歳から3-4歳までの子供達でにぎあっていた。 また、彼女の次男ブライアンは当時2歳でヤンチャ坊主の世話をするにももってこいだた。

自分も子供が好きだからすぐに
「Of course」といって引き受けた。

子供って素直だ。  自分がどこから来たのか? どんな肌の色をしているのか?なんて本当に関係ない。 ましては発音が良い、悪いなどはまったく気にもしないようだ。

そんな場所で芝生で遊んだり、当時武道をやっていたので「バクテン」したりして人気を集めていた  ← 子供にうけてどうするの笑

ある日みんなでHide&Seekをしていた。  HIde&Seek = 隠れん坊

メリッサは3歳の女の子で自分の後ばっかり着いてくる。 大柄な自分が隠れるところは非常に少なくハンディーがあるのに彼女が後ろでは確実に見つかる。  

それでもいろいろな方法で隠れては見つかっていた。  

隠れ場にあまりチョイスがなくなっている自分にブライアンが耳元にきて声をかける。

ブライアン
「I know the great place to hide, Dice.. follow me..」
  (いい場所があるからついて来て!ダイス!)

当時、捕まえる立場のトニーは3、4、5、、、 と数えている。

10になるまであと数秒しかない。。 ブライアンはあっという間にどこかへ隠れてしまった。 自分とメリッサは静かに家の裏側へ歩き始めるが隠れる場所がない。

トニーが10を数え終えた。 今までうるさいぐらいの子供の声が小鳥の鳴き声が聞こえるぐらいの静かな庭に変わった。

バックヤードの奥には物置があるがほとんどの子供達はそこへ隠れているのでトニーが見つけるには時間の問題だ。

そんな時 小さな声が聞こえる

「カミーヤ ダイス」

声が小さくて聞こえにくいが確かにブライアンの声。

「カミーヤ。 ルック!アイム ヒーヤ」

なんとブライアンは家の床下にもぐりこんでいるではないか。  通常の家は床下を利用して空気の流れを良くし、湿気等をコントロールするために空間がある。その空間への出入り口を見つけていたブライアン。大人でも入っていける場所だった。

「カミーヤ」。  自分とメリッサは即座にその床下へ非難。

こうしてブライアン、メリッサ、そして自分はぜったいに見つからない場所を確保したのである。  

得意そうなブライアンの横顔を見ていた自分は重大なことに気づいた

今さっき、ブライアンはなんていった?なんて自分にいった?
「カミーヤ」。 そうだ!そうだったのか!

ダイス
「Brain, Can you repeat what you just said?」 
ブライアン、今いったこと、もう一度言ってみて?

ブライアン
「ワー?」
なに?

ダイス
「you just called me.. what did you just say?」
今自分を呼んだでしょう? なんて言った?

ブライアン
「オー ウェル、  カミーヤ」
Oh, well, Comere..

ダイス
「Once more please」
もう一度。お願い。

ブライアン(笑いながらゆっくりという)
「カームゥ・ミーヤァ    カミーヤ!」

ブライアンにスペルを聞いてみる。 当然彼にABCなんてかけるわけない。
でも。。そうです。 彼の発音はパーフェクトな発音だった。

自分がなぜ日本語ナマリから脱出できないかがわかった瞬間だった。

自分の頭ではいつも「Come Here」

この発音はどう練習しても「カム・ヒヤー」というわけ。

でも本当の発音は「カミーヤ」みたいに聞こえるわけ。

言葉は音だった。 音を発っして表情をつけることで会話ができるわけだ。


この瞬間から自分の発音に関する考え方がまったく変わった。


発音のBREAKTHROUGH #3 

言葉はスペルからではない。

言葉は音から入る。

音を覚えてから、スペルを覚えるのだ。



世界中の子供がそうしているように。

みんなもこうしたように。

自分に感動している姿をブライアンは何がおきたかわからないように見つめていた。
メリッサは相変わらず自分の後ろで隠れていた。


D.