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2016-09-21 21:50:42

猫の後ろ姿 1750 「酒が飲みたい夜」 高田渡と石原吉郎

テーマ:ブログ

 

 高田渡の歌う「酒が飲みたい夜は」に胸を突かれた。

                                 https://youtu.be/by0RCDcx5tI

 その歌詞は次の通り。

 

酒が飲みたい夜は 酒だけではない

未来へも口をつけたいのだ

日の明け暮れ うずくまる腰や

夕暮れとともに沈む肩

 

血の出るほど 打たれた頬が

そこでもここでもまだ火照っているのに

うなじばかりが 真っ青な夜明けを

真っ青な夜明けを待ち望んでいる

 

酒が飲みたい夜は ささくれ立った指が

着物のように着た夜を剥ぐ

真夜中の大地を 掘り返す

夜明けは誰の 葡萄の一房だ

 

酒が飲みたい夜は 酒だけではない

未来へも口をつけたいのだ

日の明け暮れ うずくまる腰や

夕暮れとともに沈む肩

 

 この詩は詩人・石原吉郎の詩をもとにしている。元詩は次の通り。

 

石原吉郎「酒が飲みたい夜」

 

酒がのみたい夜は

酒だけでない

未来へも罪障へも

口をつけたいのだ

日のあけくれ

うずくまる腰や

夕ぐれとともにしずむ肩

酒がのみたいやつを

しっかりと砲座に据え

行動をその片側ヘ

たきぎのように一挙に積みあげる

夜がこないと

いうことの意味だ

酒がのみたい夜はそれだけでも

時刻は巨きな

枡のようだ

血の出るほど打たれた頬が

そこでも ここでも

まだほてっているのに

林立するうなじばかりが

まっさおな夜明けを

まちのぞむのだ

 

酒がのみたい夜は

青銅の指がたまねぎを剥き

着物のように着る夜も

ぬぐ夜も

工兵のようにふしあわせに

真夜中の大地を掘りかえして

夜明けは だれの

ぶどうのひとふさだ

 

 日本の敗戦時に石原吉郎は「シベリア抑留」となり、8年を極寒のシベリアで生きた。元の詩には、石原の戦争体験がくっきりと刻まれている。

 高田渡はこの詩をかみくだき、戦後の日本人の生きる場にさしもどしている。しかし、この歌からは平時こそが戦時なのだという渡さんの静かな声が聞こえてくるようだ。

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2016-09-19 23:40:44

猫の後ろ姿 1749 小樽を歩く旅

テーマ:ブログ

 

 

 今月の末、小樽を訪ねる。街をゆっくり歩いて、小林多喜二ゆかりの場所を感じてきたいと考えている。小林多喜二のいわゆる「ハウスキーパー」とされる伊藤ふじ子のことを書くための取材旅行ともいえる。

 小林多喜二の『転形期の人々』から、小樽を描写した文章を書き写しておく。何度読んでもこの文章は良い。港の青々とした深い水が胸に満ちてくるような気がする。

 

 <港の水は青々と深くて、底が岩質だった。それで幾つにも折り重なった火山質の山が直ぐ後にせまっていた。-小樽の街はその山腹の起伏に沿って、海際を横に長く、長く延びている。そして港を抱きこんでいる両方の岬の突端まで延び切ると、今度は山を切り崩し、谷間を這い上り、街の屋並が一段々々と階段形に上へ延びて行った。赤い断層が街の思いがけない処々に、むごい切身をそのまゝに出していた。然し一月もしないうちに、そこは平(たいら)に地ならしをされ、木の香りのまだプンプンしている家が建った。そこは見晴しのいゝ空気のスガスガした高台になった。木の繁みの濃い瓦屋根の住宅地が出来て行った。
 汽船(ふね)が入ってくると、階段形になって、緑の木立と処々に赤い断層をもったこの一番下の税関や倉庫や運河や大きな汽船会社のある海岸通り、その一つ上の銀行や会社や大商店のあるビルジング街、その又上のカフェー、喫茶店、夜店のあるまばゆい遊歩街、更にその上に公園や学校やグラウンドのあるこんもりとした緑の場所があって、山の手の住宅地に続いていた。-その一段々々が、それぞれの電燈は濃淡をもって、はっきり見分けがついた。それらは又そのまゝ暗い港の海にキラキラと倒さに映って、揺れた。>


 

 

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2016-09-17 23:31:58

猫の後ろ姿 1748 映画「トランボ」

テーマ:ブログ

 

 

 米ソ冷戦下、いわゆる「赤狩り」の嵐の中で、下院非米活動委員会の召喚を受けながらも証言を拒否したハリウッドの映画人10人(ハリウッド・テン)は議会侮辱罪に問われ入獄した。
その中のひとり、脚本家ダルトン・トランボの、出獄後のしたたかでねばり強い闘いの姿を描いた映画。
 彼は確かに才知に溢れた、闘う術を知る人間だった。しかし、「赤狩り」の風の吹き荒れるような愚劣な時代に、誰もが彼のようにしたたかに闘い続ける事は出来ないのではないか。

 <証言拒否して刑務所に入ったハリウッド・テンは立派だけど、文学や映画は、仲間を裏切ったり、転向した弱い人間のためにあるものじゃないだろうか、とも思いました。>

 このパンフレットの中の、荒井晴彦の言葉に僕は共感する。裏切り、転向せざるを得ないような弱い人間の姿をえがくことこそ、文学・映画の役割なのだと僕は思います。
 立派で強い人間ではありえない、裏切り、転向する弱い人間。そんな人間のひとりである僕が、もうすぐ来るであろう愚劣な時代をどのように生きぬくことができるか、心して準備したいと思います。

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