すばらしい日々

監督:タナダユキ
脚本:タナダユキ
出演:蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助、齋藤隆成、笹野高史、嶋田久作、堀部圭亮、佐々木すみ江、モロ師岡、石田太郎他
2008年/日本


【ストーリー】就職浪人中の鈴子は、アルバイトをしながら実家で暮らしていた。
彼女は仲間とルームシェアを始めるが、それが思いも寄らぬ事件に発展し、警察の世話になる。
中学受験を控えた弟にも責められ家に居づらくなった彼女は家を出て、
1か所で100万円貯まったら次の場所に引っ越すという根無し草のような生活を始める。


-『百万円貯まったら出て行きます』-


蒼井優さん主演の青春ロードムービーです。


ひょんなことから事件に巻き込まれ、家を出たヒロインが見知らぬ街で様々な人と触れ合うことで、少しずつ成長していく姿を描いています。


監督は、『さくらん』の脚本や、監督作『赤い文化住宅の初子』で注目を集める女流監督・タナダユキさん。


主人公は蒼井優さん演じる鈴子。

存在感が薄く、人との距離を置くことで自分を守っている21歳の女の子です。


ある事件をきっかけに、人との関わりを避けるように、百万円が貯まるたびに自分のことを誰も知らない土地へ移り住むことを決意します。


旅する鈴子の持ち物は、自分で縫ったカーテンとわずかな衣服だけ。

1日働いて帰るのは、がらんとした部屋。


その何もない空間が鈴子にはこの上なく心地良いのです。


海、山、街・・・


鈴子は働きながら様々な人たちと出会います。


流行の自分探しなのかと思いきや、


「自分なんてむしろ探したくない」


と鈴子はきっぱりと言い放ちます。


でも心のどこかでは、自分自身と向き合うしかないとわかっています。


コミュニケーションが苦手な彼女は他人とも自分ともうまく距離が取れず、いつも眉間に皺を寄せ困ったような笑顔をしています。

鈴子は心を閉ざすことで、心のリハビリをしているのです。


人との関係で傷ついた鈴子は、また人と関わる中で、人の温かさに触れ、少しずつ癒されていきます。


なにはともあれとりあえず自分の足で歩いていこうと、ラストで見せる鈴子の表情がすがすがしい余韻を残しています。


蒼井優さんがとても良かったです。

ナチュラルな演技と彼女だけが持つ独特な雰囲気が、鈴子のキャラクターにぴったりとマッチしていて、妙に心地良いのです。


また、鈴子が旅先で出会うひとたちのキャラも良くできていて、全体の雰囲気をとても魅力的なものにしています。

それがちょっとほろ苦くも救いのあるラストを、幸福感でいっぱいにしてくれています。