さよなら。意外と楽しかったよ。ありがとう。 | 泡姫日記~風俗嬢の戯言~in Ameblo

さよなら。意外と楽しかったよ。ありがとう。

転勤が決まり、昨日が最後になるという客と対戦。

初めての彼との対戦からはまだ2ヶ月も経たないけれど、

この間、彼はあたしの出勤のほとんどの日に顔を出してくれた。

いつも、あたしの話を楽しそうに聞いてくれて、

「こんな客は嫌だシリーズ」さえ、驚いたり怒ったり笑ったりいろんな反応で返してくれた。

あたしは彼が面白がっているのだとばかり思って、

エロエロな話もしたし、新境地を開いてあげたり、恋愛のアドバイスをしてみたり、

ま、なんだかんだあたしの方も案外楽しんでいたのだ。


前回来た時にあたしにしては、気の利かせたことを言ってみた。

「こんなにしょっちゅう来ると大変だから、時々でいいよ。きついでしょ」

すると彼は、

「うん、まぁ僕にしてはきついんだけど。でも、もうあと少ししかないんだ」

と淋しそうにはにかんで言ったのだ。

「え?転勤とか、そういうこと?」

「うん。海外赴任が決まってさ」

しばらくの間、彼は次の赴任地の話だとか仕事の話だとかをぽつりぽつりと話していたけれど、

突然、涙をこぼした。

三十代半ばと思われる男の涙を見ることはあまりない。

あたしは黙って聞いていたけれど、

彼が涙を拭いて

「最初はね、顔がね、僕のど真ん中だったんだよね。それだけだったんだけどね。」

と笑った途端、不覚にも泣いてしまった。

生理前だったからに違いない。普段のあたしだったら

「なんだ、もう来ないのか」「指名が減るなぁ」くらいにしか思わなかったはずで。

感情にも痛みにもとても敏感になる生理前だったからあたしは泣いてしまったのだと自分に言い聞かせる。

「泣かれちゃうとね、僕もなんと言えばいいのかわからないけれど、でも、嬉しいよ」

まるで、恋人に見送られてるように、ちっともそれと変わらないように送り出してあげようと思ったりした。


昨日、最後の対戦を終えて、涙の準備をしていたら、生理も明けて、一粒も涙出なかったよ。

泣きながら、でも笑って「いってらっしゃい」っていうシナリオまで作っていたというのに。

仕方がないから折れそうになるまで、抱きしめてみた。

彼は大粒の涙でぐちゃぐちゃだったのに、あたしの目は乾ききってシバシバしていたよ。


さよなら。頑張ってね。意外と楽しかったよ。ありがとう。