恋する客。
風俗嬢に恋に落ちてしまう客というのは、案外珍しくない。
あたし自身も客と恋愛関係に陥ったことのある口だから、気持ちはわからんでもない。
わからんでもないんだけれど、風俗嬢が優しくするのは、客がカネを払ってるからであり、
それがオシゴトであるからなんだということを、
恋してしまった客は無視(もしくは知らない振り)しちゃうから、困ったもんだ。
やたらとポジティブシンキングで、あたしの心の中にまでズカズカ侵入してきて心底鬱陶しい。
「会いに来てくれてありがとう」というお愛想が、
「会いたくて仕方なかったの」と聞こえるらしい。
「また会いたいゎ」という言葉も、
「好きなの」くらいには聞こえてるらしい。
「ちょっと疲れちゃって・・・」と愚痴をもらそうものなら、
「彼女には僕しかいないんだ」くらいにポジティブ勘違い。
店に来ていながら、服も脱がず、お触りもせず、
「僕の時は、ちょっとでも体休めて」
なんてことを言い始めたときは重症。
こんな客がストーカー化して、後を付けられアパートメントを知られ、ポストから郵便物を抜き取られ、
実家に押しかけられて親にも恋人にも、隠していた風俗の仕事をバラされ、
とても悲惨な状況になってしまった姫もいた。
そんな面倒なことになる前に、あたしはけりをつける。
ある程度だったら、指名に繋がるから引っ張っておくけれど、危険な域に達する前に切らないと、
たとえ、毎週来てくれようが、サービス無しで体が楽であろうが、
心の負担が重過ぎて、あたしの方が疲れきってしまう。
心を消耗する客で、肉体疲労を回避しているよりは、新しい客をどんどん開拓して、
遊び上手なお客さんばっかりを沢山抱えた方が、ずぅっといい。
けりをつけるとは言っても
「あんたなんか好きでもなんでもないんだよ!」
とか、
「もう来んなよ、この色恋ボケが!!」
とか、そんなことは言わない(し言えない)。
『あたしはカネを貰ってるから・・・・』
『あたしは商品だから・・・・』
ということをやんわりと、でもせつせつと主張するのだ。
(他の客の話をするとか、
いつものピンクや赤色の雰囲気を黄色に変えるような話をするとか、
いつまでもしつこい時はカネの話をしてもいい)
時々、
『じゃ、僕はずっと応援するよ・・』
などという、いつまでも勘違い野郎もいるにはいるけど、
自分は特別でもなんでもないんだと、目を覚まさせたらしめたもの。
シリアスに恋してる気分に陥っている客ほど、もう、来ることも、連絡もない。
楽になったところで、新たな獲物をあたしは追うのだ。
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あたしは吸血鬼か。。。
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昨日書いたこの記事で、あたしはちょっとだけ反省しているところがある。
風俗嬢はカネでセックスや恋人ちっくな時間を提供するわけで、
それははっきり言って、擬似恋愛の世界。
例えば決められた2時間は、まるで恋人同士のように、
いや、恋人とだってしないような、甘く濃く深い蜜時を過ごす。
ソープの個室にいるあたしに恋をしている分については、ちっとも問題ないということ。
というか、あたしはそれを売ってるのだから、恋されることは、誇らしいことであって、
迷惑がるようなことではない。
恋されて困るのは、プライベートなオシゴト以外の領域を侵されそうになることなんだということを、
きちんと書くべきだったと思う。