いつかセレブに。 | 泡姫日記~風俗嬢の戯言~in Ameblo

いつかセレブに。

――いつになったらセレブな生活を送れるのかしら。

りょうこがずっと考えてきたことだ。


風俗で働くことに限界を感じ始めたのは32歳を目前とした頃だ。

目も当てられないくらいすっかり落ちぶれて、

店に必要とされなくなってから、仕方なく引退・・・

そんな無様な引き際は演じたくなかった。

一回りも年が違うのではないかと疑いたくなるような新人が次々と入店してくる。

まだ常連客もいて、指名の数もそこそこ取れている内に、惜しまれながら辞めていきたい。

そんな幻想を抱いて店に辞めることを伝えたら、あっさり受け入れられて、底なしに落ち込んだ。

底を確認するまもなく生活費の方が底をつき、年をごまかして潜り込んだラウンジで、今の夫を見つけた。

決して、妥協したわけではない。打算はあった。

製薬会社の営業で、店ではいつも医者の接待だったけれど、同伴しても金回りは悪くない。

探りを入れたら収入だって申し分なかった。

――潮時。

それがりょうこの出した答えだ。

りょうこの思い描いていた’セレブ’とは違うけれど、’安定・安泰’そんなものは手に入る気がした。

34歳になる春、りょうこは花嫁になった。


――いつになったらセレブな生活を送れるのかしら。

りょうこは今も考えて続けている。


夫には借金があった。

前の女と別れる時に持ち出された預金通帳から預金は全額引き落とされ、

カード類は限度額いっぱい使用されていた。


――いつかセレブな生活を送れるはずだわ。

りょうこは今も信じている。

熱い湯でローションを溶かしながら、

見知らぬ男の精液をかき出しながら、

50%オフの牛肉を買い物カゴに入れながら、

りょうこは今も信じている。


【この物語はフィクションです】