いざ“映画を作る喜び×映画を観る喜び”の軋み合う迷宮への冒険へと!
http://www.hugo-movie.jp/
『ヒューゴの不思議な発明』。
このタイトル、あの日本版予告、すっかり(食傷気味な)ファンタジー映画の新たなる刺客かと勘違いしてしまいそうですが、監督はあのマーティン・スコセッシ、勿論それは只の勘違いであった。
都合が合わず吹き替え版を観たのだけれど、劇場にはその勘違いの方こそを期待していたであろう家族連れがいたな~。あのお子さん達、どうだったのだろう?
さて、巨匠スコセッシが何故この手の映画を手掛けたのか?
実際に映画本編を観た人(あと原作を読んでた人)には納得でありましょう。
この物語は映画への愛とオマージュで溢れている。
そこに重度の映画狂でもあるスコセッシが感銘を受けたのは一目瞭然で、フィルムからは彼の想いが溢れ捲くっていた(故に冗長に感じる部分もあるものの、それはご愛嬌)。
原作『ユゴーの不思議な発明』は未読なんですが、映画創世記の巨人ジョルジュ・メリエスのその生涯を巧に取り込んだ物語はそりゃー映画好きには堪らんですよ。早速購入しようと思っております。
しかし、スコセッシを突き動かすぐらいなんだからさぞかし古典的な名作なのかな?と思いきや、出版自体は2007年なんですね。
ジョルジュ・メリエスってのは中々映画好き以外には判らないでしょうが、映画史上最初のSFとも言われている『月世界旅行』(1902年)を始め、サイレント期の映画界を革新的な手法や挑発的なテーマを用い一人改革して行った偉大過ぎる巨人であります。
物語はそんな彼の作品がすっかり忘れ去られてしまった1930年代のパリを舞台に、少年・少女の壮大なるロマンと、隠された哀しみのサスペンスとが交差しつつ、感動的に絡み行く様を描きます。
威厳の裏に哀しみを閉じ込めたパパ・ジョルジョを演じるベン・キングスレーと、そのパートナーのママ・ジョルジョを演じるヘレン・マックロリー他、紳士な司書のクリストファー・リーであったり・・・流石の名演に酔える訳ですが、矢張り語るべきはメインの子役二人だ!
吸い込まれそうな純粋な目がもう映画に選ばれし運命を感じずにはいられないヒューゴ役のエイサ・バターフィールド。
そして早くも2010年代のカリスマであるクロエ・グレース・モレッツ演じるイザべルのキュートさ炸裂!!!
この二人のアンサンブルは仄かなロマンスを爆発させつつ、物語を縦横無尽に駆け巡る。
あの映画館に忍び込む件、ベタだけどさ、ワクワクしたな~。あの時の初めて映画を観たイザベルの表情こそ本作の魅力を何よりも雄弁に語っている。
そうだ、本作、3D映画なんですが、果たしてその必然性は?ってのは観る前・最中・直後と正直なとこ疑問ではあった。元々幼き頃より3D映画のファンであったスコセッシの愛や拘りは感じれはするけれど、それは自己満足と諸刃の剣では???
が、観てから一週間経ち、そうか、今映画創世記の作る側・見る側の果敢なる冒険を再現するには矢張り今この時の未知なる手法に挑むのこそ本分だなーと。スコセッシの選択は全く以って正しい。
そうそう、映画ファン的には数々のサイレント映画のフッテージの立体化には悶絶出来ますよ。
様々な形でのオマージュの捧げ方も憎らしい程。
本作に、本作とアカデミー作品賞を争い見事受賞した『アーティスト』、そして個人的には先月観た『マイブリッジの糸』etc.
それらの作品が内包していた映画の原点への想いと、その先で撮っているのだと言う自負や悦び。
色々と哀しい話題や乗り越えるべき課題に溢れた映画界ですが、こんな風な作品が今でも作られ支持されているのだから、その力を信じたい。そして、支えたいな。