国際課税のお話です。
BEPSとはBase Erosion and Profit Shiftingの略で、グローバル展開する企業が租税条約や現地税法の抜け道を使って課税所得をあの手この手で少なくして徴収される税金を少なくしたり、そもそも税率の低いタックスヘイブンの国に利益や資産を移転させる、国際的な節税政策の事です。余談ですが、タックスヘイブンのヘイブンは天国(heaven)のヘブンではなくて、重い課税から避難する場所という意味での避難所(haven)のヘイブンです。初めは私も税金が安くて天国の国、と思いましたけどね(笑)
グローバル企業や富裕層にるタックスヘイブンを利用した国際的な節税は古くから行われていましたが、最近2016年5月にパナマ文書公開により習近平中国国家主席やプーチン露大統領、キャメロン英首相などによる租税回避行為が明るみになったり、2016年8月には欧州委員会がアップル社がアイルランドをタックスヘイブンとして受けた恩恵を打ち消すような決定を下しました。
一部の富裕層や大企業が税金逃れしたことに対する仕打ちですね。みんなアップルはアメリカの企業だと思っていますが、実は税務上はアイルランドの企業だったんですね。
国を跨いでお金や商品が行き来して、最終的に利益が計上された国が税金の徴収権を有しますが、特に海外子会社との取引で問題となってくるのが移転価額です。
例えば日本のA社が中国子会社B社に原料(10円)を輸出して、B社が加工したものをA社が再度輸入し、日本国内の取引先のC社に100円で売ったとします。B社がA社に販売する価額を中間価額といいますが、B社が10円の加工賃を上乗せしてA社との取引価額が20円となれば日本でC社に販売したことよりA社が計上する利益は100円ー20円=80円 この80円に対して日本は法人税を徴収できますが、中国は利益を計上してないため税収がありません。一方B社が10円の加工賃に90円の利益を上乗せして取引価額を100円としたら、A社はC社に販売しても利益は計上されず(100円ー100円=0)税金は徴収されません。一方中国政府はB社が計上した90円の利益について法人税(中国では企業所得税といいます)を取ることができます。
取引価額をいくらに設定するかによってグローバル企業を有する国の間で不公平が起こらないよう、各国が協力して規制を設けなければならず、これを国際的に担っている機関がOECD(経済協力開発機構 Organisation for Economic Co-operation and Development,) です。わが国ではOECDによるBEPS行動計画13の最終報告書を踏まえて、平成28年税制改正によりそれまで任意であった移転価額の文書化が義務化されました。
作成が要求される文書
・国別報告書
・マスターファイル
・ローカルファイル
このうちローカルファイルが子会社でも作成が要求される文書であり、移転価額税制の判断基準となる独立企業間価額(時価みたいなもんですね)を算定するための資料が含まれることになります。ここで問題となっていくるのは親子会社間で算定基準、根拠、会計データ等がつじつまがあっているかどうか。 言葉の問題もありますから、グローバル企業の経理の方は大変です。