不妊治療とへその緒の異常 | へその緒のはなし

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「へその緒」を研究する産婦人科医のブログ。
かつては、みんながお世話になったはずである「へその緒」の神秘的なしくみと、その異常への挑戦を語る。

 不妊治療といっても、外来でタイミングを合わせてみたり、薬を飲んだりする程度のものから、人工授精、体外受精まで幅はあります。

 ここでは、体外受精と胎盤・臍帯異常についてお話しますビックリマーク


 体外受精は、おなかの中にある卵巣に超音波で見ながら針を刺して卵子を取ってきて、体外で受精させ、受精卵を子宮の中にそっと置いてくるという治療法です。

 受精卵が、子宮内膜に根を下ろすように着床する過程から先は、自然経過で妊娠するのを待つことになります。




 体外受精後の妊娠には、卵膜付着や前置血管の頻度が増えるという報告が最近あります。




 私の調べた結果においても、極端に増えるわけではありませんが、若干増える傾向があるようです。

 多くなるのは卵膜付着(前置血管)など。でも、もともとの頻度が高くないですから、不妊治療中の人は気にし過ぎないようにしてくださいね。




 そもそも体外受精では、受精卵を子宮に置くときに、妊娠する確率を上げるために複数(最近は2個)置くことが多いのです。



 昨日もお話しましたが、双子の妊娠は胎盤・臍帯異常になりやすいことからも、多い原因のひとつとして複数置くことにあるのかもしれません。

 そうでなくても、体外受精は生理的な着床になりにくい状況ですので、受精卵の着床する向きなどの問題で卵膜付着が起こりやすいのでしょう。このことは以前に卵膜付着のできかたの記事でもお話しました。



 かつて、体外受精の妊娠率が高くなかった頃は、多くの受精卵を戻して妊娠率を上げたため、多胎妊娠の頻度が増えました。多胎妊娠は、単胎にくらべて様々なリスク(早産や発育遅延など)がありますから避けたいものですが、近年の体外受精の進歩によって多胎妊娠の増加は落ち着きをみせています!!


 より良い安全な体外受精を行うために、臍帯異常についても、その発生要因を考えたり、それらを予防するための新しい体外受精の方法の考案がなされることが望ましいと思っていますひらめき電球




 3つ子でも妊娠すればいいという時代ではなくなったように、卵膜付着でも妊娠すればいいといわなくてすむ時代がくることを信じて研究しようと思っています。


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