今回の参院選は、初めてのネット選挙ということで効果が注目されたが、大勢には影響はなかったようだ。メディアの報道によれば、若い人ほど熱心に候補者のネットでの選挙運動をフォローしていたそうだが、投票率は過去3番目に低い52.61%であり、投票する際にネット選挙運動を参考にした有権者は9.5%にとどまったらしいので、全体としてみれば微風であったと総括してよいだろう。


しかしそれでも、比例で殆どネットでしか選挙活動をしない人も現れた。自民党から比例代表で立候補した伊藤洋介氏だが、個人名で3万7,000を超える票を集めたものの、当選には届かなかった。


まだ、ネット選挙の初心者であるわが国では、【街頭演説+ 有権者との握手 + 有権者との直接対話】を地道に積み上げる「どぶ板選挙」の方が優勢ということだろうが、ネット選挙も洗練されてくれば、近い将来に「吟遊詩人」ならぬ「電脳政治家」が誕生しても不思議はないと私は思う。


ネットと言えば、アメリカ政府機関のネットでの個人データ大量収集を告発した元CIA職員のスノーデン氏は亡命もかなわず、相変わらずロシアの空港の乗り換え領域で足止めされているようである。


また、わが国では最近は、ニュース番組でツイッターの「ビッグデータ」からキーワードを抽出して、世論の分析を試みるような番組も登場してきている。


ところで、私はチャップリンが1936年に製作した「モダンタイムス」という映画を見たことがあるが、あの乗りで「ビッグデータ」を皮肉ると、安倍首相の選挙期間中の1日は、次のような感じになるのではないかと思う。


◆ 安倍首相の朝


安倍首相が朝起きると既に首相のスマホには国内外から次の情報が届いている。


①.全国の医療施設の報告を集約した昨日全国で亡くなった人と誕生した人の人数と、今日全国で亡くなりそうな人と誕生しそうな人の人数


②.栄養士から寄せられる今日一日分のお奨めメニューの提案


③.昨日の自分のネットでの発信や街頭演説に対する国民の評価が、テーマごとに肯定的なもの、否定的なものに分けられてパーセンテージで表示される。契約している「ビッグデータ」の分析会社より届く。


④.今日、絶対に言ってはいけないこと、絶対に行ってはいけない場所、絶対に会ってはいけない人が指示される。契約している「ビッグデータ」の分析会社より届く。


⑤.今日のスピーチの原稿は、地元ネタを書き入れれば、自然と出来上がるようになっている。


⑥.今日、外国で予定されているテロの情報があれば報告される。


⑦.今日、わが国で予知されている地震や火山の噴火等の災害情報があれば報告される。


⑧.わが国の領空・領海について、中国やロシアなどで今日予定されている侵犯等の活動情報があれば報告される。


◆ 安倍首相の就寝前


①.今日摂った全ての食事の全メニューの写真データを主治医と栄養士に送る。これを受け取った主治医は必要に応じて栄養士にアドバイスを送る。


◆ 安倍首相の就寝中


①.本人が寝ている間に睡眠状態等をスマホのアプリがチェックし、主治医にデータを送信する。


これが、わが国の首相の近未来の「モダンタイムス」であろうか。