7月21日に参院選が行われた。安倍首相にとっては2007年の参院選で自ら「ねじれ」を発生させてしまった汚名をそそぐための雪辱戦であった。結果は大方の予想通り、自民党の圧勝で公明党と合わせて76議席を確保し与党で念願の安定多数を獲得した。安倍内閣に曙光がさしたのである。


ここは物事に区切りをつけるために2、3日は、選挙に東奔西走して頑張ってくれたスタッフの労をねぎらい、あるいは党の仲間たちと勝利の美酒に酔うのも悪くはないとは思うが、そんなに浮かれている場合でもない。


なぜなら、全体の投票率、自党の得票率、獲得議席数の3連勝を達成したのなら手放しで喜んでも良いと思うが、投票率は52.61%で、1998年以降の6回の参院選で最低であり、熱狂的な国民の支持を集めたわけでもなく、天の配剤というべきか、参院で2/3の改憲勢力を結集することもできなかったからである。


それでは安倍首相は今後どのような政権運営を心掛けたらよいのだろうか。私は、1に経済、2に経済、3、4がなくて5に憲法ぐらいの感じでちょうど良いのではないかと思っている。なぜなら、今の日本にとってデフレの脱却は焦眉の急であり、経済力を回復しないと、外交の世界でも満足な力を発揮できないからである。


実際、日本の経済力は近年落ちている。2002年と2011年について、世界全体に占めるアメリカと中国と日本の名目GDP比は次のようになっている。


【2002年】 アメリカ:31.7%、中国:4.4%、日本:12.0%

【2011年】 アメリカ:21.4%、中国:10.5%、日本:8.4%


この9年間でアメリカも日本も世界に占める比率を3割ほど減らしているのに対し、中国は2.4倍に増やしており、わが国は中国に追い抜かれてしまったのである。中国が近年いろいろな面で大きな態度に出てくるのは経済力という裏付けがあるからに他ならないのである。


冷静に考えると、最近の日本やアメリカと中国を比べるのは、成熟した大人と第2次性徴期にある少年を比べるようなもので、ちょっと無理があるかとは思うが、このデータは各国の相対的な経済力を示していると考えてよいだろう。


従って、安倍首相は、アベノミクスの更なる実行に邁進した方がよいのである。具体的に何をすべきかだが、既にTPP参加に舵を切った安倍政権にとっては混合診療の解禁や株式会社の農業への参入自由化などの岩盤規制を突き破れるかどうかが次の試金石となる。


やり方はいろいろ考えられる。小泉元首相のように抵抗勢力に自ら戦いを仕掛けるか、安倍首相が医薬品のネット販売の原則解禁の時に使ったように民間議員を味方につけて族議員の厚い壁を突き破るか、あるいは外圧を利用するか、正面から突破するか思案のしどころである。


ところで、今回の参院選であれだけのお金とエネルギーを注ぎ込みながら1議席もとれなかった、生活の党とみどりの風には、一体どんな存在価値があるのだろうか。いっそのこと政策の近い共産党に吸収してもらった方が良くはないだろうか。いやしくも国政政党が衆参の通常選挙で当選者を1人も出すことができなかったら、3か月以内に取り潰しにしてもよいだろう。


さて、きょう7月22日は土用の丑の日である。この選挙結果を受けて、気分の良い人はきっとおいしくウナギが食べられることだろう。