日韓関係は、7月1日にブルネイで岸田文雄・尹炳世(ユン・ビョンセ)間の外相会談が行われたり、7月18日には新韓国大使館の開館式で、両国の外務次官が顔を合わせたりと、このところ改善の兆しが見受けられるが、日中関係はさっぱりである。


メディアの報道によれば、中国側は日本が領土問題で何らかの譲歩をしない限り首脳会談は開けないと主張し、安倍首相は尖閣棚上げ論などを突っぱねているという。全く取りつく島がないという感じだが、何か手はないのだろうか。私見では次のような心理戦というか攪乱戦法が考えられると思う。


◆ 作戦その1 ◆


習近平国家主席のことを、胡錦濤前国家主席とわざと間違える。


想定される場面としては、国際会議などの場で日中両国の首脳が擦れ違った時に、わが国の首相が習近平国家主席に対して、「やあ、胡錦濤国家主席、お久しぶりです!」と話しかけるというケースと、わが国が中国について言及する時に、現在のリーダーを胡錦濤前国家主席であると間違えるというケースが考えられる。


但し、現実には日中の首脳は今は擦れ違っても視線も合わせない冷たい関係なので、前者の作戦を実行するのは難しいだろう。


因みに、後者の例としては、最近中国が東シナ海で7つのガス田開発を申請する準備をしているというニュースがあったが、菅義偉官房長官が記者会見で、「7つのうち2つは日中中間線近くであり、中国の一方的な開発はわが国として認められないと、胡錦濤政権に対して事実関係の確認を申し入れた」と言明し、記者から「それって、習近平政権の間違いですよね?」と指摘されて、「私さっき、胡錦濤政権って言いました?あっ、そう、習近平政権の間違いです!」と訂正するといった展開が考えられる。


この作戦の目的は、下記の2つである。


①.胡錦濤前国家主席の方が習近平国家主席よりまだ親しみやすくてよかったという印象を与える。


②.習近平国家主席は、わが国ではあまり有名ではないという印象を与える。


◆ 作戦その2 ◆


インターネットなどで「毛沢東の時代は良かった」と言いふらす。


これは最近の中国の歴史に学んだものである。


①.2008年から2012年にかけて中国共産党内で権力闘争を挑んで敗れた薄熙来(はくきらい)氏は、胡錦濤・温家宝体制に対して毛沢東讃美を繰り返した。毛沢東の時代は国民はみんな貧しかったが、平等だったという主張である。


②.2012年9月に中国で反日デモが吹き荒れていた頃、一部の参加者が毛沢東讃美の垂れ幕を掲げて当局が神経を尖らす場面があった。


毛沢東は中国建国の父であり、共産党も毛沢東を高く評価しているということ、「毛沢東の時代は良かった」ということは、現在の政治がいかにダメかの裏返しなので、現在の政府にとってはこたえる物言いであること、現在の共産党の内部には憲政を巡って深刻な対立がありそうなことを考えれば、この作戦はかなり有効なのではないだろうか。


その他の作戦としては、中国がわが国の脳足りんである鳩山元首相を中国に招待して弄んだように、わが国も中国政府に批判的な改革派の学者や文化人などを日本へ招いて、日中問題を語らせたりしてもよいだろう。少なくとも単ににらめっこを続けるよりは、打開の可能性があるのではないだろうか。