7月14日の日経新聞では、社外の専門家が週替わりで登場し得意分野の最近の潮流を説明する「今を読み解く」というコラムがおもしろかった。今週のテーマは「米中関係と国際政治」であった。


まず、最初に述べられたのは、「世界で最も重要な2国関係」は、昔は日米関係だったが、今や米中関係になっているという認識である。確かに、1979年に『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本が書かれ、1980年代を通じてわが国の経済力が世界の注目の的となり、我が世の春を謳歌したことがあった。


そう言えば最近、証券業界では2014年から少額投資非課税制度(日本版ISA)が開始されるということで、久しぶりに浮き足立っているが、当時もマル優と言われる少額貯蓄非課税制度があり、みんなにこにこして利用していたものだった。アベノミクスが成功すれば、またあの時代に回帰できるのだろうか。


次に、今後の中国を巡る各専門家の予測が興味深かった。在米ジャーナリストの日高義樹氏は、中国の膨張を恐れるアジア諸国はアメリカと軍事同盟を結んで帝国主義的な動きを強める中国を包囲すると予想し、共同通信出身のジャーナリストの春名幹男氏は、インド洋や北朝鮮などの地域的な争点とサイバー安全保障の双方から米中の熾烈なつばぜり合いが続くと読み、中国研究家の矢吹晋氏は、中国の官僚資本主義の台頭で米中結託の国際秩序維持の枠組みである「チャイメリカ」が成立すると予測している。


私は個人的には春名幹男氏の予測が1番正しいと思っている。なぜなら、アジア諸国の中には既に中国に籠絡された国がいくつかあり、ASEANも一枚岩ではないからであり、アメリカと中国はビジネスライクには付き合えるが、物事の基本的な考え方が違い過ぎてフレンドリーな関係にはなれないと思うからである。


いずれにしても、中国は今後もし年7%程度の経済成長をずっと続けていけば、2025年頃にはアメリカを追い抜いて世界一の経済大国になる可能性があり、わが国としても安閑としてはいられない。


なぜなら、今日の国際政治はアジア太平洋を中心に展開しようとしているからであり、今日の米中関係が抱える争点は、かつての日米関係よりもはるかに広範である上、中国はアメリカにとってかつてのわが国ほど物わかりが良い国ではないからであり、20年来デフレに苦しめられたわが国はまず経済力を回復させないことには、十分な政治力や外交力を発揮することは難しいからである。


つまり、アベノミクスの成功がわが国の発言力を強化するのである。