誕生日と花と、 | Drawing Man

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気ままに書いた小説をあげています。

Short Story~誕生日と花と、~





 部活が終わって、寮の部屋をあけると、目の前でたくさんの白い花が揺れてた。


「へ?」
「あ、悪い。鷹森」


驚いて声を上げると、その花の後ろから聞きなれた声がする。

「零?」
「そう」


そうして花のスキマから現れたのは、俺と同室である、高村零だった。


「どうした、この花?」
「あぁ、今日は・・・誕生日なんだ」
「お前の?」
「まさか」


じゃあ誰の?と問いたい気もしたが、この同室人はいつも多くを語ることはしないので
ふーん、とだけ答えておいた。俺も適当な人間だし。


「キレイな花だな」
「ルティーナって言うんだ。」
「なんて意味?」
「意味?」


まあ別に知りたかったわけでもなくただ聞いてみただけだ。
問われた相方は一瞬ぽかんとしたが、


「そんなこと考えたこともないよ」


花言葉じゃなくて?、と笑って言う。


零の返答にそれもそうか、と思ってしまう。



俺が聞いてるのは、サクラを見て「サクラはなんでサクラなんだ」というのと同じで。
そんな分けわからない俺の突発的な問いに
苛立ちもせず答えてくれる相方を少し尊敬した。


俺だったら「知るわけないだろ!」ってキレてるし。たぶん。
宇佐美弟あたりに言われたら殴ってると思う。



それにしても「誕生日」に「花」かぁ。

頭の中でさっき出てきたキーワードを思い浮かべる。

そう言えば父さんは、母さんの誕生日には必ずガーベラ買ってたっけ・・・

・・・ん?ということは?



「鷹森?」


俺のぶっ飛んだ思考も、零の声で一瞬で現実に戻ってくる。


「あ?あぁ、悪い。何?」
「俺今から出かけるけど、帰るの遅いかも。」


一応外泊届け出してるけど・・・、と相方は照れもせずにサラリと言う。



その言葉で、確定した。



零には彼女がいて、今日は誕生日で、花あげて、夜は・・・・!




「お前、いや、頑張ってこいよ!」



気がついたら、俺は全力でその言葉を零に向けていた。
相方は、俺のにやけた顔を見て少しだけ眉間に皺を寄せて、



「・・・何を?」



とつぶやいていた。



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