「帰り道にさ、地下鉄のエスカレーターにのったんだよ。そしたらパンツが見えてさ」
「あら、ツイてたわねっていうべきかしら。それとも、このスケベって怒るべきかしら」
「いちいちそんなことを悩まなくていいよ。とにかく見えたんだよ、純白のおパンティがさ」
「なんかイヤらしい言い方よね。で、どうなの。痴漢に間違えられて捕まっちゃったの」

もしそうだったら、こんなところにいない。いまごろブタ箱で今後の人生を考えているはずだ。

「あなたはそんな勇気ないものね。ラーメン柄のTシャツを女子高生が着てないかぎり」
「そんな女学生がいたら、おもわず握手を願うよ。なんてナイスなシャツなんだってな」
「アンパンの絵が胸のところで立体的に浮かびあがってたら、私でもさわりたくなるわ」
「ひらめいた。あまりに下品だから口にするのはよそう。バカ売れ間違いなしのジーンズはな」

ずいぶん話がそれた。なにげにエスカレーターの上をみると、下着が目にはいってしまった。

「それがアメリカ人のオバサンでさ。とにかく横に大きいんだよ。にもかかわらず、ミニスカだ」
「いるよねえ。白人は汗腺が少ないから、この暑さは本当に我慢できないみたいなのよね」
「東南アジアを旅行するたびに、白シャツに半パン姿の白人カップルを見かけるんだよな」
「ああいう姿を見ると幻滅するよね。やっぱり外出してるんだから、もう少しなんとかしてほしいわ」

そう思うのは狭き価値観だろうか。大らかさと恥の境目は個々の判断だが、これはいただけない。

「でさ、パンツが見えたのに気づいたんだろうな。思いきりしかめっ面をされたよ。失礼な話だ」
「その部分では女を残していたのね。よかったじゃない、ギラギラした男性とみとめられて」

私もスカートを履こうかな、と笑う彼女。パンツを見せなくても、俺はすでに君に逮捕されてるよ。