「それにしても凄まじいな、本当の意味での格闘技は。見てるだけで痛いよ」
「私はダメだなあ。なんで、そんなに嬉々として見られるのかが分からないわ」
「男の闘争本能がそうさせるんだろうが、最近は女も関係なく見るらしいけどな」
「理解できないのが女性の格闘家。なんでわざわざ顔を腫らさなきゃいけないのかしら」

欲望にたいして貪欲な女性はめずらしくなくかったが、やはり顔は命である。
誰もアザだらけの姿をみたくないし、なんのために化粧へ固執するのかを考えてしまう。

「男女同権の誤解があるよね。男と女の能力は、それぞれ別の道で発揮されるものだわ」
「たしかに曲線美なんてものは、絶対に男はつくれないからな」
「見た目もそうだけど、保育や看護とかね。とくに女性は男性からの看護はうけたくないもの」
「それは恥ずかしさがそうさせるのか」
「うん。やっぱり下の世話を男性にまかせるのは、かなりつらいわ」

いくら気のおけない男同士でも、その世話を受けるには抵抗がある。
性別に関係なく女性から生まれ、育てられることから母性への安心感が働くのだろう。

「となると、父親のみで育てられた子供はどうなんだろうな。やはりファザコンになるのか」
「子供が女の子だと、たぶん母親というか奥さん代わりになるんじゃないかしら」
「そういや初恋の子は母親がいなかったよ。かなりしっかりしていたんだよなあ」
「あなたはズボラだから。まあ、多くの男性に言えることだけど


それだけ彼女もしっかりしているかといえば、案外ぬけているところもある。

「たまに調味料を間違えるときがあるな。その点では初恋の子に軍配があがるぞ」
「あら、あなたも私の誕生日を忘れるときがあるじゃない。同じことを言わせる気かしら」

くらべるのはお互いにやめたほうがいい。争いごとはテレビの中だけで充分だ。
今年は忘れないぞとカレンダーを見ると、すでにフレンチが予約されている。しっかり者め。