心のケガの回復を妨げる要因は数多くあると思われるが、昨日ことさら「元気づけ」の功罪について触れたのは理由がある。それは、災害後、大きなショックを受けて茫然自失とする期間が過ぎると、今度は災害後の生活に一見適応したかのように見え、被害の回復に向けて積極的に立ち向かう、ハネムーン期という時期が見られるのが知られているからである。



 東日本大震災の直後、メディアで報道された避難所の様子を見ていると、被災者の方々は大変よく努力されていた。子どもからお年寄りにいたるまで、ボランティアや行政任せにせず自分にできることを見つけてそれを実践し、弱者を気遣い、積極的に働いておられる。集団的な略奪や暴動も決して起こらない。また、物資の不足につけこんだ商店の非常識な便乗値上げもない。



 こういった行動は大変素晴らしく、私も心からの賛辞を贈りたい。が、災害から時間がたち、メディアが被災者を報道しなくなり、地域外の人々の関心が薄れる頃になると、今度は無力感、倦怠感にさいなまれる、幻滅期という時期がやってくることが知られている。

 

 これは、ハネムーン期の頑張りの反動である。だから、ハネムーン期に、辛さや悲しみを押し殺していればいるほど、無理をすればするほど、幻滅期の反動は大きいのだ。