前項で述べたように、心のケガ――トラウマ反応の多くは自然に軽快するといわれている。その過程でもよくなるためにはちょっとしたコツがある。そのコツについてここではお話したいと思う。

 まず、本人ができることとしては、「無理せず定期的に休みを取る」「つらい気持ち、悲しい気持ちを我慢せずに言葉にする」「友人や家族、周囲の人と体験や感情を共有する」ことなどである。気持ちを言葉にし、誰かに聞いてもらうだけでも、心はずいぶんと軽くなる。

 こう言うと、「何だ、そんな簡単なことなのか?」といわれそうである。だが、周囲の状況はいかがだろうか? 

震災であまりにも多くのものを失った方々にとっては、解決すべき問題はどこから手をつけていいか分からないほど膨大ではないだろうか? それを一国も早く何とかしようと、疲れた体に鞭打って、震災前以上に働いていないだろうか? 

「つらいのは自分だけではない」「もっとつらい人はたくさんいる」「弱音を吐いていても始まらない」とつらい気持ちを押し殺してはいないだろうか?

 「他人に迷惑をかけてはいけない、自分のことは自分で何とかしないと」と、話を聞いてほしい気持ちを否定してはいないだろうか?

 心にケガをされた方に、私は声を大にして言いたい。

 辛いのは当然の気持ち。だから無理をしないで。一人で抱え込まないで。もっと周りを頼っていいんですよ。