私が米国の大学院でヘルスコミュニケーションの教育を受けて帰国し、日本の複数の保健医療福祉分野の研究機関に勤務した後に、ヘルスコミュニケーションの研究と教育に特化した会社 を設立したのは、2002年のことです。


以来ずっと、自治体の地域保健分野をはじめ、産業保健、学校保健、医療といった分野における健康施策の計画づくりや実施・評価のアドバイス、あるいはそれらの分野で働く保健師や管理栄養士、養護教諭、医師や看護師、さらには介護福祉分野のケアマネジャーといった専門職を対象としたコミュニケーションやヘルスプロモーションに関する研修にたずさわっています。


そうしたなかで、現場の専門職から、さまざまなコミュニケーションの悩みについての相談を受けてきました。


それは、たとえば――


「保健指導の際、こちらの意向が伝わっているか自信がない」「うまくはぐらかされ話が前に進まない」

「保健指導したいが、そのことに触れると、受け入れが悪くなるのではないかと不安」

「虐待をしていたり、閉じこもりがちだったり、独自の介護観を持っていたりするケースなど、相手の話す内容に対してどこまで受容してよいか分からない」

「傾聴してばかりで、次のステップになかなか持っていけない」

といった「個人」を対象としたコミュニケーションの場での悩み、


また――


「住民のエンパワメントがうまくいかない」

「同部署の専門職間に温度差があって、意識や情報の共有がうまくはかれない」

といった「集団」を対象としたコミュニケーションの場での悩み、


さらには――


「自治体で行う健康づくりの取り組みの社会的認知度が高まらず、実践活動が停滞している」というような、「社会」を対象としたコミュニケーションの場での悩みなどです。


このような悩みを持ったとき、日本においては、多くの専門職が試行錯誤を繰り返して、何とか解決の糸口を探っていこうと、経験重視型の対応で切り抜けているように思われます。


とにかくたくさんの経験を積み、自分なりの方法を見出そうとする――

それ自体は、とても素晴らしいことです! 


対象者のことを真摯に考え、役に立ちたいという心を込めて試行錯誤を繰り返し、そこから学び、創造力が鍛えられて初めて、「この世でたったひとりしかいない、あなただからこそできるコミュニケーション術」が生み出されるものなのだから。


対象者が感動し、支援者の言葉に耳を傾けようとするのは、その情熱が伝わったときですから、そうした努力を欠かすことはできません。


しかし、そのような経験にもとづいたアプローチ方法を持たない場合は、どうしたらよいのでしょう。


たとえば、コミュニケーションをとるのが苦手なあなた、まだ若くて経験のないあなた、経験したこともないほど難しいケースを抱えているあなたは、お手上げ状態になってしまうのではないでしょうか。


だから、多くの専門職は悩むのです。


一方で、海外に目を向けると――


人にはある一定の心理や行動のパターンがあることから、それらを整理して導き出された、効果が証明された心理学や行動科学、社会科学などの理論を用いて、できるだけ相手と心を通わせやすくしようという「ヘルスコミュニケーション」と呼ばれる学問領域が存在します。


そこで、そんな悩める専門職のあなたに、解決の糸口を見出してもらいたいという願いを込めて、誰もが、効果的に、健康な行動や活動を促せるようになる方法を、それらの理論にもとづき、かつ創造的に、まさに「科学&アート」な視点で紹介した著書「人々を健康にするための戦略 へルスコミュニケーション 」を、このたび、ライフ出版社より出版いたしました!



ヘルスコミュニケーションスペシャリストで健康社会学者の日記



本書の第1章では、保健医療福祉現場におけるコミュニケーションの悩みの解決にヒントをくれる「ヘルスコミュニケーション」について解説し、どうしてヘルスコミュニケーションが生まれるにいたったのか、その背景や定義、意義など、その基本的な知識について、事例を織り交ぜながら説明しています。


第2章では、ヘルスコミュニケーションにおいてよく用いられる、効果がすでに証明されているさまざまな理論、健康行動を促すアプローチ方法について、現場で想定されるケースに応用しながら解説しています。


第3章では、実際に寄せられた現場の悩みに対して、ヘルスコミュニケーションの視点から、解決法をお答えしています。


第4章では、人々の健康に関わる分野で先駆的な取り組みをされている研究者へのインタビュー を紹介しています。


この世界の第一人者として、私が尊敬している国内外の専門家の信念や取り組みを知るにより、この分野で働くことへの誇りと喜びを改めて感じることができるでしょう。


私は本書を、相手の心に響く保健医療福祉専門職になりたいと願うあなたのために、書きました。


本書を読み終える頃には、ヘルスコミュニケーションの知識とスキル、そして今の仕事に対する情熱がさらに高まり、専門職として、多くの人々とつながり、個人や集団によい影響を与え、社会の健康を高めるためのムーブメントを起こしたくてたまらない、と感じられるようになっていることでしょう!



ヘルスコミュニケーションスペシャリストで健康社会学者の日記


単行本:288ページ

定価:本体4,000円+税

タイトル:人々を健康にするための戦略 へルスコミュニケーション

著者:蝦名玲子

出版社:ライフ出版社(2013年11月)



AMAZONに在庫がないようなので、ご興味のある方は、医学書を扱っている大手書店や医学書等専門書店でお求めいただけると幸いです。


また、ヘルスコミュニケーションの授業のテキストとしてご利用くださる方は、ライフ出版社にご連絡いただくと、よろしいかと存じます。


ライフ出版社 販売部
TEL: 03-3815-3714
FAX: 03-3815-3715
Email: Public-Health@clock.ocn.ne.jp


ヘルスコミュニケーションの世界へようこそ!



p.s. この記事(著書紹介文)は、新刊著書「人々を健康にするための戦略 へルスコミュニケーション 」の「はじめに」を、一部、加筆修正したものです。本書出版の経緯や概要、本書に込めた思いが明確に書かれており、なおかつ、AMAZON等の「なか見!検索」にまだ対応できていないので、文体等を知りたいという方のために、ここで紹介いたしました。このブログの読者で、新刊著書もご購入いただいた方は、「はじめに」だけ、重複してしまうことになります。大変申し訳ありませんが、ご理解・ご了承いただけると幸いです。