2016年6月から放射線治療を開始しました。
トモセラピーという装置を使った放射線治療です。
これは通常の放射線治療とは違い、強度変調照射(IMRT)で、がんの形状に合わせて放射線をあてることができ、不必要な被曝を最小限に抑えることができるのだそうです。
要は妻の尿管を圧迫しているがん細胞をピンポイントで狙って治療でき、がん細胞以外のところに対しては普通の放射線治療に比べ、負担が小さいのだそうです。
ただ、この装置を設置している病院はそう多くはなく、妻は埼玉から、都内の病院まで片道1時間半かけて通うこととなりました。
なんとその回数は土日祝日を除いた毎日で、合計32回。。。
大変。。。なのですが、こんなすごい装置なんだから絶対に治るという期待は大きく、32回なんてなんのその!
という気持ちでした。
妻も私も。
何度かは車で送って行きました。車だと片道1時間。でも治療はたったの30分もかかりません。
車で行くときは、途中でがん封じのお寺の横を通るので、妻は横切る際に必死に手を合わせたりしてました。
トモセラピー通いも途中からは、足腰の痛さ(のちにわかる骨転移)のせいで、とても苦痛なものになりました。
妻は、この治療を少しでも楽しくするために、トモセラピーの待合室にいる人に元気に挨拶をするように心がけていたのだそうです。そうすると、会話がはずんだりして、楽しくなるそうです。
トモセラピーを受ける患者さんは、やはり多くががんの患者さんのようで、その日に出会った人と話したことを、後でいろいろと話してくれました。
その中で、とても気の弱そうな女性が初めての治療に来て、とても不安そうにしていたから、いろいろ話をして元気づけてあげたという話しがありました。
治療の終盤、7月の終わり頃の話しでした。
8月に入り、あと少しで終わるトモセラピー。
ただ、もうその頃は、妻が病院に一人で通うのは困難な状態になっていました。
最後の何回かは妻の妹が付き添ってくれる予定でしたので、8月1日が私がトモセラピーに付き添う最後の日でした。
その日の待ち合い室では、妻が私に話してくれた女性(不安がっていたのでいろいろ話をしてあげたという女性)がいました。
その女性は、そのときもまだ放射線治療を受けることが怖くて不安なようで、妻が話しかけると、その不安な気持ちを爆発させるかのように、泣きそうな声で妻に不安な気持ちを話し始めました。
妻は
「大丈夫だよ!怖がることない!
絶対によくなるから、信じてがんばろ!」
と強くやさしく、声をかけてあげてました。
本当に本当に一生懸命に声をかけてあげていました。
実際には、妻はもっとたくさん励ましの言葉をかけてあげていたのですが、他に何を言ってたのかよく覚えていません。。。
8月は、妻のお腹はすでに腹水が溜まり、腸閉塞の一歩手前でもあり、とても人のことを心配できるような状態ではなかったのです。
その体調の悪い妻が、他の人をなんとか元気づけようとしているのを見て、私は胸が苦しくなり、涙が溢れていました。だからよく覚えていません。。。
とにかく妻は一生懸命でした。
本当に家族や親友を元気づけるように、親身になって一生懸命、一生懸命励ましていました。
今年、私たち家族には大変なことが続きました。
妻の病気が悪化し、他界してしまったことはもちろんそうなのですが、子供のことでの大変な苦労もありました。夫婦ともに今までにない苦しい思いをしました。
その上での闘病であり、本当に命を削るような思い。
この一年、苦難が続きました。
妻が他界する直前、私は、人間関係で、自分のことしか考えない人に悩まされ、そのあとに人の冷たさを思い知るようなこともあり、気持ちが落ち込み、
人って自分中心だもんな。当たり前だよな。。。自分だってそうだし。。。
と考え、どんどん私自身が貶められていくような気持ちになりました。
そんな時に、妻のこのときの行動、気持ちを思い出しました。
困っている人を助けようとする気持ち。
自分のことを顧みず、目の前で困っている人をなんとかしてあげようという気持ち。
そして笑顔をたやさない。
自分も見習わなきゃ。
そう思うと、なんだか自分の心が浄化されるように感じます。。。
どうもトモセラピーの治療の話題から、話が逸れてしまいました。。。
トモセラピーに関しては、次でもう少し書きます。