ファム・ファタール
NHK「芸術劇場」で、えげれすのロイヤル・バレエ団の「マノン」を観る。
原作はアベ・プリヴォーとやら。
マノン役の女性は、ちょいとオリエンタルな雰囲気も漂うキュート系。
体重なんて全く感じさせない羽の様な動き。少女から成熟した大人の女へと移行する表情の細やかさ。
素敵だわ素敵だわ。
デ・グリュー役の男性はジュテが高い!ピルエットの軸がズレない!
あー、やっぱ私、バレエが好きだわー!
とかなんとか言ってるけれど、バレエの「マノン」を観るのは初めてだったりする。
一番最初に「マノン・レスコー」を知ったのは、かなり昔で、しかも私はまだ子供だった気がする。
ウチの母がテレビの映画を観ていたのです。タイトルは「情婦マノン」
さっぱり訳が分らなかったけれど、マノンという女はただれた生活をしていて、
そんでもって、すったもんだで最後は死んでしまうのだけど、それは自業自得な気がした。
でも、デ・グリューが、ラストのマノンの亡骸を逆さに抱えて、
荒野を歩くシーンが物凄く鮮烈で、そして怖かった。
大学生になってから、オペラ「マノン・レスコー」を知った。
マノンの愚かですぐ金に目がくらんだりする所とか、金満の生活にすーぐ飽きる所とか、
マノンにクソアマっぷりがよく理解出来た気がする。
要するに、男を破滅に導く運命の女。ファム・ファタールですよね。
ファム・ファタールってのは多くの芸術家の霊感を与えるのだそうな。
作曲家マーラーの妻は、夫が国立オペラ座で指揮をしている間に、よその男とよろしくやっていたとか。
その、しけこんでいたホテルというのが、ウィーンには未だに存在する。
でも、その烈女の妻は、夫のマーラーだけに留まらず、画家のオスカー・ココシュカにも霊感を与えたそうな。
じゃあナニかなー。すげー性悪女でも、恋人なり夫なりが後世に残る程の何かを成し遂げれば、
そして何かを成し遂げた後に男が破滅しても、それは結果オーライなのかしらん。
凡人には計り知れない事だのう。