郵政民営化の見直し方針を閣議決定 小泉改革から転換

http://www.asahi.com/politics/update/1020/TKY200910200122.html




鳩山政権が発足して、

よりによって、郵政改革の担当大臣に国民新党の亀井さん

が就いた。

国民新党は郵政民営化反対のためにのみ、存在意義を

持っている。

そして、政権発足後、そろそろ「巻き戻し」が始まってきた。

優秀なバンカーを首にして、旧大蔵次官を頭に据えるなど

露骨なやり口も目立ち始めた。

(ちなみに斎藤次郎氏を官僚だとか、天下りだとかいうのは、

 僕はピントがずれたことだと思っている。

 彼は、官僚も政治家も操れる”超政治家”という言い方を

 したほうがいい。)




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なんか、違和感感じているのは私だけなのかな?

2005年の選挙は争点が絞られて、郵政民営化に

賛成か反対かが争点になった。

それで賛成と思う人は自民党に入れてください。ってことで

自民党に投票した人がたくさんいた。



今回、2009年の選挙では争点は郵政だけじゃなかった。

むしろ郵政は終わったこと。それよりも金融危機への対応や

景気対策、年金・介護・医療等の福祉が争点になっていた。


それでバラマキを掲げた民主党に投票した人がたくさんいた。



選挙が終わって組閣になると、議員が一桁しかいない政党の

議員が郵政改革を一人で仕切り始めた。


それで今までやってきたことを元に戻すような真似を

はじめた。


でも誰もおかしいといわない。


民営化の意義と、それによって生じた弊害のどちらを取るのか

天秤にかけていない。


何の議論もない。


田舎の一人暮らしのおばあちゃんが、今までは郵便局の人が

配達に来るついでに預金を預かってくれたのに、預かってくれ

なくなった。


困った困った。


だから、郵便以外の郵貯・簡保以外もユニバーサルサービス

の対象にすると。



日本郵政は莫大な流動資産・固定資産と預かり金を何の苦労

もなしに手に入れて発足した。

しかしこれからは貯金・保険の各事業会社と共に株式会社と

なり、利益を上げて、法人税を払ってもらう。

固定資産税も納めてもらう。


これだけでも国民が享受するメリットはとても大きい。




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郵政改革は、小泉改革を代表する政策実現の一つだが、

国・地方の財政や金融の観点から見ることがとても重要だと

改めて考える。




(1)財政投融資について


郵貯や簡保で集められた多額の資金や特殊法人が集めた

お金は財政投融資の一部となり、今までじゃぶじゃぶと

湯水のように公共投資に使われていた。

(今は財投改革により郵貯・簡保は独自で資金を運用して

 いる。

 が、結局、国債を買ったりして運用するので、それが

 公共投資などに回る構造は変わらない。)


隠れ借金・利益誘導など何十年も前から自民党が

地方で票を集めるための後ろ盾とされてきた。


福祉や医療のために投資されればよいのだが、実際

には、道路を作ったり、公共施設を作るために利用

された額の比率があまりにも多い。


金融商品である郵貯・簡保は利用者に利益をもたらす

ものでなければ商品として成り立たない。


・郵貯・簡保の利用者は金利や保険金という形で利益

 を受け取る。

と同時に

・公共事業により、特定の業種・業界に多額の利益誘導が

 行われる。公共施設が整備される。




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(2)財政のあるべき姿と

   実体的な財政(税収+債券+財投)の違い


私は、現在の国・地方の一般会計/特別会計と財政投融資

を合わせた国・地方の財政規模というのは、あまりにも

大きすぎると思う。


「国民が公共施設を求めたから。」

もし、その要求が国民の強いコンセンサスを形成していると

しても、これだけ大きな財政規模を持つ必要はないと思う。

しかも、大半は借金だからいずれ返済しなければならない。


ここが重要なところで、国・地方が使うお金がすべて税収で

賄われていれば問題はない。

(税自体がどうあるべきかという問題は別として。)




私が考える基本的な「財政」というものは、

税の機能の一つである「富の再分配」という考え方が

中心でなければならないと思っている。


集めたお金は、より多く持つところから集める。

そして、それをできるだけ均等になるように配分する。


その考えはもはや今の財政の中心的な考え方にない。


所得税のように累進課税により集めるお金や

利益の額に比例して支払う額が決まる法人税と

借金して、あとで利息をつけて返すお金(公債・財投)を

比べると桁が違っている。


日本人は一人ひとりが借金まみれなのだ。


財政は今、お金を持つ人から集めた資金(公債・財投)

で成り立っていて、そのお金で国・地方のサービスは

運用されていて、最後はお金を出した人の手元に利息

が戻り、その利息は結局、国民の税金で賄わなければ

ならない。


これでは、税金を徴収することの意義が薄れてしまう。




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3)金融不安の現状


現在、アメリカを中心として、世界的に金融システムは

正常な状態にあるとは言えない。

アメリカでは破綻の可能性のある地域の金融機関が

数百あると言われている。


その多くはいまだに、仕組み債の暴落など金融商品の

運用損失により自己資本が毀損した結果生じたもので

ある。


まだ、保有している債権の信用度が下がる恐れがあり、

評価額が下がって、時価会計の場合、引当金を必要と

して、損失が拡大すると同時に自己資本比率が現象

する。


日本でも、都銀地銀問わず、信用力の低い債券を

抱えている金融機関は少なくない。


表にあからさまに出てこないだけなのと、公的資金の

予備的注入が功を奏している状況だ。




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4)政府保証という幻想からの脱皮へ


民間金融機関は上記のとおり、青息吐息の状態だが、

本来果たすべき機能、すなわち「お金を融通する」と

いう行動を果たせていなければ、そもそも存在意義が

ない。


そして、本来、財投や国債の発行を裏付けとして享受

することのできたサービスは、民間の金融機関の

融資スキームをもってしても十分に果たすことのできる

サービスである。


公立の小学校や病院を建てる必要があるとき、

財政投融資を使えば、国・地方は財政を傷めることなく、

資金を集めて、建設を行うことができる。


打ち出の小槌のように思える。


しかし、こうして運営された公共サービスは、不必要な

付帯設備があったり、無駄な経費が使われていたり、

一部の権益者の無駄遣いの道具にされたりする。


それでも、チェックが働かないので、そのつけは

結局、財投の利息を払う額が増えることで賄われ、

それは税金から捻出するほかない。


代わりに民間金融機関から(政府・自治体の保証なしで)

借り入れた場合はどうだろう。


無駄遣いが多くなればなるほど、借り入れは多くなる。

よって、そうして建てられた施設を運営していくには

コスト意識が強くならざるを得ず、結果として、

借入と利息の負担も軽くなり、税の負担も軽くなる。


結局財投も民間金融機関からの融資も返さなければ

ならないお金だ。借りる額も支払う利息も少なければ

少ないほどいい。


政府保証がついたものの方がよいという発想は、

結局、行政運営の効率化と税負担の軽減という

ことを置き去りにしている。


当座でお金が必要だからと、消費者金融へ駆け込む

こととなんら変わらない。


借金(公債の発行・財投からの借り入れ)を減らして、

財政規模を少しずつ小さく身軽なものにしていく。

できることは税収で賄い、公債や財投への依存を

なくしていく。



この考え方の根幹(なぜそうすることが必要なのか?)

には、

国が借金まみれで、債券の信用力を落とした場合、

それへの依存度があまりにも高いので、国が破綻

してしまうことを防がなければならないということ。

(すでに地方は破綻し始めている。)


そして何より、借金をもうこれ以上後の世代

に先送りしないこと。

(破綻した自治体は先送りできず、住民に負担を

 しいることになった。)


そのために何をすべきかということが考えの根幹に

なっている。


こういうビジョンを持っていないので、

郵政が民営化したり、非民営化的な動きを取って

再び財投みたいなことをやろうとしても国民は

誰もおかしいと言い出さない。




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5)古い政治家の変わらない価値観


亀井金融担当相:ゆうちょ銀資金を地元融資 信金など通じ

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091023k0000m020109000c.html


上記のような記事を読むと、まったく考え方が正反対だ。


このケースは民間企業への融資だが、

民間金融機関が郵貯・簡保とシンジケートローンを行えば、

アレンジャーがどちらであっても、信用力をどう担保する

かという観点が疎かになる。


民間金融機関の融資の基本は、「融資先が滞りなく、

貸出金を返済することができるか。」


これに尽きるが、そのためには相手の財務体質や

経営の方向性・経営者の質などを見極めることが

不可欠だ。


しかし、もし、出資に100%政府保証が付けば間違いなく

民間金融機関はその判断を怠る。必要がないから。

(逆に政府保証が付かなければ、わざわざ、郵貯・簡保

 と組む必要はなくなる。)


このような考えは全く理解できないわけではない。

亀井さんは中小企業への景気対策と郵貯・簡保の

運用ということをセットで考えているのだろう。


それも必要なこと。


しかし、そのスキームに乗って経営難を逃れた企業が

官公庁の発注する案件に依存していて、結局、

公共施設の建設などにお金が使われる必要としたら、

もうそういう必要はない。


日本は戦後60年でもう十分に国土が発達し、

質の高い公共サービスを受けられる国になった。


これからは民間企業が内需・外需を問わず、

成長を求められる時代に入っている。


また、建設・土木事業は「建てる」「作る」ことから

保守をして、継続して利用し続けられるものへと

お金の使い道を変える必要がある。


また、用途の配分見直しも大胆に行われるべきだ。

道路や土木事業そのものへの資金投入よりも

医療や介護へ重点的にお金が使われることが重要だ。


財投はすでに郵貯・簡保については独自で運用して

いる。特殊法人は財投機関債を発行して運用するが、

事実上の政府保証があるため、改革になっていない。


もう一度、郵政改革・特殊法人改革はもう一度一体的

に見直す必要があるだろう。




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金融・財政との関連から

郵貯・簡保を民間金融機関とし、既存の民間金融機関

と競わせ、それと並行して財政健全化を図ることが

大切で、小泉改革によってそういう方向を向き始めた

のではないか?ということが言いたかったのだが、


実際には、自民党は政権を失い、逆向きの改革が

始まった。


で、今後どうなるかだが、




郵便事業は日通のペリカン便の事業との統合に

向けて動いている。


しかし、個人向け宅配事業ではすでに、

ヤマト運輸・佐川急便に大きく水をあけられている。

海外展開も遅れている。


すでに物流事業はグローバルビジネスだ。

ドイツポストはDHLを買収している。

佐川急便も中国事業を本格展開している。

封書で送る郵便はインターネットの普及でどんどん不要

になっていく。また、利用者にとってコストに見合わない

ものになっていく。(そんなに配達日が変わらない速達

郵便に何で300円ほども加算されるのか納得いかない

のは僕だけ?)


いずれ、どこかと提携せざるを得なくなるだろう。

今のJALと同じ運命にいずれなる。


郵便のユニバーサルサービスを小泉政権が担保した

ことは、今後の見通しをよく読み切ったものだと言える。

少なくともJALのように不採算路線を廃止する必要が

なくなる。




郵貯・簡保はそもそも社員の能力が全く民間金融機関

と異なる。同じ土俵では戦えない。

国がお金を集める道具を残す。その目的のために

残すということにすると、国内金融機関は郵貯・簡保が

競争相手でなくなる。


日本の個人金融資産は1500兆円ともいわれる。

しかし、その多くが郵貯・簡保に残ったままだと

グローバル化が進む中、日本の金融機関はその

採算性の悪さから、淘汰の一歩をたどるだろう。


日本人はリスクの高い金融商品を嫌う。

だから、個人は安定した金融商品で運用することを

望んできた。だが、その構造は金融機関に収益性の

向上を図ることを困難にさせ、規模の拡大を妨げて

きた。(仕方なく、合併を繰り返してきた経緯がある。)


金融危機のたびに金融機関を合併させるには

もう数が少なくなってきた。

あとは外資に飲み込まれていくだけだろう。