中医学は、陰陽学説と五行学説で成り立っている。時にこの二つにこじつけていると考える方もいらっしゃるようだが、中国医学を学べば学ぶほどここに行き着きます。今回はその陰陽学説を中心にお話しします。
 陰陽は、月と日から発生しています。その元はというと中国の思想の易学に還り、易学は道教から生まれてきています。この考え方はインドに起きた仏教にも表現が違うだけで同様のことを述べていることが多いです。ですから仏教と道教は結びつきやすく、時には同時に学ぶ者も多かったようです。日本にもそれぞれは別個に入ってきましたが、学術としては合わせて入ってきたようです。


 では、その陰陽学説とはどのようなものかお話しします。


 中医学では「陰陽」という言葉が繁用されますが、同じ陰陽でも使用する状況によって数種の異なった概念を意味するので、十分な理解と認識が必要です。この概念の相違を明確に認識しなければ解釈を誤る可能性があるので、注意しなければいけません。しかし、この陰陽を制することが出来れば、どのような病気も原因の説明が出来るようになります。


 陰陽は、中国の古代思想に基づいた概念で、「事物はすべて陰と陽の対立する性格を持つ2種に分けることが出来る」という観念から分類されています。この観点から学ぶべき事は、すべての事物の中に促進と拮抗という対立した面が存在しつつ統一されているということです。わかりやすく言うと表と裏が常にセットで存在すると言うことです。


 では、その全ての事柄というものを陰陽で分類してみましょう。すると、表1のようになります。

院長^^のブログ-陰陽表

同様の考えを人体の部位・構造・生理機能に当てはめると表2のようになり、病変の性質や脈象に当てはめると表3のように分類されます。


 ただし、このように分類された事物の内部は、なお陰陽に分けることが出来ます。たとえば、陽に属する昼間でも午前は陽で午後は陰となり、陰に属する腹部でも上部は陽で、下部は陰となり、それぞれ陽中の陽・陽中の陰・陰中の陽・陰中の陰と分類されます。このように分類されたものもさらに陰陽に分けることができ、限りなく分けることが可能でです。これを「陰陽可分」と称し、中国の思想形態の中で大きな位置を占めている。易学などでは、これら分類されたものにそれぞれ名前がついており、性質みることで事象を分類するのです。
 中医学の中で具体的に用いられる陰陽も、やはりこの観点が基礎となっています。当面の病変がどちらの範疇に入るかを分別し、弁証論治をしていきます。昔の日本の漢方医学では、この部分を詳しく教えられていなかったようで、軽視している学者もおられたがそれは大きな間違いです。この陰陽こそが診断の根幹となります。

 陰陽の4つの特徴があります。


1.対立と制約
 自然界には、全てのものに陰陽で分けることが出来る対立した面があると考えます。高いと低い。内と外。熱いと寒い。若いと老いる。男と女。このように一つの物事を分けて考え、相反するものに分けることが出来ます。同じ物事の対立した面を陰陽と言います。関係ないものは陰陽とは言いません。関係のないものとは、例えば高いは陽、内側は陰。では、高いと内側を合わせて陰と陽かというと違います。同じカテゴリーにのみ陰陽は発生します。しかも、この陰陽は互いに制約を受けて存在します。季節で考えるとわかりやすく、春夏は秋冬の寒いという陰の気を陽気によっておさえ制約します。また秋冬は逆に夏の陽気をおさえ制約します。このように相互制約をしながら、常に平衡をとろうとしてきます。余談ではありますが、季節に限って言うと互いに制約をし続けるといずれは、夏も冬もなくなり過ごしやすい春か秋のような気候だけになるのでしょうか。おそらくならないと思います。万物は動いているものの方が安定をするという理論があります。自転車がそうです。自転車に乗ってじっとしていると横に倒れます。しかし、走っている自転車になれば安定が増します。この理屈と同じで、自然も夏と冬、すなわち陰と陽があると安定してきます。


2.互根互用-依存
 陰と陽は、両方あって成り立つものです。これはどういう事かと言いますと例えば、成人男性一人が立っています。はい、これは陰ですか?陽ですか?男性だから陽。背が高いから陽。じっとしているから陰。若い方だから陽。コートを着て寒そうだから陰。さて、陰と陽どっちでしょう。答えは全部不正解。陰と陽は必ず一対でなくてはなりません。すなわち何かと比較するから、陰と陽が発生するのです。女性と二人比較するとこの方は陽。背の低い方と並んでいるとこの方は陽。しかし、もっと背の高い方と一緒だと陰。この様にある対象と比較することではじめて陰と陽が生まれます。これが依存、または互根互用と言います。


3.陰陽のバランスの平衡
 自然界における陰陽は、たえず運動しております。そして常に平衡をとろうと変化し続けています。その動きはまさにシーソーのごとく陰と陽のどちらかの気力が強くなれば、他方は弱くなります。このバランスが体内で崩壊したとき病気となります。しかし正常な気力が強い場合、自然治癒力によってこのバランスをとろうとします。例えば、冬に冷えた風邪をひいたとき微熱が出ることがあります。この熱は体内に入った寒とバランスをとるために身体が生み出した熱です。


4.転化
 陰と陽はそれぞれが極まると反対の性質になります。夏に暑さすなわち陽のエネルギーが強くなりすぎ極まった状態になると、陽の増えるエネルギーは無くなり、陰の増えるエネルギーが増えてきます。これを陽極まると陰となると言います。身体の陽中の陽のツボである百会というツボは、強く圧してはいけないと言う原則は、ここから来ています。
先の平衡と転化の表を四季に表して見た表を添付します。


院長^^のブログ-陰陽推移


 この陰陽学説は、臨床に於いては診断、治療、身体の基礎概念として必ず使用されます。中医学は、陰陽医学と言っても過言ではありません。診断学や治療学で再度陰陽学説を復習と掘り下げを行います。


 最後に陰陽学説の誕生は陰陽論は宇宙の起源に由来しているといわれています。まだ、宇宙が形をなしていない頃、そこは「無」でした。イメージは禅の掛け軸にあるようなただの丸のようなものです。その後に「混沌」が現れました。混沌は大嵐が吹きすさんでいる混と沌の状態です。このときはまだ陰も陽もよく解りません。この状態を無極と言います。この無極の状態から、陰と陽が分かれ出て、太極の状態に移ります。この状態を表したものが太極図です。その後に太極から陰と陽が分離した両儀になります。両儀はさらに分かれて四象となり、四象が分かれて八卦となり、今日の万物になったとされています。この考えは日本にも古くから入っていたようで、古事記の国生みの様子とよく似ています。
院長^^のブログ-太極


∵Ο.。ο・`‥¨〇゜´゜。∞〇゜∴¨゛〇゜´`゜。・0

  この内容に関するご質問は
  神戸の中国医学に基づいた

整体療法院同仁広大 にお問い合わせください。
  メールを送っていただけたら結構です。

∵Ο.。ο・`‥¨〇゜´゜。∞∴¨゛〇゜´`゜。¨゛・