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※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。


(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません。


「その1」から読みたい方はこちら↓


http://d.hatena.ne.jp/dogmanX/20080310





再び、雅之の魔力に取り込まれてしまったらしい。雅之の作り出す異次元の世界で真一は立ち尽くした。その目の前を幸福な親子が通り過ぎていった。雅之は声を掛けようとしたが掛けられなかった。その親子三人はこれから始まる不幸など、誰一人気付いていないに違いない。しかし、程無くして美しい庭園の花々が続く丘の向こうに、一筋の亀裂が生じたのが見て取れた。晴天を切り裂いたような亀裂は、静かに灰色の煙を噴出し始めた。やがて煙は一所に固まり雲となった。そして次第に雲は厚さと大きさを増し、遂には暗雲へと成長を遂げた。その頃には三人が歩く庭園の真上も雲が傘のように係っていた。不安げに見上げる三人の頭上で、雲は何やら光を放ち始めた。初め内部でところどころ薄く光り輝いたが、次第に輝きは雲の中から外に現れ、電流となって雲の腹を伝った。幾度も幾度も電流が雲の腹を伝うようになると、雲の唸り声が聞こえるようになった。庭園にいる三人は雲が自分たちに襲い掛かって来るのではないかという不安に震えた。


電流が雲の腹を十分に光り輝かせた頃、雲は銀色に光り輝く剣を地表に突き刺した。雷(いかずち)は、美しい花々を散らし同時にあたりに闇が訪れ始めた。色鮮やかな花々の色は徐々に消え去り、灰色の景色が拡がったのだ。


「なんだか怖い」


幼い少年が両親の手を強く握った。善良な両親も不安と戦いながら、この危険から身を守る場所を必死で探した。やがて雷は三人を追うように暗雲の中を蠢き回った。しばらくの静寂の後、暗雲の腹に何本もの閃光が走るのが見えた。父は必死で愛する妻と息子を庇い、雷に背を晒した。神の怒りのごとき雷が三人の頭上に落ちた。その怒りを全てを父の背が受け止めたのだ。大地が裂けるような音とともに父が二人の上に倒れこんできた。


「あなた!大丈夫?」


母が叫んだ。幼い息子も不安を隠しきれぬように父の背に手を当てた。しかし、父はそのまま崩れ落ちた。父は間違いなく死んだ。


雷が止み、振り出した雨の中、母と息子は父の遺体を埋める穴を掘った。雨で土がどろどろに溶けていたから掘っても掘ってもいっこうに進まない。それでも二人は懸命に掘り続け、ようやく父の遺体を埋めるだけの穴を掘った。その頃には土砂降りだったが、なんとか遺体を埋め、土を埋め戻した。その時、怒りに大地が揺れた。神の怒りに触れ、雷に打たれて死んだ父の怒りが大地を震わせているのだ。その怒りは次第に増幅し、地震のような揺れを巻き起こした。そしてついに至るところで大地が隆起し、たった今、父の遺体を埋めた筈の土も盛り上がった。




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