前回の記事で指摘しましたが、


一人の医師を育成するのにかかる費用が税金から一億円という話について、


これは都市伝説だとも言われているようなので、


本当はどうなんだろうか、とネット検索をしてみたのでまとめてみます。




まず、「医師育成に税金一億円投入」という言葉のみから考えてみても、



一人当たり一億円/6年の税金投入が真実と仮定したら、


6学年で600人の学生がいるわけですから、600人 x 一億円/6年 で、


100億円/年 の税金が各国公立大学に大盤振舞されてると言う事になりますが?

そんなお金が毎年自由に使えれば、校舎も建て代え放題でしょう。


各大学が毎年100億円も医師教育だけに使っているとは到底思えません。


教科書や参考書も自分で買っていましたし、授業の資料はざらばん紙のコピーでした・・・。

実験といっても、高価な機械が並んでいる訳でもないものですし、

解剖学では無料で提供された献体を使用している訳ですから、

いったい何処にお金がかけられていたのか、さっぱりです。




こうして冷静に考えれば、この言葉自体を分析しても信憑性の薄さが窺い知れるように思います。



では、実際どうなんでしょうか?



そのあたりを検証されているサイトをいくつか見つけましたが、まずはこのサイトのやり取りからご覧下さい。


『医療ブレーク12・医師養成費用と結婚「退職」』


サイト主さんが、この件に関して持論を展開されていて、そこにコメントが付いて議論されています。

内容を抜粋します。

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サイト主さんの持論


・医師育成には一億円の税金が投入されている。(国立で全額私立でも多くの割合で)

医師になりたい個人の願望を叶える」というより、

「より多くの優秀な医師を社会に輩出して、国民の生命を守る」為に税金投入が容認されている。

ならば、医学部生・あるいは若い医者は、

1億円ものお金を社会から投入された
「恩返し」を社会にしなければならない。



・だから、医学部に入っても医師国家試験に合格さえ出来ない者は「税金泥棒」

・医師になっても医者をしない者、医者を辞める者がいて、税金ドロが横行している。

・特に、東京女子医大に多い、女性は「結婚退職」して医者を辞めてしまう税金ドロ

・就職・結婚の自由を侵害するつもりは無いが、さっさと辞める人間は投入された税金は半分返せ。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・まあこの投稿自体「医師育成に1億円」という都市伝説に踊らされてた訳ですが、

ここまで怒りの炎をたきつけるというのは、非常に罪作りな噂です。



その投稿にコメントが付いて議論されています。

コメント内容の抜粋

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一億円のソースは?

・浜松医科大学の教育研究支出から算出すると、300万円がいいところ。

ソースはジャーナリストの保坂正康の20年前の本

「新・大学医学部」か「大学医学部の危機」(サイト主)

自治医科大学の貸与金で試算しても2260万円、一億円には程遠い。

その試算が提示されたページ

医学教育にはいくら金がかかるのか?

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議論はここで終了です。

このブログ主さんは、Hatena:Questionで質問され、返答が帰ってきて

無事怒りの矛を収める事ができたようです。

http://q.hatena.ne.jp/1148339593



しかし、この罪作りな都市伝説を作ったのは、保坂正康というジャーナリスト

のようですね。


この方は、いくつも医療問題の著書があるようですが、

このサイトのやり取りの中でも、「彼の意見は思い込みが強い。」

という意見もありました。




次に、ここのコメント蘭でも議論されています。

参照、抜粋させていただきますm( _ _ )m

「Dr.Poorの日記」
http://d.hatena.ne.jp/DrPooh/20070510

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抜粋:

『>医師1人を育成するのに約1億円かかり

そんなの都市伝説です。内訳を示した試算なんて見たこともない。


『どこかで試算を見たことがありますが,

医学教育以外(付属病院や研究施設)を含む経費を学生の頭数で割った数字

だった気がします。だから「少なくない」というあいまいな表現なんでしょう。』


『自分のblogでも書いてるんですが、言わば、それは

物理学科の学生の教育費用を、

スーパーコンピュータやトリスタン
カミオカンデの費用も含めて計算しているようなもの
で、

お門違い
もはなはだしいと思います。』


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なるほど、物理学科におけるカミオカンデとは、解りやすい例えですね(w


高価な施設建設、維持費が国からの援助でなされているのは、よくわかりますが、

その費用も含めて医師の育成費だ、とするのは乱暴だという事ですね。







・・・さてさて、では一体具体的にはどうなんでしょうか?



そのあたりの手がかりを見つけました。


「道標 Guideboard」

逆風 / 医師養成にかかる費用


(一部抜粋)

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(計算部分略。リンク先参照してください。

単科の公立医科大学の財務諸表から、教育経費と教員人件費医学生の頭数で割って算出されています。)


~このような、大きい方にぶれているであろうおおざっぱな計算でも


学生一人当たり 6 年間で 3,500 万円前後である。



教員は、教育、臨床、研究をやっている。


すなわち、教員人件費で、研究と診療も行い、病院収益を 120 億円ほど、年間で上げているのだ。


しかも、どちらの医科大学も、授業料収入の方が教育経費よりも大きい



教育だけについて言えば、授業料収入で黒字なのだ。



税金からの補助金は、そのほとんどが付属病院や研究施設に使われていることになる。


こうして見ると、医学生一人を医師にするのに入学金と授業料、計 700 万円ほどで足りることが分かる。


どこから出たのか分からない数字だけが一人歩きし、冒頭のような都市伝説が生まれてしまっているのだ。




(抜粋終わり)

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なるほど、学生一人当たりの経費が6年間で3500万円程度というのは

以下のデータからも納得できる金額です。


授業料一覧(6年間)

00)国立大学医学部 ・・・・・350万円

01)慶應義塾大学・・・・・1988万円
02)東京慈恵会医科大学・・2250万円
03)東京医科大学・・・・・2695万円
04)日本医科大学・・・・・2864万円
05)関西医科大学・・・・・3014万円
06)順天堂大学・・・・・・3050万円
07)大阪医科大学・・・・・3156万円
08)東京女子医科大学・・・3208万円
09)東邦大学・・・・・・・3229万円
10)久留米大学・・・・・・3237万円
11)昭和大学・・・・・・・3250万円
12)日本大学・・・・・・・3336万円
13)聖マリアンナ医科大学・3390万円
14)岩手医科大学・・・・・3448万円
15)近畿大学・・・・・・・3483万円
16)杏林大学・・・・・・・3655万円
17)獨協医科大学・・・・・3730万円
18)藤田保健衛生大学・・・3746万円
19)福岡大学・・・・・・・3772万円
20)愛知医科大学・・・・・3800万円
21)兵庫医科大学・・・・・3840万円
22)北里大学・・・・・・・3921万円
23)埼玉医科大学・・・・・4017万円
24)金沢医科大学・・・・・4041万円
25)川崎医科大学・・・・・4100万円
26)東海大学・・・・・・・4211万円
27)帝京大学・・・・・・・4919万円


私立の授業料は上記の27校を平均すると3428万円となります。


公立医科大学の財務諸表からの数字(教育経費+教員人件費/ 医学生数)と、

私立医科大学の平均授業料が
約3500万円と一致しています。


これで考えると、


医師一人の育成費用は一億円ではなく、3500万円と考えるのが妥当だと

思われます。



6500万円も鯖を読まれても困りますよね~。



そう考えると、高いと思われている私学の授業料は医師育成の費用としてかかり、

それは私立では、あくまでも自分(親)で支払っている訳です。



最後の700万円に関しての算出法を詳しく教えていただきました。

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授業料、入学金、検定料を足して学生数で割った数字が、6 年間学生 1 人当たり 700 万円 です。


浜松医科大学 ( 千円 )
授業料収益 574,569 / 入学金収益 65,198 / 検定料収益 22,887
1 学年の定員 : 浜松医科大学 95 人
( 574569+65198+22887 ) / 95 = 6,975 ( 千円 )


滋賀医科大学 ( 千円 )
授業料収益 531,576 / 入学料収益 64,634 / 検定料収益 22,565
1 学年の定員 : 滋賀医科大学 85 人
( 531576+64634+22565 ) / 85 = 7,280 ( 千円 )


乱暴な試算ですが、学生が支払う総額が 700 万円、

教員人件費で診療報酬を稼ぎ、

補助金は研究、施設、設備に使われるものが大部分であろうとするとこうなる、という数字です。


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この計算でいくと、教育のみには6年間で700万円程度の経費で足りている事がわかります。



私立の6年間授業料の平均が約3500万円であった事、

国立の財務諸表から算出された金額も約3500万円と合致している事を考えると、

教育以外として、付属病院、研究施設を含む維持必要経費

が学生一人当たり 3500万円 - 700万円 =2800万円/6年間

必要だとなります。



この経費が私立では個人負担になっている訳ですから、

国公立では国からの補助税金でまかなわれている事になります。




しかしその補助金が、研究、施設、設備に投資されているとすれば、

学生以外にも医師や研究員を含め病院、大学で働くすべての職種の方、

ひいては、

現在治療を受けている患者や、

これから研究によって新たな治療の恩恵を受けられる患者の為の税金投入


であり、

この補助金決して医師育成だけの補助ではない、と言えます。



私立は国公立ほど補助金をもらっていませんから、

学生からの徴収で施設そのものの維持を支えている


そのために私立の授業料はべらぼうに高い、という事が納得できます。





・・・ここまで書けば、

「税金一億円も投入して医者に養成してやっているんだから、

国民の為に奉仕して当然!」



という意見の乱暴、いや凶暴性には多くの方に

いい加減お気づきいただけるのではないでしょうか・・・。










<医者の常識(?)、世間の非常識>


医師育成のための国からの補助金は、一人一億円ではありません。


医師一人の育成総経費としては、3500万円

教育費用だけでは、700万円と試算されます。



医師教育だけの経費は、各大学で十分まかなわれています。


国からの税金の投入は、大学や付属病院全体の維持や、

世間の為の新たな治療法などの研究の為に使われています。


決して、医師一人を育成する為の税金投入ではありません。



どうやら、医学部や付属病院の施設維持に対する国からの援助金を、

医者育成の為に使われている費用だと、すりかえた結果が、

一人育成一億円の税金という都市伝説になったようです。



ですから、そんな伝説に振り回されて凶暴な意見を言う事は、

止めた方がいいですよ( ´艸`)




 
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