研修医の大変さを書いてきましたが、

研修医よりも更に大変な状況の医師もいる事を書きます。


みなさんは無給医という言葉をご存知でしょうか?


しかし、無給医って言葉からしておかしいですよねw


今考えてもおかしいですが、この制度を連綿と受け継いできているのですから
本当に日本の医師教育制度の問題点はハンパじゃないです。

 

さて、具体的に説明です。


現在の研修医制度は医師免許取得後2年間の研修期間を設定し、その間
研修医と呼ばれる身分で、国から援助された給料をもらうことが出来ます


・・・では、その2年間が終わると、どうなるのでしょう?


基本的に、実務を行うことの出来る関連病院への出向で勤務医として
勤め、ようやく一般的な勤務医として給料をもらえるようになれます。


・・・しかし大学病院としては医局員の出向に際し、その機能を果たして維持向上させてゆく為に
次の多くの問題点を抱えています。


1.マンパワーの維持

2.人件費の削減

3.臨床(実際の診察や治療)の他に、教育、研究の実績を上げること


大学病院は国からの補助をもらっていますから、大学のステータスを
保つ為にも病院経営の面だけでなく、教育研究を行わなくてはなりません。


これらの問題を一気に解決する魔法のような方法がありました。

 

それが

3年目以降の医師を大学院生として

大学病院にとどめ置き、臨床と研究を行わせるという方法

です。


その間大学院生をしている医師は大学から給料をもらえずに働くので、


無給医



と呼びます。


大学(医局)の言い分としては、


「大学院生は学生という身分であり、給料をもらう立場ではない

大学院生は研究にかかる多大な費用を、医局の研究費用を使って行える。

学生として存分に研究してもらうけれど、臨床の面でも修練が必要だし、

マンパワー不足を補ってもらいたい。」


といったところです。


そうして、大学院生の4年間


大学には年間数十万円の授業料を支払い


大学からは給料ゼロで日常の勤務を行い、


その合間や休日、夜中に実験や研究を行い


すでに国からの援助がされない立場ですから


当直などのアルバイトで生計を立ててゆくのです。。。



そして苦難の末に幸運にも成果があがり、研究論文として海外の医学雑誌に掲載されれば、


博士号



を授与されます。

残念ながら成果が上がらなければ、博士号がもらえない人もいます。


大学病院は博士号と引き換えに、

労働力の確保、人件費の削減、ステータスの向上

を得ることが出来る、まさに一石三丁の荒業です。


この博士号授与を前提とした大学院制度こそが、大学病院研修の大きな売りであり、
博士号を取りたいのなら、大学病院での研修を、と宣伝されたものです。


あと、

出身大学の方が教授とも学生時代からのよしみもあるから、とか、
他大学へでは出身者との格差がある、といった事、
市中研修指定病院で研修した場合は、大学病院で一からやり直ししなければ
ならず、

博士号が遠のく、などから、
多くが出身大学の大学病院での研修=奴隷制度に身を委ねていったものでした。


・・・これまで、いろんな大学病院や研修医の問題を書いてきましたが、

「じゃあ、どうしてそんな苦労があるのに、敢えて其処に進むんだ?」

という疑問をもたれていた方も、お解りいただけたでしょうか?


そして、この無給医の若い医師が、やはり夜間の当直などの激務を
こなして医療の底辺を支えているということなんです。。。


しかし、3年目程度で大学院に進んで、研究片手に臨床をしている医師が
果たして専門家としての実力がどれほど高められるでしょうか?


結局、臨床に関しては十分な教育を受ける事ができていない時期であり、
医師教育システムにおいても、未熟な医師を生み出す要因にもなっています。

<医者の常識、世間の非常識>


大学病院は博士号という「打ち出の小槌」で無給医という大いなる矛盾を 生んできました。


これまでの研修医制度と合わせて、医師教育制度の矛盾であり

今後抜本的な見直しが必要です。






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<以下、コメント>

私立大学病院では卒後3年以降も大学院として ではなくて、

数年間研修医として無給のところがあるのが現実です。

大学病院勤務医の給料が安いと言われますが、大学間格差も大きいです。

現在の医療制度 が、薬価、手術件数等のみに偏りすぎるためにそのような

体制を支えるような周囲の環境が強化され、医療費増大の悪循環を来たしております。
by 道 (2005-12-18 23:52)


>道さん
おっしゃるとおりです。

大学での有給職(助手以上)に就くまでは無給ですね。

医療費は削減されていますし、ますます厳しくなると思われます。
by Doctor-D (2005-12-21 10:34)